ついに林道が始まりました。
斜度はきつくもないけど、緩くもないといったところでしょうか。
でもギヤは早くもフロントがミドル、リヤはローの組み合わせになってしまいます。
ここから13km地点までずっと登りです・・・。
この時点ですっかり上位入賞は無理だと悟りました。 いやもう足が回らない・・・
皆さん速い。登りで次々に抜かれて行きます。
路面には小川ができて、石が水に洗われてます。
ダブルトラックなので、轍のどちらか片方が比較的路面が良く、
もう一方は川といった具合です。
ハードテールの選手が右側から抜いて行きます。
やっぱりハードテールは登りに強いんだな・・・と見送ると、次はフルサスい抜かれます。
マシンの差じゃなくて、自分が遅いんですね・・・。
雨は本降りのままです。
ケツの筋肉が痛い・・・。でも々とペダルを漕いで行きます。
しんどいなあ・・・出なきゃよかったかもなあ・・・。 苦しい・・・。
ラミネートした地図を見ます。端っの子供を見て、思わず微笑みます。
その横には自分で書いた言葉。
「笑って、前へ」
前を向きます。書いておかなきゃ、しんどくて俯いたまんまで走りそうです。
雨が顔を流れていきます。
何人に抜かれたんでしょうか。
100位くらいまで落ちたのかも? わかりません。
この頃になると、やっと周りと同じ様なペースで走れる様になってきました。
最初のピーク。 やった、下り坂だ・・・。
フロントギアをアウターに入れて漕ぎます。
前の選手たちにみるみる追い付きます。
こっちはいつもみたいに漕いでるだけなのに。・・・もしかしたらワタクシ下り速いんでは?
いやこれはフルサスの恩恵でしょう(笑)
アウターでガンガン漕ぎます。
見える範囲の選手は全て抜いて、スタート地点に戻って来ました。
ここで約19km。 スタート地点を左に折れて再び舗装路の登りに入ります。
しばらく登っているうちに、さっき抜いた人全員に抜かれました。・・・ああ。
やがて道は林道に変わり、ここから5kmの坂。
雨は激しさを増して、道が完全に川になっている場所もあります。
インナー×ローでゆっくりゆっくり登っていきます。
すぐにでも足を着いて歩いてしまいたい。 しんどくてしんどくて堪らない。
でも我慢します。
ラインを間違えて石に乗りあげます。 その度にふらついて体力が奪われます。
後ろから選手がやってくる音がします。 チェーンのすれる音、ギヤチェンジの音。
ゆっくりとじわじわと抜かれます。 何人にも抜かれていきます。
また後ろから誰か来ている音がします。チェーンが擦れる音です。
振り返るけど、誰もいません・・・。
雨の音、チェーンの音、自分の息遣い、そして幻聴・・・。
それが、聞こえる音の全てです。
黄色いパイロンが見えました。
100kmとの合流地点に辿り着きました。
しばらく行くと、テントがあってパワーバーを配ってくれました。
走りながら受け取ります。
「袋やぶってありますからっ」と係の方。
端っこをかじると、意外と美味しいです。 バナナフレーバー。
でも固形物は飲み込むのがつらいので、後で食べようと思いトライバッグにしまいます。
その時、岩で自転車が跳ねて、トライバッグの中のフラスクを落としそうになりました。
フラスクの中には、後で補給しようと思ってるゼリーを詰めてあるから落としたら大変です。
チェックポイントはまだ先・・・。たしか27km地点だったような・・・。
延々と坂を登ります。 そのうち、太ももに嫌な感覚が襲ってきました。
やばい、攣りそうです。
しかも両足一緒にきてしまいました・・・。
太ももの筋肉が締めあげられる様な激痛。多少平坦なところでゼリーを補給します。
足はまわしつつ、太ももの様子をみていたら、やがて攣りは収まってきました。
再び坂を下ります。 振動や時折来る岩の突き上げで手のひらがしびれてます。
手のひらに力が入り過ぎです。リラックス、リラックス。
やがて、テントが見えてきました。
チェックポイントです!
