ベンジャミン・バトン/デビット・フィンチャー監督
Brad Pitt - Benjamin Button Trailer(ベンジャミン・バトン)
スジはおおかたの人が知っている(宣伝で伝えられている)通りで、生まれた時が老人でだんだん若返り、若返りすぎて赤ん坊になって死んでいった人の物語。以上。といえばそれだけなのだが、まあ、その恋愛劇というか、その人を好きになった人の回想劇ということなのかもしれない。こういう書き方からも伝わるだろうとおり、だからなんだろうという戸惑いを感じさせられる作りだった。巷間では比較的評判は悪くなかったようなのだけれど、そのことがなんだか妙に引っかかるのだった。監督は好みの人だし、どうしちゃったの俺?という感じなのかもしれない。
メイクが凄いというふれこみもあった。ブラビの老人顔はそのまんま老人っぽいし異論は無いにしろ、むしろ背が低いのが凄いなとは思う。子供が成長段階のためか背が低いというのは分かるが、しかし年老いて赤ん坊になる時も背が縮む。理屈がよく分からない。サルの惑星のメイクとは違うという当たり前の感じだろうか。若くなる時は少し違和感があって、そういうところは不思議なものだ。メイクであっても若返りは難しいことらしい。だからこそ、赤ん坊でもブラビと分かると、もっと唸らされたに違いない。
こうなる流れというか、それなりの理屈がよく分からないために混乱するのかもしれない。予想できないようなことが起こるわけでもないのに、だからといってその必然性も不明だ。ただ、行き当たりばったりに時間が戻る。いや、進んでいく。赤ん坊が捨てられる意味が分からないし、愛する家庭から逃げる意味も分からない。いや、分かりやすぎて胡散臭い。そんな単純な心理で人間が実際に行動するものだろうか。僕にはまったく不思議な感情だ。そういうものを内面に抱えながら、しかし人は生きていく。それこそがおそらく人が生きていくということだろう。若くなっていくという特殊性が、宇宙人をつくるということなのだろうか。または人は結局見かけで左右される生き物だということなのか。それはそうだろうけれど、それだけで終わるような単純な世界の話だということなのかもしれない。
雰囲気は満点なのに、惜しいことになんだか深みが無いまま時間を浪費していく物語のようなのだった。
しかし誰もが思っただろうけど、これって、「フォレスト・ガンプ」だったのだろうか。