軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

雲場池の水鳥(23)オシドリ2022

2022-12-16 00:00:00 | 野鳥
 昨年は、朝の散歩でオシドリの姿を見かけたのは、本ブログで紹介した5月25日の1度、それも♂一羽だけであった(2021.7.9 公開)。

 今年もまた姿を見せてくれるだろうか、できれば♀の姿も見てみたいと思っていたところ、軽井沢町が作成した今年の観光ポスターが配布され、そこには「風光・明媚」という文字とともに、雲場池のオシドリのペアを撮影した写真が載せられていた。

 
軽井沢町の観光ポスター2022年版(観光経済課発行)

 これには意を強くし、このポスターをショップにも掲示することにした。それと同時に、ちょっとした疑問があり、ショップに来る顧客から、「雲場池に行けばオシドリの夫婦の姿を見ることができるのですか?」との質問を受けたときに、どのように答えればいいのか考えるようになった。

 そこで、このポスターの発行元である町の観光経済課に電話をして確かめることにした。ある朝一番で担当課に電話をかけたところ、調べてから連絡をいただけるとのことであって、午後回答の電話があり、「使用した写真は間違いなく実際に雲場池で撮影されたものです。」とのことであった。

 これで、顧客には自信をもって、「運が良ければ、雲場池に行けばオシドリの夫婦に会えますよ」と伝えることができるし、私もまた、朝の散歩でその姿を撮影することができる可能性があることが判った。

 それからしばらくして、このオシドリに出会ったのは雲場池ではなく、雲場池からの流れが注ぎ込んでいる精進場川であった。ここでカルガモが泳ぐ姿を時々見かけていたので、この時もそうだろうと思いながらレンズ越しに眺めていたが、少し様子が違うことに気がつき、撮影を始めたところ、すぐにこれがオシドリの♀ではないかと気が付いた。昨年見たあのオスの派手な羽衣ではなかったからであるが、次のようである。

精進場川でカルガモとともに泳ぐオシドリ(左の1羽、2022.7.29 撮影)

川に姿を見せたオシドリ 1/3(2022.7.29 撮影)

川に姿を見せたオシドリ 2/3(2022.7.29 撮影)

川に姿を見せたオシドリ 3/3(2022.7.29 撮影)

 この日やってきたオシドリは一羽だけで、しばらく同じ場所で川辺の水草などをつついたりしていた。

川べりで餌を探すしぐさのオシドリ (2022.7.29 撮影)

川べりを泳ぐオシドリ (2022.7.29 撮影)

 やがて、川沿いの岸に上がりり休息する様子を見せた。

川沿いの石の上で休息するオシドリ 1/2 (2022.7.29 撮影)

川沿いの石の上で休息するオシドリ 2/2 (2022.7.29 撮影)

 はじめオシドリの♀だと思っていたこの個体だが、撮影した写真を図鑑と見比べるうちに♂エクリプスではないかと思うようになった。撮影条件によりやや異なるが、嘴に赤みがあることと、脇の白斑がはっきりとしていない点が♀とは異なっている。

 それにしても、昨年5月に見かけた次の写真とは大きな違いである。オシドリ♂のこの美しい羽衣は冬季のもので、繁殖期が過ぎると♀の姿に似たエクリプスに変化する。今年はすでにエクリプスに変化してしまっていた。だとすると、残念ながら今年はもうポスターのような写真を撮影することはできないことになる。


昨年見た雲場池のオシドリ♂ (2021.5.25 撮影)

 次にオシドリの姿を雲場池で見かけたのは1か月後のことであり、この時も♂エクリプスで、今度は3羽がそろって現れた。

 池の中を広く泳ぎ回り、時には近くにいたカルガモを威嚇してみたり、逆にカルガモに追い払われたりしながら楽しそうに過ごしていた。先月に比べて、羽の白斑がややぼんやりしていると思えた。

雲場池に現れた3羽のオシドリの♂エクリプス (2022.8.26 撮影)

オシドリの♂エクリプス (2022.8.26 撮影)

オシドリの♂エクリプス (2022.8.26 撮影)


オシドリの♂エクリプス (2022.8.26 撮影)

