庭のブッドレアの花にやってくる蝶や蛾などの中でも一風変わっているのがホウジャクであった。
ホウジャクは「蜂雀」と書き、蜂のように飛ぶ「雀蛾(スズメガ)」の意味。
その名が示すように、ホウジャクは蜂のようにホバリングをして、花から少し離れたところにとどまり、そこから長い口吻を伸ばして蜜を吸うのだが、その様子はハチドリにも似ている。
ハチドリといえば、もうずいぶん前のこと国際会議参加のため5月に米国のサン・ノゼに出張した時、滞在したホテルの広い庭の花に次々と吸蜜に来ていたのを見て感動したのを思い出す。日本では見かけることのない光景だ。
ところで、時々庭にやってくるこのホウジャクのホバリングの様子を写真撮影してみようと思い立ち、ニコンD200と105mmF2.8マクロレンズを持ち出してストロボを使わず、高速シャッターでどの程度撮れるものか挑戦してみた。
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1/1000秒、F3で撮影したホウジャクのホバリング 1/5(2016.10.9 撮影)
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1/1000秒、F3で撮影したホウジャクのホバリング 2/5(2016.10.9 撮影)
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1/1000秒、F3で撮影したホウジャクのホバリング 3/5(2016.10.9 撮影)
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1/1000秒、F3で撮影したホウジャクのホバリング 4/5(2016.10.9 撮影)
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1/1000秒、F3で撮影したホウジャクのホバリング 5/5(2016.10.9 撮影)
毎秒70回から90回羽ばたいているという翅の動きが1/1000秒のシャッタースピードで撮ると、翅の位置にもよるが、速度が遅くなる折り返し位置にある時にはある程度止まって写っている。一方スピードの速くなっている途中ではぶれてしまった。羽ばたきの回数からは当然の結果となった。
更に条件をを変えて、1/2000秒でも撮影してみた。
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1/2000秒、F3で撮影したホウジャクのホバリング 1/5(2016.10.9 撮影)
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1/2000秒、F3で撮影したホウジャクのホバリング 2/5(2016.10.9 撮影)
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1/2000秒、F3で撮影したホウジャクのホバリング 3/5(2016.10.9 撮影)
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1/2000秒、F3で撮影したホウジャクのホバリング 4/5(2016.10.9 撮影)
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1/2000秒、F3で撮影したホウジャクのホバリング 5/5(2016.10.9 撮影)
今回はISOの最高感度での撮影を試みたのだが、これらの写真を見る限り、ホウジャクのホバリングの翅の動きを完全に止めるためには、1/2000秒よりも更に数倍早いシャッター速度で撮影をする必要があることが判った。
しかし、我がニコンD200と105mmF2.8マクロレンズではこの辺りが限界のようである。
友人のSさんは飛翔中の蝶の撮影を行い、すばらしい写真を多数撮影しているのだが、ぴたりと静止した写真を撮るためには1/1000秒以上の早いシャッタースピードが必要だと話していた。
ホウジャクの場合、蝶とは比較にならないくらいのスピードで翅を動かしているため、この条件では歯が立たなかったようだ。
ホウジャクの仲間には、ホウジャク、ホシホウジャク、クロホウジャクなどがいて、よく似ている。
この内、ホシホウジャクとクロホウジャクは体や翅の色がとてもよく似ていて、ホバリングをしているときには素人には肉眼ではとても区別がつかない。
同定は前翅先端部の紋様と、後翅の黄色の帯の太さで判断できるとの情報を参考にして、前後翅がはっきり写っている写真で判断したのだが、今回庭のブッドレアに来ていたのはホシホウジャクのようである。
ホウジャクの仲間には翅が透明で、体の色が黄緑色のオオスカシバがいる。小学生のころ、このオオスカシバを見て衝撃を受けた記憶がある。
オオスカシバの翅も、羽化直後には鱗粉で覆われていて不透明だという。羽化して羽ばたくことでこの鱗粉は容易に取れてしまい、我々が見る透明な状態になるのだそうだ。
オオスカシバの幼虫はクチナシの葉を食べる。我が家の庭にクチナシを植えているのは、このオオスカシバを呼ぶためだ。