2009年8月16日(日)
#87 リトル・ミルトン「A Juke Joint in My House」(Feel It/Malaco)
リトル・ミルトン、2001年のアルバムより、ラリー・アディスン、ジョージ・ジャクスンの作品を。
リトル・ミルトンというシンガー/ギタリスト、日本ではあまりファンが多くないようだが、聴かないというには実にもったいない、そんな魅力にあふれたひとだ。
60年代はチェッカーに在籍、71年から75年にはスタックスにて精力的な活動をしていた。約5年間で実に10枚のアルバムがある。
リトル・ミルトンことミルトン・キャンベルは、34年ミシシッピ州インバネス生まれ。2005年テネシー州メンフィスにて70才で亡くなっている。
このマラコでの録音は、晩年にさしかかってのものだが、全然衰えを感じさせぬ、まことにファンキーな歌声を聴くことが出来る。
歌に加え、ギターでも健在ぶりを示している。やはり、彼は自分がシンガーであると同時に、ギタリストであるという意識を強く持っていたようで、2005年のテラークにおける遺作「Think of Me」でも、ギターを抱えたジャケ写を撮らせている。
ミルトンにとっても、やっぱり、ギターこそは生涯の伴侶なんだなぁ。
その昔は、発売されて間もないギブソン・フライングVを愛用していて、その写真は以前に「一日一枚」で取り上げたサン・レーベルのコンピ盤「Blue Flames」にも載っていた。
それを見るに、筆者にも劣らぬ、相当なギター偏愛者ではなかったかと思う(笑)。
まあそれはともかく、彼の個性とは、ブルースという旧世代の黒人音楽と、ソウル、さらにはファンクという新世代のそれとを、見事に混ぜ合わせたブレンダーぶりにあると思うね。
ノリはソウル。でもフレージングなど表現にはかなりブルース的な要素が含まれており、彼の本来の出自を感じさせる。その骨組みはコンテンポラリーなものでありながら、ガチなブルース・ファンにもすっと入っていける。いわば、現在のブルース・ミュージックの基礎を築いた先駆者だ。
21世紀初頭のこの曲でも、その姿勢は一貫して変わっていないと思う。
粘りのあるボーカル、アルバート・キングにも通じるところのある、ファンキーなギター・フレーズ。これぞ、ミルトン節である。
老いてなお情熱を忘れぬ、ブルース・マスターの好演。聴くべし!