オシドリの♂エクリプス (2022.8.26 撮影)

オシドリの♂エクリプス (2022.8.26 撮影)

 3日後、今度は♂エクリプス2羽が、雲場池上流の流れがある場所に飛来していた。

雲場池上流に飛来したオシドリ♂エクリプス2羽 (右はマガモ♂エクリプス、2022.8.29 撮影)

雲場池上流に飛来したオシドリ♂エクリプス2羽 (2022.8.29 撮影)

雲場池上流に飛来したオシドリ♂エクリプス 1/6 (2022.8.29 撮影)

雲場池上流に飛来したオシドリ♂エクリプス 2/6 (2022.8.29 撮影)

雲場池上流に飛来したオシドリ♂エクリプス 3/6 (2022.8.29 撮影)

雲場池上流に飛来したオシドリ♂エクリプス 4/6 (2022.8.29 撮影)

雲場池上流に飛来したオシドリ♂エクリプス 5/6 (2022.8.29 撮影)

雲場池上流に飛来したオシドリ♂エクリプス 6/6 (2022.8.29 撮影)

 軽井沢町の観光ポスターにある、絵にかいたようなオシドリ夫婦の撮影はもうあきらめざるを得ない。それだけではなく、今年目撃できたのは♂のエクリプス、すなわち♀の姿に似せて換羽した♂の姿だけで、♀の姿もみることはできなかった。

 そうこうしているうちに、9月下旬に思いがけない2羽のオシドリの姿を目撃することになった。エクリプスから冬羽へと逆の換羽が始まっていた。特に1羽の方は換羽が進んでいて、何とも情けない姿になっていた。2羽とも嘴の色がより♂らしく赤さが増していた。

冬羽へと換羽が始まった2羽のオシドリ♂エクリプスA(左)とB(右)(2022.9.21 撮影)
 
冬羽への換羽が始まったオシドリ♂エクリプスB (2022.9.21 撮影)

冬羽への換羽がより進んでいるオシドリ♂エクリプスA 1/4(2022.9.21 撮影)

冬羽への換羽がより進んでいるオシドリ♂エクリプスA 2/4 (2022.9.21 撮影)

冬羽への換羽がより進んでいるオシドリ♂エクリプスA 3/4(2022.9.21 撮影)

冬羽への換羽がより進んでいるオシドリ♂エクリプスA 4/4(2022.9.21 撮影)

 さて、来年は♀を伴った美しい冬羽の♂と出会うことができるだろうか。期待している。

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雲場池の水鳥(22)カイツブリの子育て

2022-10-21 00:00:00 | 野鳥
 昨年カイツブリを紹介した時にも触れているが、雲場池の入り口に町が設置した案内板があり、ここに雲場池の生態系として水鳥の代表に選ばれているのが、カイツブリである(2021.6.18 公開当ブログ)。

雲場池の入り口に設置されている案内板


案内板に示されている雲場池の生態系(2022.9.26 撮影)

 数年前から朝の散歩を始め、雲場池周辺をめぐるようになったが、せっかくの機会なのでカメラをぶら下げて、池に集まってくる水鳥などを撮影してきた。しかし、カイツブリを見ることは稀で、あまりその姿を撮影する機会はなかった。

 数が一番多いのはマガモであるが、この種は冬鳥で夏には北に帰り、いなくなってしまう。通年姿を見ることができるのは、北に帰らずにここに残った1羽のマガモ♂とカルガモだけということになる。

 昨年まで、この調子では案内板の内容に「偽りあり」ということになってしまうなと思っていたが、今年はいつもと様子が違った。カイツブリの親子の姿が見られたのである。

 今年は、水鳥に関してほかにも話題が多かった年で、カルガモが7羽の雛を育てたし、昨年に続いて一羽のマガモ♂が北に帰ることなく、雲場池で夏を過ごして、エクリプスに変化し、再び元の姿に戻る一連の様子を見せてくれた。また、オシドリも何度か姿を見せた。

 カイツブリの姿も目撃してはいたものの、この池で繁殖していることには気がつかなかった。実際、昨年の撮影記録を見ても、4月から5月にかけての1か月ほどに限られていて、その後は姿を見ることはなかった。

