昼間怪しい媚煙を吸い込み昏倒した臼井社長は見知らぬ老人と娘に助けられました。ところがその夜地酒の老酒を飲み過ぎて再び昏倒の憂き目に遭いました。(懲りない奴だね(笑) その臼井社長…目を覚ませたのは寝床のなかでした。 喉がヒリヒリした痛みで目が覚めました。 『ここは何処だろ…』
霞む頭を叩きながら起き上がりました。
周りはまだ薄暗くて夜明けにほど遠い様子です。
腕時計を見ると三時です。『そうか! あれから俺は倒れ込んでここに寝かされたのか』
ようやく昨夜の様子が思い出されました。
『なんてことなんだ…』助けてもらった挙句又迷惑を掛けちまったんだな…
シャワーを浴びて夕食をご馳走になり…あぁ~飲まなきゃあ良かったね(苦笑)あの老酒…
…臼井社長が後悔しますが後の祭りでした。
取りあえず起きるかこのまま寝ているか~ゴソゴソとベットでしていました。
静かな夜です。
枕元に花瓶みたいなものが置いてありました。『?』口をつけてみると湯冷しです。『♪』これで喉の渇きを潤すと人心地つけました。娘の心配りに昨日の出来事を思い返しました。
『俺は馬鹿だったなぁ…』
仰向けになると薄暗い中に天井がぼんやり見えました。斜め上の窓から月明りが差し込んでいます。
やがて目が馴れるに従って部屋全体が見渡せるようになってきました。 狭い寝室ですが、この窓の下から通路にかけて白いベットがありました。たぶん老人が休んでいるのでしょう。
娘の寝床は別のところなのか見渡す限りありません。 『あれ…いつの間にか娘を捜しているぞ』苦笑しながら思いました。
まだ子供かと思っていた娘でしたが、シャワーの介添えをしてくれた時垣間見た肢体には女の色気がありました…
寡黙で実直な祖父との質素な暮らしぶりは日本の昔の暮らし振りとそっくりでした。臼井社長は東京の下町育ちですが、当時(三十五年前)東京でも平屋の瓦葺きが一般的な民家でした。そばに流れる小川で魚掴みで遊んだことが昨日の事のように思い出されます。その東京は見る影もないほど変わりました…
今ここは多少の違いはあるにしても 自分が育ったあの少年時代の風景そのままでした。
『こんなところでのんびり暮らすのも悪くないなぁ』 天井に薄いしみが見えています。
こんなしみも昔だったら当たり前でしたから、たかがしみにも懐かしさが込み上げてきたのでした。
昔…まだ老け込む年でもないけど… ここ数年いや十年以上多忙を極めた人生でした。 会社から将来を嘱望されていたから忙しいことがステータスみたいに思っていたのでした。いつも将来を考え突き進んでいました。猛烈社員の代名詞でしたから、こんなのんびりした時間なんてほんと久々でしたね。
臼井社長は手枕でしみのついた天井をぼんやりと見つめていました。
『静かだなぁ』
口にして、もう時計を見たり時間を気にすることはありませんでした。朝になれば明るくなるさ~
足の爪先でリズムを取り口笛でも吹きたい気持ちです。
『ガタン!』裏の方から音がしました。
この時間に?… 起き上がって確かめるけど真っ暗で何も見えません。
部屋の外れに寝ている老人は全く微動だにしません。 臼井社長はそうっと立ち上がると音のした裏へ向かいました。 寝室を抜けて通路伝いに裏木戸から外に出ました。外は月の光に照らされて真昼のような明るさでした。夕方使ったシャワールームは簡単な囲いをあしらっているだけでムシロを取り払っていましたからありません。敷地をレンガが取り囲んで隅に 大きな木が黒々とたたずんでいるだけです。レンガ塀の片隅に小さな入口らしきものがありました!
