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桂離宮 自由自在

写真集をここまで舐めるように一枚一枚読んだのは、正直、初めて。

この本の良い点は、写真集らしからぬ、A5版という判型とカジュアルな造本にあるのではないだろうか。
三好氏の写真はひたすら美しいだけでなく、
「あ、そこの脇はどうなっているの?」「反対側から見るとどう見えるの?」
と言った建築家的欲求を見事に満たしてくれるのだが、
それは単に写真の枚数が多いことだけが理由ではないだろう。
というのも、掲載されている氏自身のエッセイに、
「タウトのスケッチにインスパイアされてこのアングルの写真を撮った」
という話が出てくるのだが、そのことから、ただただ何度も桂に通うだけでなく、
関連資料を読み込んで、とにかくあらゆる桂の魅力を撮りつくそう、という、
勤勉さ、というよりは貪欲さ?、が感じられるからだ。
しかも、結果としての写真は、一瞬の視覚的悦楽を感性で切り取った様にしか見えないところが気持ちが良い。

そして、ベッドの上でパラパラとページをめくりながら、その成果である目の悦楽に浸りながら、
離宮内の時間と空間を自在に行き来できるシアワセ。

京都の御所と離宮③ 桂離宮 (京都の御所と離宮 3)京都の御所と離宮③ 桂離宮 (京都の御所と離宮 3)
三好和義

朝日新聞出版 2010-09-17
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西和夫先生(建築史家)の担当された解説も簡潔にして明快、分かり易く有難いが、
ちょっと黒子的な感じて編集者が書いているコラム的な取材・解説記事もとても良く書けていて、
脇役ではあるけれども、写真の添え物的なレベルではない点も、素晴らしい。
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