久女の母、赤堀さよは池坊龍生派関西家元代理として88才までハサミを握っていた人だそうで、久女も池坊龍生派中伝免許を持っていたようです。
なので、夫宇内の勤務する学校の卒業式の演壇生花などは、毎年久女が出向いて活けていたと、久女の長女昌子さんは著書に書いておられます。
お花が好きな久女は庭に花を植えて楽み、又、花の絵を描いたり、俳句にもよく花を詠んでいます。
平成23年に北九州市立文学館で開かれた「花衣 杉田久女」展で久女が筆写した『源氏物語』が展示されていました。それは『源氏物語』の本文の筆写だけではなく、上部に頭注を付けて見やすいように工夫がなされたものでした。
花が好き、『源氏物語』が好きな久女は、夕顔の句を数多く詠んでいます。昭和初め頃の幾つかを見てみましょう。
「夕顔や ひらきかゝりて 襞深く」
この句は、ホトトギス流の写生俳句の典型と言われていますが、夏の夕暮れから咲き出す白い夕顔の花の襞は、開きかかった時が一番陰影が深いんですね~。
「夕顔を 蛾のとびめぐる 薄暮かな」
上の夕顔の句の虚子評は、「本当に地味な写生本位に立っておる。何ということなしに夏の暑いもの憂い盛んな情景が描かれている」としています。とびめぐるという表現に蛾の羽音が聞こえてくるような気がします。
「夕顔に 水仕もすみて たゝずめり」
この句からは久女の日常が彷彿としてきます。水仕とは台所仕事のこと。炊事を終えてほっとしながら、薄暗くなった庭に咲きだした夕顔を眺めているのでしょう。
『源氏物語』が好きな久女にとって、夕顔は愛着のある花だったのでしょう。下の句はあまり知られていないようですが、上の3句とは雰囲気が違いロマンティックな句ですね。久女の夕顔の句の中では私はこの句が一番好きです。
「逍遥や 垣夕顔の 咲く頃に」
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