2010年9月5日(日)
#137 ラッキー・ピータースン「Nothig But Smoke」(I'm Ready/Verve)
#137 ラッキー・ピータースン「Nothig But Smoke」(I'm Ready/Verve)
ラッキー・ピータースン、92年のアルバムより。ボブ・グリーンリーとラッキーの共作。
筆者が思うにラッキー・ピータースンくらい、「ハク」のいっぱいついた中堅ブルースマンは他にいまい。
64年ニューヨーク州バッファロー生まれ。5才にしてウィリー・ディクスンの肝煎りでオルガニストとしてデビュー。早熟の神童として注目され、17才でリトル・ミルトンのバックバンドを率いるようになり、その後ボビー・ブランドのバンドを経て、89年ソロとなる。アリゲーターを経て92年、名門レーベル・ヴァーヴに移籍するといった、まことに華麗なる経歴の持ち主なのだ。父親がブルース・クラブを経営していた関係で、幼い頃よりブルースな環境にどっぷりつかって育ってきたことも大きい。まさにブルース界のサラブレッド。
ソロになってからは、本来のパート、オルガンよりもギターのほうに力点をおくようになり、現在ではどちらかといえば「ギタリスト」としてのイメージが強くなっている。
派手にチョーキングし、大きくタメるタイプのギター・プレイは、アルバート・キングやアルバート・コリンズの影響が強いとよくいわれる。
白人でいえば、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの線か。SRV同様、非常に万人受けする要素をもったギターだと思う。王道ブルースギターといってもいい。
きょうの一曲は、ヴァーヴ移籍第一弾のアルバムからのスローブルース。ラッキーの歌、ギターを全面的にフィーチャーしたナンバー。
本来副業パートだったギターを、オルガンと同じくらい達者に弾きまくるラッキー。ホントに器用なひとだと思う。
歌の方もなかなかいい。派手やかさはないが、のどの渋さで勝負するタイプ。
本人も「プレイヤー」というよりは「ブルースマン」としての意識が強く、インタビューなどでもそういう趣旨の発言が多い。非常に歌に重きをおいていることがよくわかる。
ソロ歴も20年を突破した。なかなか来日する機会はないが、御年46才。これからがブルースマンとしていよいよ脂の乗ってくる世代だけに、もっとガンガン、自己の存在をアピールしてほしいもんだ。
ブルースの担い手は白人、アジア人とどんどん広がっているものの、やはり本来の担い手である黒人にこそ頑張ってほしい。
黒人ならではのボーカル表現、ギタープレイを聴かせるラッキー。まちがいなく、20年後には大御所になっているだろう器だ。
弱冠30手前にしてこの貫禄。若きブルースの王者、ラッキー・ピータースンの勇姿をとくと見てほしい。
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