NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#131 ハウンド・ドッグ・テイラー「Giive Me Back My Wig」(Hound Dog Taylor & the Houserockers/Alligator)

2023-08-10 05:00:00 | Weblog
2010年7月24日(土)

#131 ハウンド・ドッグ・テイラー「Giive Me Back My Wig」(Hound Dog Taylor & the Houserockers/Alligator)





シンガー/スライド・ギタリスト、ハウンド・ドッグ・テイラーのデビュー・アルバムより。71年リリース。テイラー自身のオリジナル。

ハウンド・ドッグ・テイラーは1915年、ミシシッピ州ナッチェス生まれ。ハウリン・ウルフの「ナッチェス・バーニング」で歌われた街だ。本名はなんと、セオドア・ルーズベルト・テイラーという。えらくVIPな名前をつけられてしまったものである(笑)。

小作農として働くかたわら、20才頃からギターを始める。故郷周辺のジューク・ジョイントでの演奏活動を経て、42年シカゴへ移住。

いくつかのレーベルからシングルをリリースするも、ほとんど日の目を見ることなく30年近くくすぶっていた状態のテイラーを高く評価したのが、ブルース・イグロアという青年だった。彼は、テイラーのレコードを出したい一心で、勤務していたデルマークを辞して、アリゲーター・レーベルを立ち上げたのである。

このときから、テイラー、そしてアリゲーターの快進撃が始まった、ということだ。

記念すべきレーベル第一号が、まさにこの「Hound Dog Taylor & the Houserockers」なるアルバム。

デビュー盤とはいえ、すでに50代後半を迎えていたテイラー。その完成度はハンパなく高かった。

この一枚の成功後、73年にはセカンド・アルバム「Natural Boogie」を出し、75年には初のライブアルバムを準備していたが、テイラーが60才の若さでガンにより死去。ライブアルバムは死後リリースされる。

亡くなる前の、ほんの5年間だけ、スポットライトが当たったわけだが、残されたわずか数枚のアルバムによって、テイラーはブルース界において特別の存在となり、いまだに根強いファンが多いのである。

テイラーのサウンドの特徴は、まずそのエグみのある歌声、そして迫力満点のギター・サウンドにあるといえるだろう。

テイラー自身のスライド・ギターも、ナチュラル・ディストーションが目一杯かかっていて相当エグいのだが、もうひとりのギタリスト、ブルワー・フィリップスのプレイもかなりヤバい。ときにはリズム・ギター、ときにはベース、ときにはリード・ギターのようにと変幻自在のプレイで、テイラーを完璧にフォローしている。テッド・ハーヴェイのドラムスも、やたら元気がいい。スタジオ録音といっても、まるでライブのような熱さだ。

彼らの演奏のスゴさは、きょうの一曲を聴いていただければ、十二分に納得していただけるだろう。

ブルースにもさまざまなスタイルなものがあるが、ハウンド・ドッグ・テイラーらの演奏は、その中でももっともホットであり、パンキッシュであり、ロックであると思う。若い世代にもおススメ。

一度聴けば、その強烈な刺激にやみつきになること請け合い。ぜひ、猛犬テイラーのひと噛みにやられてみて。

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