42kmでは唯一のチェックポイント。 ここを越えれば足切りはありません。
あとはゴールまで走ればOK。 気持ちが楽になります。 嬉しい。
ゲートをくぐります。 かすかに「ピッ」という音がします。 いま、何時間が経過したんでしょう?
腕時計を見ます。 2時間19分。 ああ、そんなに時間が掛かってしまったんだ・・・。
目標は3時間切り。 あわよくば2時間台中盤なんて、レース前に思ったこともあったけど、
現実は厳しいです。
まだ27km。
42kmは実質47kmくらいだから、残り20km程残して、この時間・・・。
・・・苦しい。
ゲートの先の直角コーナーの水路は、蓋が無いから要注意だと聞いていたので、
スピードを落として慎重に渡ります。
リム打ちパンクは絶対に避けないと。
河原に出ました。 目の前には土管に土をかぶせた簡易の橋があります。
橋を渡りながら、前を見ます。 ここが噂の勾配16%・・・。
絶対に無理! とても漕いでは登れません。 足が完全に終わってしまいます。
潔く自転車を降り、押し始めます。
周りの選手もみんな押してます。 一人頑張って漕いで登っている選手がいましたが、
やがてふらつき、足を着いてました。
土砂降りのなか、黙々と自転車を押します。 俯いてるから視界に入るのは黄土色の瓦礫の道だけ。
少し勾配が緩んだ所で自転車に跨ります。 ビンディングをはめて漕ぎます。
フロントが浮いてこけそうになります。 ギヤが軽すぎます。
一度降りて、手でペダルを回し、ギヤを変えます。 体が重い。
再びまたいで漕ぎ始めます。 ゆっくりゆっくり登り、曲がっても曲がっても坂が続きます。
この頃には周りはずっと同じメンバーで、抜いたり抜かれたりという具合。
後半に入り、斜度が緩やかなエリアに入ります。
下りの道で、フラスクを取り出し、ゼリーを飲み込みます。
水たまりが凄い。周りはクマザサかな。 もう一つのフラスクも飲み干します。
スピードが出せそうなエリアだったけど、補給を優先してゆっくり走りました。
前を見ると、すぐ先にパンクしている選手。
その数メートル先にもパンク修理中の選手。
そしてその先にも、またその先にも・・・。
全部で6~7人の選手が一斉にパンクしていました。
きっと、水たまりの中に鋭利な岩か何かが潜んでいたんでしょう。
たまたまゆっくり走っていたから助かったのかもしれません。
気合いを入れなおし、足に力を入れます。
やがて再び急な坂が出てきました。これもキツイ。素直に自転車から降ります。
再び坂を押し上げて・・・。
これで2回目の押しです。
押さずに走りきるなんて、今の自分には無理です。
足りないのは筋力、基礎体力、根性?
自転車に跨ります。 あと10km程登れば、下りになるはず・・・。
それがゴールまで続く長い下りです。
雨は土砂降りに近くなってきました。
道は川になり、平坦な所には深い巨大な水たまりができています。
路面が柔らかい場所は、数十台のMTBの轍でぐちゃぐちゃになり、泥沼の様相です。
泥にタイヤが深く埋まり、下りでも漕がないと止まってしまう程。
だんだん空が近くなります。頂上が近づいてきます。
あそこまで行けば下りが始まるはずだと思い、カーブを回り込むとまだ坂が続いてます。
この繰り返し。
39km地点過ぎから下りが始まるはず。
今の距離を知りたくてサイクルコンピュータを見るけど、曇って距離が見えません。
サングラスを拭いても拭いても、ぼやけて見えない・・・。
何かおかしい・・・。
サングラスを外して周りの景色を見て、やっと気づきました。
左目のコンタクトがずれてます。 何か見にくいと思ってたらそれでなのか・・・。
眼の奥でコンタクトレンズがゴロゴロしてるけど、もういいや。
視力が悪い右目だけ入ってりゃ前は見えます。
どうせ顔を流れる雨で、視界は常にぼやけてるんだから、このまま行こう。
その5に続く・・・