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郵政株「まるで官製相場」

2015年11月18日 | 経済
真相深層 郵政株「まるで官製相場」
3社上場、滑り出し上々 売らぬ初心者、過熱誘う
2015/11/18 3:30 日経朝刊
 11月4日に上場した日本郵政グループ3社の株が上々の滑り出しを見せている。上場2日目までは3社の売買代金が東証1部の2割を占め、さながら「郵政祭り」の様相だった。なぜこれほど盛り上がったのか。背景を探ると国や主幹事団によって周到に準備されたシナリオが浮かび上がる。

 4日午前9時。3社の株は買い注文が売り注文を上回る「買い気配」で始まった。注文動向を追っていた主幹事の野村証券の幹部は「売りが少なくて驚いた」という。気配値は切り上がり、初めて株価が付いたのは日本郵政とゆうちょ銀行は9時33分、かんぽ生命保険は10時6分だった。
 同じ時刻、京都府の教員、井上光さん(54)は上場前に購入した郵政3社株を売り、早々と約30万円の利益を得た。「最初から短期での利益確保を狙っていた」という。
 新規公開(IPO)の株が上場したら、すぐに売る投資家は多い。経験則から利益を得られる確率が高く、だからこそIPO株は人気を集める。しかし、郵政3社は少し様相が異なっていた。
銀行で購入多く
 東京都内に住む岩渕恵美子さん(66)は銀行預金を使い、日本郵政とゆうちょ銀を100株ずつ合計28万5000円買った。株価が上昇し含み益が出ても売らない。「長期で保有する。買い増したいぐらい」と話す。
 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の長岡孝社長(61)は「銀行で株を買った顧客の7割は半年後も売らない」と分析する。投資の初心者が多いからだ。三菱東京UFJ銀行を通じた販売額は1200億円に達する。
 株を売り出す財務省からは「長期保有する個人に幅広く売ってほしい」との意向が伝わってきた。「慌てて売る株ではありません」とは証券会社による上場前のセールストークだ。
 抽選に外れるなど上場前に買えなかった投資家も多い。その資金は4日時点で証券口座に数千億円積み上がった。大和証券は顧客からの電話が鳴りやまない。電話の向こうからは「郵政株を買いたい」との声が響く。
 売らない投資家と、買えなかった投資家。これが上場初日に準備された需給の構図だ。初値を付けた後も株価はスルスルと上昇していく。
 それを見て短期売買のデイトレーダーが動いた。「これは間違いなくもうかる」。4日、1億円超を運用する30歳代の個人投資家は、かんぽ生命株を4回に分けて計4100株購入した。
 初日の取引は日本郵政が売り出し価格を26%、ゆうちょ銀が同15%上回って終えた。目立ったのはかんぽ生命だ。制限値幅の上限(ストップ高)まで買われ、売り出し価格を56%も上回った。
 販売幹事団が描いたシナリオでは、陰の主役はかんぽ生命だった。売り出した株数が日本郵政やゆうちょ銀行の15%前後と極端に少ない。財務省の意向通りに個人の売りも抑えられた。品不足のかんぽ生命株が上昇し、他の2社に買いが波及すると読んでいた。まさにシナリオ通りに進んだ初日の値動きを、大手証券の幹部は「まるで官製相場だ」と表現する。
 2日目。新たなプレーヤーが参入してきた。一部の証券会社が信用取引で使う株の貸し出しを始めると、通常の数倍にあたる手数料を支払って応じたのは海外のヘッジファンドだった。借りた株を使い、かんぽ生命株に売りを仕掛けた。
 投資初心者からヘッジファンドまで巻き込み、売りと買いが高速で回転していった。売買注文は郵政3社に集中し、2万回もあれば大商いとされる取引回数は、22万回を超えた。インターネットの掲示板には「郵政祭り」の言葉が躍った。
熱狂の後は…
 日本郵政の西室泰三社長(79)は郵政3社の上場で「全国でタンス預金が動いた」と振り返り、「貯蓄から投資」への手応えを口にする。だが、祭りはいずれ終わる。
 野村ホールディングスの永井浩二グループ最高経営責任者(CEO、56)は「実力が分かるのは需給による変動が一服してからだ」と話す。郵政3社は成長のシナリオを描ききれていない。熱狂が冷めた後も株高を維持できるのだろうか。
(田口良成、宮本岳則、野口和弘)