この日なにげなく見て回っていたら、窯元の方が親切に話しかけてきた。
とりあえず話しを聞くことにした。
。。。
同じ釉が施され、そして同じ1300度で焼かれた、二つのお椀。
つまり、炎の性質や釉の含有物質がまったく同じなのに、予期しない釉相を見せる。
ここまではなんとなく、聞いた事はある。
されど、人間の手の施しのほか、後は自然の神様が与えた不思議な力にゆだねる事は、耳新しかった。
銅の成分が入っている釉、焼かれて冷却したあと、
今の季節のような乾燥した冷たい空気に触れると、ルビーのような赤(辰砂色)があらわれる。
冬ならではの贈り物。
そして、雨や湿気がもっとも多い時期に、
北宋の均窯(注1)の青藍色が再現する。
梅雨ならではの贈り物。
焼き物の世界を突き詰めていくと、当たり前の常識かもしれないけれど、
素人の私には、そのとき聞き入った。
お茶に触れることの中にも、時にはこのような思わぬ発見に出会う。
茶の世界に触れていなかったら、気には留めない小さな、どうでもいい発見が多い。
それに茶と直接な結びつきもない。
偶然の発見が、いつも思いもよらないところにやどる。
気ままに、そしてゆっくりと一つ一つの出会いを愉しむ、とその日に思った。
<注1>中国の陶磁の一つ。乳青色の釉(うわぐすり)をかけた青磁で、紅紫色の斑文(はんもん)を加えたものもある。宋・元代に河南省鈞州はじめ華北各地で作られ、明・清代には華南で模倣された。
様々な釉の技法を得意とする窯元
有田焼の真右エ門窯