コンタクトレンズがずれてるけど、このまま行こう。
辛くなったら、キャメルバックのアミノバイタルを飲みます。クエン酸とのミックス。
キャメルバックは用意してて本当によかった。
飲むたびに、少しだけ元気が出ました。飲む事で気持ちも落ち着きました。
曲がっても曲がっても坂が続きます。しんどい。もう余力なんて残ってません。
何で体が動くのかもよくわからない・・・。
でも漕いでると距離は進んで行きます。あたりまえですが、不思議です・・・。
黙々と、黙々と漕いでいたら、なんだか体が落ち着いて来ました。
・・・前を向いていこう。
やがて道が下り始めました。
先行する選手を抜いて、最後の下りだと思い、足を回してスピードを上げます。
ところが再び登り坂が出現。ダメだ~。
まだだったんだ~。
さっき抜いた人に、また抜かされます。
この上り下りはこの後何回か繰り返しやってきて、下り始めても
それが最後の下りなのか、信用できなくなってきました。
40km地点の看板を過ぎます。
もう雨は土砂降りで、サングラスは曇り、ますます視界はぼんやりとしか見えません。
左のコンタクトレンズもずれたままです。
顔を雨がだらだら流れて行きます・・・。
40kmを過ぎたのに道が下りになりません。 おかしい、まだ?
すると、緩やかな下りが出て来ました。
でも様子をみましょう。 また上り坂が来るとツライからなあ、と考えていたら、
黄色いウェアの選手が凄い勢いで抜いていきました。
さらにもう1台に抜かれます。
もしかして!?
先行する2台はあっと言う間に先のカーブを抜けて行きます。
その差は30m。
動き出しが遅かった分、引き離されます。
チラチラと見え隠れしていた背中が、カーブの先に隠れる様になるまで引き離されました。
・・・もういいや、良かった。
後は下りだけです。これで帰れる。終わりだ・・・。
あの人たちは、自分より経験も実力も、ずっと上の人達に違いないから・・・。
負けて当然。
・・・でも。
前を向いたら黄色い背中が小さく見えました。
何かに届きそうな気がしました。
・・・足を回す。もっと回す。もっともっと回す。
アウターギアにシフトして、前を向きます。
自分に何かを言った様な気がしますが、覚えてません。
先行する2人がみるみる近づいてきます。
1人目をパス。 下りなら速いんだと信じます。
暴れるマシンをひざ下で踊らせながら、漕ぎに漕ぎます。
前を見ると、10人くらいがばらばらと並んでます。集団に追い付いたみたいです。
黄色いウェアの人に追いつきました。 一緒に、次々と前を抜いて行きます。
でも、自分はまだいける、もっと速いんだと自分に言い聞かせて。
何人か選手を抜いた後、少しの直線、そして右コーナー。
黄色いウェアの選手は左、自分は右。
自分はイン側、瓦礫がゴロゴロしてます。
ブレーキで限界まで耐えて飛び込みました。
自転車が空中で跳ねます。
無理矢理に押さえ込んで、出口を向きます。
ここで抜かなきゃこの人は抜けない。 そして自転車一台分、抜け出しました。
もっともっと漕ぐ!
目の前の選手をどんどん抜いていきます。 抜きたい。 抜かれたくない。
前だけを見て、全力で漕ぎます。 後ろを振り向く余裕は全くありません。
全部で10台以上は抜いたはず。
一度崖ギリギリまで膨らんだ時は、息が止まるかと思いました。
体を打つ雨は土砂降りとなって、腕に当たると痛いくらいです。
木を伐採している場所の広い道を全力で下ります。
自分の息遣いだけがやたら大きい。
後ろを振り向きます。
誰もいない。
カーブの手前に看板が見えます。
「もうすぐゴール」 ・ 「減速」
思わず何か叫んでしまう。
もう一度看板が見える。
「もうすぐゴール」 ・ 「減速」
コーナーを曲がります。
音楽が聞こえます。
ゲートが見えました。
アナウンスが自分のゼッケンナンバーを読み上げます。
感情がこみ上げます。 涙がでそうだ。
ゲートをくぐりながら、無意識に拳を突き上げていました。
その6へつづく
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