 今年はかなり遅く、7月になってから姿を見るようになった。雲場池には先の案内板にあるように魚が生息している。魚種数は定かではないが、この案内板にある種のほか、大型の魚(ニジマス?)もわずかながら生息しているようで、およそ30㎝程に成長した姿を見ることがある。


雲場池でみられる小魚 1/2(2022.8.27 撮影)


雲場池でみられる小魚 2/2(2022.6.30 撮影)


雲場池に生息する大型の魚(2022.9.14 撮影)


カイツブリと大型の魚(2022.9.25 撮影)

 これらの魚を狙いカイツブリのほかダイサギやカワウも集まっている。次の連続写真は、まだ雛の姿を見る前のもので、カイツブリが潜水したのを目撃して、ファインダー越しに様子を見ていたところ、浮き上がってきたカイツブリの口には魚が咥えられていた。そしてやや大きめのその魚を飲み込んでしまった。


小魚を捕えて飲み込むカイツブリ(2022.8.4 撮影)
 
 さて、今年は恐らく池の中にある島で営巣していたのであろう、雛がある程度育ってきた時、突然母鳥が背中にその雛を乗せて池の中に連れ出してきたところに出会った。9月1日のことであった。


突然雛を連れたカイツブリの夫婦が池に現れた(2022.9.1 撮影)

 よく見ると左の♀(推測)の背中に2羽、右の♂のそばにもう一羽、計3羽の雛がいることがわかる。

 昨年紹介したカルガモの場合は雛と共に行動しているのは母鳥だけであったが、カイツブリは夫婦揃って雛の世話をしている。特に♂の方はかいがいしく餌を探してきては雛に与えている。♀は背中に雛を背負っているので、池に潜って餌を取ってくる作業はもっぱら♂に任せているようである。






雛に餌を与えるカイツブリの♂(2022.9.1 撮影)

 最初に見かけたときの雛は、親鳥の半分ほどの大きしかなく、母親の背中で羽の下にすっぽりと入ってしまい、姿が見えなくなるほどである。



母鳥の背中に入り守られる雛(2022.9.1 撮影)

 2日後、母親の背中に2羽の雛がはっきりと見えた。もう1羽は父親から魚をもらって何とか飲み込んでいた。

母鳥の背中に潜る2羽の雛(2022.9.3 撮影)



親にもらった魚を飲み込むカイツブリの雛(2022.9.3 撮影)

 次の日は3羽の雛が揃って母親の背中から下りて池で泳いでいるところに出会った。

母親の背中から下りて池で泳ぐ3羽の雛 (2022.9.4 撮影)

母親を追って泳ぐ3羽の雛 (2022.9.4 撮影)


頭頸部と胴部の縞模様がかわいい雛の姿(2022.9.4 撮影)

親にエサをねだる雛(2022.9.4 撮影)

母親の背中に競ってのぼる3羽の雛(2022.9.4 撮影)

親子(2022.9.5 撮影)

親から餌をもらう雛 1/2(2022.9.10 撮影)

親から餌をもらう雛 2/2(2022.9.10 撮影)

 雛は日増しに成長し、胴部分に見られた縦じま模様は次第に薄くなっていくが、まだ親と比べると体の大きさには差がある。


雛の胴部分に見られた縦じま模様は次第に薄くなっていく(20-22.9.14 撮影)


片方の足を伸ばしてくつろいだ様子を見せる雛(2022.9.14 撮影)

まだ親とは体格差がある(2022.9.14 撮影)

 表情もずいぶんしっかりした感じがするようになる。




しっかりした顔つきになってきた雛(2022.9.17 撮影)

 親鳥は、この頃から雛に餌をすぐに与えず、じらすようになった。自分で餌を採るように仕向けているようである。雛の方もこのころから潜水の練習を始めるようになった。

親鳥は雛に簡単には餌を与えない 1/2(2022.9.17 撮影)

親鳥は雛に簡単には餌を与えない 2/2(2022.9.28 撮影)

