いい香りのするほうへ

病棟だけでなく、化学療法室でもアロマセラピーをとのことで
芳香浴をしています。
精油の香りが、けっこう離れたところで漂っているのが不思議です。
エレベーターを降りて、「あ、香りが」と思うと
今日は化学療法の日だとわかります。

どれくらいの方がこの香りに気づいていることでしょうか。
私にはわかります。
私が持っていった精油でもありますので。

病棟でもいい香りがします。
私のところへ訪ねてきた医療相談室の方も、うっすらと何かの匂いがしていました。
何かの花の香りのような・・・・・クンクンと嗅いでしまいました。

いい香りは、近くで嗅ぎたくなります。

そういえばもう金木犀の香りがしています。秋の香りです。
苦手な人も多い香りかと思います。くちなしの香りもけっこう強いですが
金木犀の香りも、きついです。咲き始めた頃にとても香ります。

「遺された時間」

　時間は残酷だ
　カチカチと音をたてて　せまりくる
　ある時には　待ち遠しいのに
　ある時には　焦らせる
　
　あの時間も　その時間も　この時間も
　同じ長さでも　重みが違う

　あの時　こうすればよかった
　あの時　一緒にいられればよかった

　一日のうち　8時間も眠っていたら
　90歳までに　30年は眠っていることになる

　もう眠れない
　眠りたくない
　もっともっと　生きていたい
　買えるものなら　時間を買いたい
　使えるはずだった時間を　遺したくない


今日は患者さんの家族と残り少ない時間について
話しました。
やることがたくさんあるのに、追いつかないから、もっともっと生きていて欲しいと
願っているそうです。
涙をためながら、切なく話していました。
どうか生かしてくださいと、お願いされました。
叶えられるものなら、そうしたいし、あげられるものなら、私の時間をあげましょう。

その方から漂った香りは、昔懐かしいどこかの家の匂いがしました。
ふっと、思い出しそうになりながら思い出せませんでしたが。

つくづく命の短さを感じます。
私の時間だって、必ずしも長いものではありません。
今日できることを今日しておきましょう。
明日のお弁当の準備も、今日します。