今回は、ジャッキー・チェンがカメオ出演しているとの噂のあった"Ninja Wars"(1982)についてです。
この件に関して、ネット上ではいろいろな説があるようですね。
ここでは、どこに出ているか?を検証するのではなくて、この情報がどこから出て、なぜ生まれたのか?を今一度、考えてみてみる・・・。そんな意味を込めて書いてみたいと思います。
とは言っても、当時絶大な人気を誇っていたジャッキー・チェンがNinja Wars、つまり東映の「伊賀忍法帖」に出演していたなんて話はものすごくスケールの大きな話で夢があると思います。(何も疑いの余地が無ければ・・ですけどね(笑。)
例えばどんな説があるのかまずは確認してみようと思います。
その1。馬に乗る群衆の中の一人説。
すると、これかな?
続いてその2。笠を被っている人物説。
これが、そうかな!?
強そう!
例によって顔を隠していることが条件です(笑。誰が演じているのか、もちろん分かりません。
ただ、これら諸説があるのは分かりましたが、具体的にここのシーンのこの人物がそうだと言えるのか、不思議ですよね。
正直な話、これを証明するのは難しいです。(情報をほとんど聞かないですし、とにかく顔が見えないんですから。)
この映画を隅から隅まで、いくら時間をかけてじっくりみようと、この方法ではきっと答えは出て来ないでしょう。(そういえば、この件に関してわざわざ千葉ちゃん本人に公開質問した人がいたのですが過去にはそんなこともありましたっけ。)
ということで、検証は終わり・・・いやいや、そうじゃなくて(苦笑。
これだと出演が前提となってしまうので、ちょっと視点を変えてみます。
そもそも何をきっかけにこの情報が世に出てきたのか?
私が思うに日本ではなくて実はアメリカからではないかと。お気づきの方もいらっしゃると思いますが、最初に「伊賀忍法帖」ではなくて"Ninja Wars"と書いていたのはそういう意味でした。(私が以前まとめた仮説を以下に披露しておきます。)
その前に、この噂をどのくらい信じていましたか?どちらとも言えず半信半疑でだいたい50%くらいでしょうか?私は当然ながらゼロ…と言いたいところなのですが5%としておきましょう。
そもそも「伊賀忍法帖」についての疑念を払拭できないのは、ジャッキーの自伝本にはっきりと”カメオで出ている”と書いてあるのに、どこにいるかそれをまったく確認できない・・というのが実情ではないでしょうか。
そのジャッキーの自伝と呼ばれている"I AM JACKIE CHAN"(1998刊)ですが、分厚くてとても詳しく書いてあるのでファンの間では重宝している本だと思います。
私はこの自伝本に関して、ある予測をし(特に巻末の部分)、現在も変わらない認識でいます。
この本にはジャッキー以外の著者としてもう1人の名があります。自伝であるのにです(笑。(Jeff Yang と共著となっている。)
ジェフ・ヤンって誰なのか?