 雛の体はさらに大きくなり、親鳥と同じくらいになってきたが、まだ餌をねだる様子が見られる。

親に餌をもらおうとする雛 1/2(2022.10.3 撮影)

親に餌をもらおうとする雛 2/2(2022.10.3 撮影)

エサをもらおうと親に近づく雛(2022.10.9 撮影)


ようやくエサをもらうことができた(2022.10.9 撮影)

 10月も中ごろになると、雛は自ら潜水して餌を採り始める。このころには雛はどんどん親から離れて池を自由に動き回る。渡ってきたばかりのマガモのペアに近づくこともあり、もう親子5羽が揃った姿も撮影できなくなってきた。

潜水するカイツブリの雛(2022.10.15 撮影)


自分で潜水して採った餌を食べるカイツブリの雛(2022.10.14 撮影)

北から渡ってきたマガモのペアに近づくカイツブリの雛(21022.10.14 撮影)

 次は今朝見かけた2羽のカイツブリである。左は親鳥、右が雛だが大きさは同じくらいになった。しかし、雛の鳴き声はまだ「ピーピー」と池に響いている。

カイツブリの親鳥とすっかり成長した雛(2022.10.20 撮影)

 雛の初見から約50日が過ぎた。母親の背中にいた雛は今では広い池を自由に泳ぎ回るようになり、餌も自分で採ることができるようになってきた。カイツブリ親子の観察・撮影はまだ続けようと思うが、ひとまずここで区切りをつけることとした。




 



 



 
















 


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山野でみた鳥(13)キビタキ

2022-10-07 00:00:00 | 野鳥
 今回はキビタキ。散歩の途中で出会うと、その鮮やかな黄色~オレンジ色はとてもよく目立ち、はっとさせられる。

 いつもの「原色日本鳥類図鑑」(小林桂助著 1973年保育社発行)には次のように紹介されている。
 「ムギマキに似るが一層美麗。嘴峰11~14mm、翼長69~82mm、尾長45~56mm、跗蹠16~18mm、♂は上面前半、翼、尾は黒。眉はん、上面後半、腮、喉、胸は美しい橙黄色。翼には大きな白紋がある。♀は暗緑かっ色で下面は灰白色と暗緑かっ色とのまだらとなっている。
 夏鳥として渡来し、本州では低山帯から亜高山帯の森林中で繁殖する。ピッコロ、ピッコロと美声でなく。」

 雲場池周辺の別荘地内を歩いていると、頭上の高い位置からコジュケイの「ちょっとこい」という鳴き声にも似た美しい鳴き声が聞こえてくることがあるが、その声の主を探すとキビタキであった。

 このキビタキ、我が家の庭にも来たことがある。数年前、ウスタビガの飼育をしていた時、幼虫が多すぎると思い、庭木のオオヤマザクラに一部を移して、その葉を食べさせようとした。

 すると、どこからかキビタキがやってきて、幼虫を捕食しはじめたので、途中で移すのを諦めたことがあった。
 そのころ、雲場池の朝の散歩を始めていたが、池の周囲の遊歩道を歩いていると、キビタキが付きまとうように、あたりを飛び回るようになった。気のせいかと思うが、幼虫を催促されているように感じたのであった。

 その後もしばらくは、オオヤマザクラのすぐそばにケージを置いて、その中で、ヤママユとウスタビガの飼育をしていたので、よく近くの木の枝にキビタキがやってきて様子を伺っているようであったが、幼虫の飼育期間が終わってからはいつのまにか来なくなってしまった。

 どうやって、幼虫のいることを嗅ぎつけるのか不思議に思うが、我々には判らない嗅覚か視覚などで察知する能力があるのだろうと思っている。

 キビタキは、シジュウカラなどのカラの仲間に次いで雲場池周辺でよく見かける種で、撮影の機会も多い。当地で繁殖しているようで、幼鳥の姿を見かけることもある。

 ある朝、散歩をしていると「ピッピッ」という声と、これに続いて「ティリリリ」という地鳴きの声が聞こえてきたので2羽がいるのかと思いよく見ていると、茂みの中に居たのはキビタキのまだ幼鳥と思われる1羽であった。この1羽が2種類の鳴き声を発していた。

