熊本県川柳研究協議会(熊本川柳研)

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会員エッセイ

2022-05-28 07:38:02 | 川柳一般

        どなたでしたっけ

先日のこと、江津湖畔の遊歩道を歩いていたら、突然走って来た自転車が私の横で急停止。 

「やあ、久しぶり」

と大声でマスクを外しながらのご挨拶。私としては、相手の顔を見ても判然とせぬまま

「やあ」

と曖昧に誤魔化しつつ記憶データと顔認証システムをフル回転。相手はそんな私に頓着せず、システムの出力を待つ時間も与えず

「以前、何度かこの付近を歩いている君を見かけたが、似てるなと思ったけど声を掛けられなかった、やっぱり君だったねえ」

と、嬉しそうな大声は更にテンションアップ。 更に

「元気だったかい?どこも悪いところは無いんだろう?」

と追討ちを掛けられる。

「はい、まあまあ歳相応に元気ですよ」

と、相手の喋りの隙間に答えを挟むのがやっとでした。

相手は、私の心の揺らぎを知ってか知らずか、一方的に話した挙句

「じゃあ」

と元気に手を挙げ、自転車で去っていきました。 しかし、最後まで私の顔認証システムでの検索は出来ないままでした。 昔の思い出話でも出てくれば、その内容から関係性が掴めると注意力を集中しても、今の生活を語るばかりで、とうとう私も

「じゃあ」

と手を挙げて別れるまで、何者かは不明のままでした。

さてさて、「ところで、あなたはどなたでしたっけ?」と、何故あの場面で質問できなかったのか、ただ今自己分析をしている始末なのです。

どうにでも取れる言葉で危機管理・・・しろ猫 

 byしろ猫