『俺も悪かった、だと…』
度のきついメガネの奥で藤沢課長の目はメラメラと燃え上がりました。 東京へ行きたい自分が転勤は未しも何の罪も無い岩川さんが左遷とはどう言う事なんだよ!
興奮の余り唇がブルブル震えました。そんな鬼みたいな形相を見た長原部長は 媚びを売るように『藤沢課長落ち着いてよ』
これが落ち着いていられるか!
アイスコーヒーをグビリと飲んで尚も食って掛かる様子を岩川さんが止めに入りました。 『課長…私明日もう一度行きます』 『行ってお詫びしてきますから…』 若い経験不足な岩川さんは健気にも自分の責任と主張します。
これを聞いて藤沢課長は益々怒り心頭です。
自分の失敗を棚に上げて人を切るなんて断固許せない ぞ。
『岩川さんは悪くないよ、だから君が行く必要はないからね』言い切ると、長原部長を見て『部長明日もう一度私と行きましょう』と迫りました。
『明日は駄目だよ他の用事かあるからね』軽く躱(かわ)しながらそれでも 『明後日常務が来るから相談するよ』
『相談って…』
どうせ自分可愛さのご都合報告だろう。
岩川さんは自分の事で上司が揉めているのが気が気ではありませんでした。二人のやり取りをオロオロするだけです。
三人が座っているテーブルだけが黒雲垂れこめた雰囲気になっていました。
『じゃあそう言う事で…』
藤沢課長の顔も見ずに長原部長はプイと席を立ちました。
『あぁ藤沢課長、私は会議があるから先に帰るわ』
捨て台詞を吐いたまま駅に向かって帰って行きました。
後に残された藤沢課長と岩川さんはその後ろ姿をただ見送っているだけでした。
冷房の利いた車両は空いていました。長原部長は車両の隅に立つともう一度復唱しました。
今回のクレームは取り敢えず極秘処理するとして、担当の岩川は研修目的で長崎工場に暫く飛ばす。 その間腹心の矢島にクレーム処理を任せる。うーん藤沢はどうするかなぁ、
あいつ俺に逆らったから…罰を与えなきゃあ…
いろいろ考えていました。
要するに長原は保身のために二人の部下を処分するつもりなのですね。…私はこの内幕を聞いて驚きました。だってこんな横暴が許されるのでしょうか。
しかし現実には一か月もしない内に 岩川さんは新製品の開発の手助けで一か月間の長崎工場に研修となりました。 例のクレーム処理は矢島課長(クレーム処理の専門)が対応して何とかすませました。
藤沢課長…
この人ですが、希望の東京への転勤は叶わず未だにここにいらっしゃいます(笑)
たぶん一段落した時が危ないのじゃあないかな…
因(ちな)みに会社の組織として人事権・査定権は二段階とばしです。 平社員の査定・人事権は課長以上となります。
課長のそれは本部長以上です。
つまり長原部長が部長権限で動かせるのは係長行以下となるのです。 だから岩川さんは早く長原部長の意向通りにできました。藤沢課長には本部長以上の指揮が必要なので長原部長としては間接的に動かざるを得ないのです。
私は根本常務に上告している長原部長の姿が見えませんがいずれは藤沢課長は飛ばされるのだと思っています。
部下を庇(かば)ったせいで飛ばされたら堪(たま)ったものじゃあないでしょうか…
理不尽な上司に仕えるのもサラリーマンの宿命なのでしょうね…
後日談… 藤沢課長は希望勤務地には行けませんでした。相変わらず京都勤務です。これは長原部長の意向なのか又別の勢力が動いたのか、私には分かりません。今はただ早く岩川さんが戻ってくるのを祈っております。
なんたって彼女は京都の奇跡なのですから…
度のきついメガネの奥で藤沢課長の目はメラメラと燃え上がりました。 東京へ行きたい自分が転勤は未しも何の罪も無い岩川さんが左遷とはどう言う事なんだよ!
興奮の余り唇がブルブル震えました。そんな鬼みたいな形相を見た長原部長は 媚びを売るように『藤沢課長落ち着いてよ』
これが落ち着いていられるか!
アイスコーヒーをグビリと飲んで尚も食って掛かる様子を岩川さんが止めに入りました。 『課長…私明日もう一度行きます』 『行ってお詫びしてきますから…』 若い経験不足な岩川さんは健気にも自分の責任と主張します。
これを聞いて藤沢課長は益々怒り心頭です。
自分の失敗を棚に上げて人を切るなんて断固許せない ぞ。
『岩川さんは悪くないよ、だから君が行く必要はないからね』言い切ると、長原部長を見て『部長明日もう一度私と行きましょう』と迫りました。
『明日は駄目だよ他の用事かあるからね』軽く躱(かわ)しながらそれでも 『明後日常務が来るから相談するよ』
『相談って…』
どうせ自分可愛さのご都合報告だろう。
岩川さんは自分の事で上司が揉めているのが気が気ではありませんでした。二人のやり取りをオロオロするだけです。
三人が座っているテーブルだけが黒雲垂れこめた雰囲気になっていました。
『じゃあそう言う事で…』
藤沢課長の顔も見ずに長原部長はプイと席を立ちました。
『あぁ藤沢課長、私は会議があるから先に帰るわ』
捨て台詞を吐いたまま駅に向かって帰って行きました。
後に残された藤沢課長と岩川さんはその後ろ姿をただ見送っているだけでした。
冷房の利いた車両は空いていました。長原部長は車両の隅に立つともう一度復唱しました。
今回のクレームは取り敢えず極秘処理するとして、担当の岩川は研修目的で長崎工場に暫く飛ばす。 その間腹心の矢島にクレーム処理を任せる。うーん藤沢はどうするかなぁ、
あいつ俺に逆らったから…罰を与えなきゃあ…
いろいろ考えていました。
要するに長原は保身のために二人の部下を処分するつもりなのですね。…私はこの内幕を聞いて驚きました。だってこんな横暴が許されるのでしょうか。
しかし現実には一か月もしない内に 岩川さんは新製品の開発の手助けで一か月間の長崎工場に研修となりました。 例のクレーム処理は矢島課長(クレーム処理の専門)が対応して何とかすませました。
藤沢課長…
この人ですが、希望の東京への転勤は叶わず未だにここにいらっしゃいます(笑)
たぶん一段落した時が危ないのじゃあないかな…
因(ちな)みに会社の組織として人事権・査定権は二段階とばしです。 平社員の査定・人事権は課長以上となります。
課長のそれは本部長以上です。
つまり長原部長が部長権限で動かせるのは係長行以下となるのです。 だから岩川さんは早く長原部長の意向通りにできました。藤沢課長には本部長以上の指揮が必要なので長原部長としては間接的に動かざるを得ないのです。
私は根本常務に上告している長原部長の姿が見えませんがいずれは藤沢課長は飛ばされるのだと思っています。
部下を庇(かば)ったせいで飛ばされたら堪(たま)ったものじゃあないでしょうか…
理不尽な上司に仕えるのもサラリーマンの宿命なのでしょうね…
後日談… 藤沢課長は希望勤務地には行けませんでした。相変わらず京都勤務です。これは長原部長の意向なのか又別の勢力が動いたのか、私には分かりません。今はただ早く岩川さんが戻ってくるのを祈っております。
なんたって彼女は京都の奇跡なのですから…