 
キビタキの幼鳥(2022.5.11 撮影)

 次は別の日に見かけた幼鳥の姿。

キビタキ♂の幼鳥 1/3(2022.5.2 撮影)

キビタキ♂の幼鳥 2/3(2022.5.2 撮影)

キビタキ♂の幼鳥 3/3(2022.5.2 撮影)

 続いて成鳥の写真を見ていただく。

キビタキ♂ (2022.4.29 撮影)

キビタキ♂ (2022.4.30 撮影)

キビタキ♂ (2022.4.30 撮影)

樹上で囀るキビタキ♂ (2021.6.6 撮影)

キビタキ♂ (2021.5.28 撮影)

キビタキ♂ (2022.4.30 撮影)


キビタキ♂ (2022.4.29 撮影)

キビタキ♂ (2021.5.3 撮影)

キビタキ♂ (2022.4.29 撮影)

キビタキ♂ (2021.5.28 撮影)

キビタキ♂ (2022.6.17 撮影)

キビタキ♂ (2022.4.29 撮影)

キビタキ♂ (2022.4.30 撮影)





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雲場池の水鳥(21)恋に落ちたマガオ君ー2/2

2022-09-23 00:00:00 | 野鳥
 6月上旬に美しい構造色を示していたマガオ君の頭には、中旬になると急に変化が現れた。

冬羽が美しいマガオ君(2022.6.2 撮影)

冬羽が美しいマガオ君(2022.6.7 撮影)

冬羽が美しいマガオ君(2022.6.10 撮影)

 この後、翌日には頭部に変化が現れた。

頭部や胸の羽色に変化が現れてきたマガオ君(2022.6.11 撮影)

背中の羽色も変化し始めたマガオ君(2022.6.12 撮影)

背中の羽色も変化し始めたマガオ君(2022.6.16 撮影)

背中の羽色も変化し始めたマガオ君とカル子さん(2022.6.16 撮影)

 この翌日、思いがけないことが起きた。マガモ♂が2羽になっていたのであった。1羽はマガオ君だが、もう一羽はまだ羽衣に変化が起きておらず、マガオ君に比べるとやや体格の大きく感じられる個体である。

雲場池に現れたマガモ♂(中央)とマガオ君、カル子さん(2022.6.17 撮影)

雲場池に現れたマガモ♂(後方)とマガオ君(2022.6.17 撮影)

 突然やってきて、マガオ君とカル子さんの間に割って入るようにして泳いでいたマガモ♂であったが、その後姿を消して2度と現れることはなかった。この♂もまた、北に帰ることなく近くの池で夏を過ごそうとしているのだろうか。

 マガオ君の体色変化は進み、7月に入ると頭部の緑色の構造色は完全に消えていった。

頭部の緑色の構造色がほとんど消えたマガオ君とカル子さん(2022.6.27 撮影)

 体色もどんどん変化して、このころにはマガオ君の姿はすっかり♀のように変わっていった。相変わらずマガオ君のそばにはカル子さんの姿が見られたが、嘴の色が黄色い点を除けば、2羽はよく似た体色になっている。

嘴の色を除けば、よく似た体色になったマガオ君とカル子さん(2022.6.30 撮影)

雲場池の浅い部分で休息するマガオ君(2022.7.2 撮影)

雲場池の浅い部分で休息するカル子さん(左)とマガオ君(2022.7.2 撮影)

カル子さん(右)とマガオ君(2022.7.8 撮影)

エクリプスに変身したマガオ君(2022.7.9 撮影)

 さて、夏は水鳥たちの繁殖の季節。マガオ君の仲間のマガモ達は、この季節北の地で繁殖していると思われるが、通年雲場池に生息するカルガモの中には、今年も雛を育てているカルガモ♀の姿が見られた。昨年巣立ったのは3羽だったが、今年は7羽のひなが生まれていて賑やかである。


カルガモの母親と7羽のヒナ親子(2022.7.11 撮影)

 このカルガモの母親はもしかしたらカル子さん・・・、だとしたらマガオ君と一緒にいたカルガモはやはり♀で、異種間の雑種誕生か・・・という期待をしたが、どうもそうではないようであった。

