なんとなくアウトドアがしづらくなったこの寒さの中、映画「利休にたずねよ」を観てきました。
千利休。茶道の美の真髄は、この男をぬきでは語れません。英語にもなっているWabi-Sabiの世界を理解するには、まず利休を理解しなくてはならないからです。
わずかながら知っている利休の逸話の中、一番心が打たれましたのは、秀吉と利休との間にあった朝顔のストーリーです。秀吉様は、利休の庭に咲き誇る朝顔の好評を聞きつけ、それを観にくるために利休の茶室に訪れました。ところが、利休は、君主の秀吉のために、庭中の朝顔を一つも残さず摘み取りました。がっかりした秀吉が、茶室に入ると、床に綺麗に咲く一輪の朝顔が目に飛びつきます。一輪ゆえに際立てられた朝顔の美しさに秀吉は深く感動したといいます。利休ならではの究極のおもてなしです。
映画にはその逸話はでませんでした。代わりに、あまり知られていない利休さんの美への追求の場面がいくつかあって、映画の一つの見所です。
利休役を演じるのは海老蔵さん。さすが歌舞伎俳優、立ち振る舞いが美しい。利休の妻役を演じるのは、女優の中谷美紀さん。中谷美紀さんのこと、今までもけっこう好きで、和服の似合う美人ですね。
歴史上、利休には前妻と後妻がいて、後妻の宗恩自身も茶道に精通し、利休に新しい袱紗さばきを提案できるほどの素晴らしいパートナーでした。
映画では、利休の娘が秀吉に秀吉の側室として申し込まれた時に、利休の妻は、ずばり断りました。
究極な美を追求し、茶室作りおいても秀吉とはまっ逆な思想をもつ利休。二人の確執が深まり、結局は、秀吉に自分への警戒心を買うことになった利休は、秀吉に自害を命じられて潔く切腹してしまいました。
こういう歴史ものも好きです。
お茶の勉強を通じ、歴史的な出来事を覗くことで、タイムスリップしたような気分です。その時代の人々の暮らしや価値観を覗けた気がして、面白いのです。
実は、中国茶の勉強が楽しいと思う理由の一つもそこにあります。高校生まで中国にいたが、今中国茶の歴史的出来事を勉強する時は、やはり教科書に載っている正統派の歴史内容と、違うアングルから歴史に触れることができ、あの時代に生きた人の気持ちをほんの少し感じ取ることができて楽しいのです。
一人で観た映画「利休にたずねよ」の時間は、至福でした。
12月7日から全国上映中。ぜひ、足を運んでみてください。
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