お大師さまの言葉 4
一言にしてこれをつくせば、ただ二利にのみあり。常楽の果を期するは自利なり。
苦空の因をすくうは利他なり。空しく常楽を願えども得ず。いたずらに抜苦(ばっく)を計れどもまた難し。
必ず当に福智(ふくち)兼ね修し、定慧(じょうえ)並べて行じて、
いましよく他の苦を救い、自らの楽を取るべし。
『御請来目録(ごしょうらいもくろく)』 弘法大師空海全集 巻2 p561
「仏の教えを一言で表せば、それはただ自利と利他の2つの利益にあります。
永遠の安楽を求めるのが自利。そして、生きる苦しみやその苦しみを産んでいる執着の迷いから救い出すのが利他です。自利だけを求めていてもなかなか得ることはできません。いたずらに利他をはかっても、容易なことではありません。必ず福徳と智徳を平行して修行し、禅定(瞑想)と智慧の体得を修行してこそ、はじめて他の人の苦を抜き、自分自身の安楽(悟り)を得ることが出来るのです。」
自分の利益になることや自分だけが気持ちよければ良いとか、
自分のことばかり考えていてもなかなか幸せになれるものではありません。
かといって、他人のために社会のために人類のためにと力んだり苦しんだりしたところで、
誰も幸せには出来ません。「自分のため」と「他人のため」が程よく相まってこそ、
みんなが幸せになることが出来るのです。