 7羽の雛を連れて池を泳ぐカルガモの母親とは別に、マガオ君とカル子さんの姿が認められたし、雛たちの姿にも特に雑種を思わせる変化も見られなかった。

カル子さん(左)とマガオ君(2022.7.13 撮影)

カル子さん(右)とマガオ君(2022.7.17 撮影)

カル子さん(右)とマガオ君(2022.7.20 撮影)

カル子さん(右)とマガオ君(2022.8.1 撮影)

カル子さん(右)とマガオ君(2022.8.5 撮影)

カル子さん(右)とマガオ君(2022.8.14 撮影)

この頃、マガオ君の頭部に僅かながら変化が現れた。

エクリプス状態のマガオ君の頭部に僅かに変化が現れる(2022.8.15 撮影)

頭頂部に緑色の構造色がわずかに現れてきたマガオ君(2022.8.21 撮影)

頭頂部に緑色の構造色が現れてきたマガオ君(2022.8.24 撮影)

カル子さん(左)とマガオ君(2022.8.27 撮影)

冬羽にもどり始めたマガオ君(2022.8.29 撮影)

冬羽にもどり始めたマガオ君(2022.8.31 撮影)

 ある日、雲場池には珍しくオシドリの姿が見られた。昨年春に♂を、1か月ほど前には♀の姿を見かけ撮影していたが、この日雲場池に現れた3羽は嘴の色が赤みを帯びていることから幼鳥♂かあるいは、エクリプスかと思えた。

 
オシドリの幼鳥♂あるいはエクリプス(2022.8.29 撮影)

 また、このころ池ではカイツブリの子育てが見られるようになった。カルガモの場合は、母親だけが雛を連れ泳いでいる姿が見られたのであったが、カイツブリは両親が一緒に雛たちの世話をしている。特に♂は水中にもぐり、小魚を捕えては雛に与えている。


カイツブリの親子(2022.9.1 撮影)

カイツブリの雛とマガオ君(2022.9.4 撮影)

冬羽にもどり始めたマガオ君(2022.9.5 撮影)

冬羽にもどり始めたマガオ君とカル子さん(2022.9.10 撮影)

冬羽にもどり始めたマガオ君(2022.9.10 撮影)

 この日、池にはコガモが数羽戻ってきていて、カルガモに混じって泳ぐ姿が見られるようになった。一様に♀の姿をしているので、私には区別がつかないのだが、中にエクリプス♂が混じっているのだろうか。


雲場池にコガモが戻ってきた(2022.9.10 撮影)


雲場池にコガモが戻ってきた(2022.9.12 撮影)

 マガオ君の羽衣もどんどん変化して、ほとんど冬羽に近い状態になっていった。池にはコガモに加えてキンクロハジロの雌雄も渡ってきた。

 
ほとんど冬羽に近い状態に戻ったマガオ君(2022.9.12 撮影)


キンクロハジロのペア(2022.9.12 撮影)

 マガオ君が美しい冬羽にもどってからしばらくして、また2羽のオシドリの姿を見る機会があった。以前見かけた個体のようだが、この時の羽の様子から、やはりエクリプスであったのだと思えた。こちらはまだ換羽中で、美しい姿になる日も近いと思える。

換羽中のオシドリのエクリプスA(2022.9.21 撮影)


換羽中のオシドリのエクリプスB(2022.9.21 撮影)

 コガモやキンクロハジロの姿がポツポツと見られるようになり、昨年の例ではもうすぐ北からマガオ君の仲間や多くの水鳥が渡ってくる。そうなると、マガオ君はやがて他の多くのマガモ♂に紛れて私には区別がつかなくなってしまう。
 
 カル子さんも、同様で、マガオ君と一緒にいることで、それとわかっていたのだが、マガモの♂が多くなると区別がつかなくなってしまうのではと思う。

 おそらくマガオ君とカル子さんにとってはそんなことはないのだろうと思うが、これから2羽の恋の行方はどうなってしまうのだろうかなどと、余計なことに気をもんでしまうのである。



 
 




