カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

見本的な名作映画  キサラギ

2014-11-02 | 映画

キサラギ/佐藤祐市監督

 実は二度目。一度見て感心した覚えはあったけれど、肝心の結末がどうだったか忘れたので再見した。なるほど観たことあったな、という思いは消えなかったが、見直してみても楽しかった。
 脚本がよくできていて、どんでん返しが何度も続くが、その度にちゃんと驚いてしまうし、楽しい。皆の演技が特別に上手いという感じでなくとも、それぞれのキャラに良く合っていて、それがすでに伏線になっているところもいいと思う。あえて映画にせずとも舞台劇で十分楽しめるはずだが(と、ここで改めてググってみると、やはり舞台劇もあるらしい)、映画としての補足もあるので、より分かりやすいとはいえる。しかしながら、その余韻というか、ほとんどは想像で楽しむというようなこともあるので、それはそれで成功している作品だろう。
 僕は特にアイドル的な人を持っているわけではないが、ファン心理として深く誰かのことを熱く語るというのが楽しそうなことは分からないではない。時には古い仲間とロック談義などをやるが、自分なりのネタを披露するのも楽しいし、また意外な事実を知ったときは、おおっと驚く。これが盛り上がるのは、ネタが深いほど、造詣が深いほど、喜びも深い。趣味の会のようなものは、多かれ少なかれこれが楽しいわけで、アイドルが特に楽しいかまでは、僕にはよく分からない。分からないが、アイドルには恋愛と絡んだ思いがあるようなので、おそらく、そういう面を含めると、それなりに別の深みのある世界なのかもしれない。
 そうであるからだろうけれど、好きになるという土壌には、それなりに背景がある。そんなことは当たり前だけれど、若い女の子のアイドルに対して、実に世代を超えて、様々な立場の男たちが、それぞれの事情を抱えてアイドルを眺めていた。さらにそのアイドルは、すでに一年前に事故で死んでいる。最初は追悼というつもりで集まったものの、いつの間にかその死にまつわる事件究明ミステリと化していく。この展開は知っていたはずだが、ちょっと唖然としてしまうような見事さな訳である。
 今更誰かのアイドルファンになるかどうかは疑問だけれど、可能性としては、知った人のお子さんなんかだと、少しくらいは興味が湧くかもしれない。知っている気安さや、距離的な近さの問題だろう。おそらく現代のアイドルの売り方も、そのようなファンとの近さを演出しているものとも思われる。それが同時に危うさも生んでいるわけで、そもそもミステリとの相性もいい題材なのかもしれない。材料も脚本もよければ、意外な名作になる。まさにその見本的な映画であろう。
コメント
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