あそこから出入りも出来るんだ♪
『こりゃあ益々うちの家にそっくりだぞ』臼井社長は自分の育った幼少の頃と同じ環境を懐かしむと暫くぼんやりと眺めていました。街灯とか余分な明かりはありませんから月の明りだけで裏庭を見渡せるのです。余分な明かりがないせいか隅々には陰翳が残り神秘さと闇の深さを感じさせています。古来いろいろな寓話が生まれたのもこんな風なところからだと頷けますね。そして不審な音はすっかり忘れていました。
その時塀の片隅に素早く動く影を見ました…
霞む頭を叩きながら起き上がりました。
周りはまだ薄暗くて夜明けにほど遠い様子です。
腕時計を見ると三時です。『そうか! あれから俺は倒れ込んでここに寝かされたのか』
ようやく昨夜の様子が思い出されました。
『なんてことなんだ…』助けてもらった挙句又迷惑を掛けちまったんだな…
シャワーを浴びて夕食をご馳走になり…あぁ~飲まなきゃあ良かったね(苦笑)あの老酒…
…臼井社長が後悔しますが後の祭りでした。
取りあえず起きるかこのまま寝ているか~ゴソゴソとベットでしていました。
静かな夜です。
枕元に花瓶みたいなものが置いてありました。『?』口をつけてみると湯冷しです。『♪』これで喉の渇きを潤すと人心地つけました。娘の心配りに昨日の出来事を思い返しました。
『俺は馬鹿だったなぁ…』
仰向けになると薄暗い中に天井がぼんやり見えました。斜め上の窓から月明りが差し込んでいます。
やがて目が馴れるに従って部屋全体が見渡せるようになってきました。 狭い寝室ですが、この窓の下から通路にかけて白いベットがありました。たぶん老人が休んでいるのでしょう。
娘の寝床は別のところなのか見渡す限りありません。 『あれ…いつの間にか娘を捜しているぞ』苦笑しながら思いました。
まだ子供かと思っていた娘でしたが、シャワーの介添えをしてくれた時垣間見た肢体には女の色気がありました…
寡黙で実直な祖父との質素な暮らしぶりは日本の昔の暮らし振りとそっくりでした。臼井社長は東京の下町育ちですが、当時(三十五年前)東京でも平屋の瓦葺きが一般的な民家でした。そばに流れる小川で魚掴みで遊んだことが昨日の事のように思い出されます。その東京は見る影もないほど変わりました…
今ここは多少の違いはあるにしても 自分が育ったあの少年時代の風景そのままでした。
『こんなところでのんびり暮らすのも悪くないなぁ』 天井に薄いしみが見えています。
こんなしみも昔だったら当たり前でしたから、たかがしみにも懐かしさが込み上げてきたのでした。
昔…まだ老け込む年でもないけど… ここ数年いや十年以上多忙を極めた人生でした。 会社から将来を嘱望されていたから忙しいことがステータスみたいに思っていたのでした。いつも将来を考え突き進んでいました。猛烈社員の代名詞でしたから、こんなのんびりした時間なんてほんと久々でしたね。
臼井社長は手枕でしみのついた天井をぼんやりと見つめていました。
『静かだなぁ』
口にして、もう時計を見たり時間を気にすることはありませんでした。朝になれば明るくなるさ~
足の爪先でリズムを取り口笛でも吹きたい気持ちです。
『ガタン!』裏の方から音がしました。
この時間に?… 起き上がって確かめるけど真っ暗で何も見えません。
部屋の外れに寝ている老人は全く微動だにしません。 臼井社長はそうっと立ち上がると音のした裏へ向かいました。 寝室を抜けて通路伝いに裏木戸から外に出ました。外は月の光に照らされて真昼のような明るさでした。夕方使ったシャワールームは簡単な囲いをあしらっているだけでムシロを取り払っていましたからありません。敷地をレンガが取り囲んで隅に 大きな木が黒々とたたずんでいるだけです。レンガ塀の片隅に小さな入口らしきものがありました!
あそこから出入りも出来るんだ♪
『こりゃあ益々うちの家にそっくりだぞ』臼井社長は自分の育った幼少の頃と同じ環境を懐かしむと暫くぼんやりと眺めていました。街灯とか余分な明かりはありませんから月の明りだけで裏庭を見渡せるのです。余分な明かりがないせいか隅々には陰翳が残り神秘さと闇の深さを感じさせています。古来いろいろな寓話が生まれたのもこんな風なところからだと頷けますね。そして不審な音はすっかり忘れていました。
その時塀の片隅に素早く動く影を見ました…