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雲場池の水鳥(20)恋に落ちたマガオ君ー1/2

2022-09-16 00:00:00 | 野鳥
 昨年、北に帰ることなく雲場池にとどまり、夏を過ごした一羽のマガモ♂がいたことを紹介した(2021.10.1、10.15、10.29 公開の当ブログ)。このマガモの羽衣は春から夏へと次第に変化して♀に似た姿になっていったが、これはエクリプスと呼ばれている水鳥の示す形態変化である。

 秋になり、再び北から仲間が帰ってくると、その中にはやはりエクリプスが混じっていて、これらと一緒になると雲場池にとどまっていたマガモ♂の姿も、次第に他の鳥と区別がつかなくなっていった。エクリプスはやがて冬羽に変化していき、美しい構造色の頭部や♂特有の羽衣へと戻っていった。

 今年はどうだろうかと様子を見ていたところ、やはり一羽のマガモ♂が雲場池にとどまった。ただ、昨年と同一個体かどうかは判らない。

 この残ったマガモ♂、昨年は多くのカルガモの群れに加わることが多く、自分自身をマガモではなくカルガモと思っているのではないかと感じたこともあったが、今年のマガモ♂の傍らには、しばらくして特定の一羽のカルガモが寄り添う姿が目に付くようになった。

 カルガモの雌雄は区別がつきにくく、正確なことは判らないが、マガモ♂と常に行動を共にしているところから、このカルガモは♀ではないかと思える。

 昨年の記録写真を見直してみると、やはり傍には1羽のカルガモの姿が写っているこもあるが、この時はそれほど気にならなかった。

 そこで、今年はこの二羽に名前を付けて、マガオ君とカル子さんと呼ぶことにし、我が家で時々この2羽の様子について話し合うようになった。

 1998年制作のロマンティック・コメディ映画に「恋におちたシェイクスピア」(Shakespeare in Love)という作品がある。アメリカとイギリスの共同製作で、監督はジョン・マッデン、脚本はトム・ストッパード、主演はグウィネス・パルトローとジョセフ・ファインズ。第71回アカデミー作品賞ならびに第56回ゴールデングローブ賞 コメディ・ミュージカル部門作品賞を受賞している。

 内容は、名作「ロミオとジュリエット」の初演時の出来事を扱ったもので、若き日のウィリアム・シェイクスピアと彼を慕う上流階級の娘ヴァイオラとの恋愛を描いたものである。

 ウィリアム・シェイクスピアは「ロミオとジュリエット」の上演の準備を行っていた。一方、芝居好きの資産家の娘ヴァイオラは、貴族との縁戚を望む両親のため、貧乏貴族のウェセックス卿との意に染まぬ結婚を控えていた。ウェセックス卿は結婚後、夫婦でアメリカの農園に移り住む計画を立てていた。

 日本の歌舞伎と似ているが、当時の演劇では、女性は舞台に立つことができず、女装した変声期前の男性俳優が女性を演じていた。ヴァイオラは男装してトマス・ケントと名乗り、劇団に潜り込んで、抜群の演技力でロミオの役を得る。

 ヴァイオラが男装した女性であることはシェイクスピアの知るところとなるが、シェイクスピアはこれを黙認する。

 既婚者のシェイクスピアは、以前から女性の姿のヴァイオラに恋しており、2人は決して結婚できぬ間柄と知りつつ、忍んで逢う仲となる。

 芝居の準備は順調に進んでいたが、トマス・ケントが女性であることが、一座の面々や、王室の祝典局長の知るところとなってしまう。それ以来ヴァイオラは姿を消し、シェイクスピアがロミオ役を務めることになった。

 しかし本番当日、ジュリエット役の俳優が上演の直前に変声期を起こす。幕が開けられないと呆然とする一座の前に、結婚式を終えた直後のヴァイオラが駆けつける。かくして相手役のジュリエットの台詞が完璧に頭に入っているヴァイオラが、「女装した男性の俳優」としてジュリエットを演じることになった。恋する2人は迫真の演技で演じ、芝居は大成功する。