そうです。彼が何を担当したか。それは公になっていないのでわかりませんが、彼が巻末のフィルモグラフィーの編集をしているのは後述しますが、明白であるのです。彼は経歴をみるとわかりますがアジアのポップカルチャーに精通したエリートのようですね。また、どうしてジャッキーがもう1人の著者を付けているのかファンであればたぶん分かると思います。
たまたまアメリカのハーバードを出た優れた編集者に縁があり彼の協力もあって自伝を出版できたのではないでしょうか。
ここでもう1冊。
自伝の刊行される1年前の97年に出版された"The Essential Jackie Chan Sourcebook"(以下、ソースブック)という洋書があります。
実は、この本には自伝の「伊賀忍法帖」に関してある事実が隠されていたのです。
参考までにもう1冊、ソースブックと同じ年に出た"Dying for action"という書籍は、自伝、ソースブックと同じように jackie chan film checklist という各作品のフィルモ解説がありますが、初期の解説部分は自伝とは大きく異なり、"Ninja Wars"も載っておらず独自の内容となっています。(ちなみにここに挙げた自伝本以外の2冊の出版にはジャッキーは何ら関係していません。)
前置きが長くなりました。では、いよいよここから本題に迫ります。
まずは2冊の記述を引用しますので見てください。
自伝 :
「僕はカメオで出ているだけだが、そういう形でも出たのは、1970年代人気のあった「殺人拳」シリーズの日本のマーシャル・アーティスト、ソニー・チバと一緒に仕事したかったからだ。」
キャスト:真田広之、渡辺典子、千葉真一、ジャッキー・チェン
監督:斉藤光正
プロデューサー:佐藤雅夫
ライター:小川英
ソースブック(原語):
「Jackie chose to make a cameo in this film in order to work with Sonny Chiba,a well-known martial artist from Japan and the star of the popular Street Fighter films of the 1970s.」
CAST:Henry Sanada, Noriko Watanabe, Sonny Chiba, Jacie Chan(cameo)
DIRECTOR:Mitsumasa Saito
PRODUCER:Masao Sato
WRITER:Ed Ogawa
和文、英文の違いはありますが、"Street Fighter"(=殺人拳)とか"Martial artist"とか、酷似していることに気付きます。というかそっくりそのままですね。(キャスト、監督、プロデューサー、ライターもまったく同じ!!)これは、参考にするものが他になくて書くべき内容が無かった結果、そのまま引用するしかなかったと思うのです。
つまりこれは、ジャッキーが書いた自伝の出版以前に「伊賀忍法帖」に関して既に書かれていた書物があったということになります。要するに自伝の巻末は、この本を参考に書かれているのが一目瞭然なのです。
もしジャッキーがカメオ出演したと書いている部分を本人が書いたのであればソースブックを参考にすることなく自伝にしかない内容を書くはずです。逆に言えば自伝にしか載っていない内容(自伝とソースブックの差分)こそがジャッキーが語った真実だと言えるのではないでしょうか。
なので、Ninja Warsを含め、ソースブックとまったく同じ文章になっている部分はジェフ・ヤンによって編集されたものだと思います。
結局のところ私の考えは、自伝にある「伊賀忍法帖」のカメオ出演は本人の弁ではなく編集者によって作られた虚構だということです。
ではいつから出たか?
自伝が出る以前(98年以前)にはこんな噂(または"Ninja Wars"がフィルモに載っている状態)があったでしょうか?自伝が出元であるので私はおそらく無かったと思っています。
・・・以上ですが、真相はこんなところではないでしょうか。これで疑問がスッキリとなれば幸いです。
最後に、今回の記事はカメオ出演、非出演のどちらかを証明するものではなく、自伝より前に「伊賀忍法帖」に関して自伝と同じ記述のある書籍が存在していたという事実があった・・・というだけの内容であるということをおことわりしておきます。
この回答に ごもっともと拍手したいですね!古いファンであれば、やはりこの「自伝」がでるまでは、聞いたことなっかたですものね。すごい納得いく、ご考察ありがたきや!
お疲れ様でした!
フージンさん ベストショットかわいい!ww
それも大変丁寧に詳細を書いていただいてありがとうございました。
自伝の巻末リストについては、ジャッキー自身によるものではない事や確実性がないことは重々承知していたつもりだったのですが・・・
なぜか、この作品に関しては「出演している」と思い込みたい気持ちが働いていたみたいです。
千葉氏のもとを表敬訪問した話が、どこかでねじ曲がってしまったんでしょうか。
いずれにしてもおかげでスッキリできました。
そういえば、昨年末に千葉さんが、ジャッキーとの共演作の製作を発表しましたが、果たして本当に実現するんでしょうかねぇ・・・
信じたいけど、信じられない。まぁそんなこともよくある話だと思いますが、今回はたまたま見つけたのでざっと書いてみました。
フージンさんもまた何か面白いやつがあればいいなぁと思います(笑)
思っていることを分かりやすくより多くの人に伝えたい。これはなかなか難しいですね。(そう書いたつもりでもうまく伝わらないことだってありますし)
でも多少なりとも私の言い分が伝わったようで良かったです。
共演については、大きな企画である程、企画倒れも可能性が大きくなるような・・・。待ちましょう。