 その後、ヴァイオラはウェセックス卿の妻となる運命を受け入れて、アメリカに行くこととなる。ヴァイオラを失ったが、「ロミオとジュリエット」の大成功で劇作家としての名声を確立したシェイクスピアは、エリザベス女王の命令で新たな芝居の制作を始める。難破した船から一人生き残ったヴァイオラが、アメリカ大陸に上陸するシーンで映画は幕を閉じる・・・という内容である。

 この映画では、最終的にロミオをシェイクスピアが、ジュリエットをヴァイオラが演じたので、女性が「女装した男性の俳優」を演じるということになり、話はややこしいが、雲場池の女装したエクリプス・マガオ君が同じように♂かもしれないカル子さんと仲良くしている姿を見て、この映画のことを思い出したのであった。

 ただ、そのように思ったのはずっと後になってからで、マガオ君は4、5月の時点では完全に♂の外観をしているので、この時点ではシェイクスピアの話とは異なっている。

 さて、今年のマガオ君の様子を冬から順にみていこうと思う。冬の間、数十羽が群れて過ごしていた雲場池のマガモが北に帰り始めるのは3月下旬ころである。この時はまだコガモ、オカヨシガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、キンクロハジロ、オオバンなどの姿も同時に見ることができる。


雲場池で群れるマガモ♂(2022.2.2 撮影)


雲場池で群れるマガモ♂と♀(2022.3.17 撮影)


ヒドリガモ(左)、オオバン(右奥)とマガモ♂(2022.3.27 撮影)

 この時期のマガモ♂の頭部の構造色はとても美しいのだが、時には朝日を受けて背中の羽も構造色に輝いて見えることがある。


マガモ♂の背中の羽も構造色に輝いて見える(2022.3.1 撮影)

 また交尾行動と思える様子もこの頃に見られた。しかし、この時点ではまだ複数のマガモ♂がいたので、この♂が後のマガオ君かどうかは特定できない。


寄り添うマガモのペア(2022.4.1 撮影)


マガモの交尾と思える行動(2022.4.1 撮影)

 4月に入るとマガモの姿は急速に減っていき、やがて雲場池に残ったのは1羽の♂だけになっていった。このマガモ♂にマガオ君という名前をつけたのはこの頃であった。

雲場池に1羽残ったマガモ♂、マガオ君(2022.4.7 撮影)

雲場池に1羽残ったマガモ♂、マガオ君(2022.4.12 撮影)

 ところがある日、このマガオ君のもとに1羽のマガモ♀が現れた。あたかもマガオ君に北帰行を促しにやってきたようであった。

マガモ♂に北帰行を促すかのように現れたマガモ♀(2022.4.21 撮影)

 しかし、マガオ君はそのまま雲場池にとどまり、マガモ♀も姿を消した。そしてしばらくすると、マガオ君のそばに寄り添うカルガモの姿を見るようになった。カル子さんである。

マガオ君とカル子さん(2022.4.27 撮影)

 この後、雲場池ではマガオ君とカル子さんが一緒にいる姿を頻繫に見かけるようになった。マガオ君が北帰行を諦めたのはカル子さんが原因であったのか、それとも何らかの理由で今年、北帰行できなかったマガオ君がたまたまカル子さんと仲良くなっていったのか、その辺りは判らないが、我が家ではもっぱら前者であろうと判断し、「恋におちたマガオ君」と言うことにして、2羽のカモを継続観察することにしたのである。

 ややあって、再び雲場池に1羽のマガモ♀が姿を見せた。マガオ君を誘いにやってきたのかもしれなかったが、マガオ君はこれに応じる様子はなかった。

再び雲場池に姿を見せたマガモ♀(2022.5.8 撮影)

マガオ君とカル子さん(2022.5.9 撮影)

マガオ君とカル子さん(2022.5.14 撮影)

マガオ君とカル子さんほか(2022.5.15 撮影)

マガオ君とカル子さん(2022.5.20 撮影)

マガオ君とカル子さん(2022.5.25 撮影)

マガオ君とカル子さんたち(2022.6.1 撮影)

 カル子さんたちと過ごすマガオ君の外見には5月中は変化は認められなかった。まず頭部に変化が現れたのは6月になってからであった。 
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