先日、妻の知人のお誘いで小諸の、ある施設を訪問したが、ここで珍しいものを見ることができた。
この知人が、近くのグラウンドにフェアリーリングができているからぜひ見てくるといいと教えてくれたのだ。
そのグラウンドに行ってみると、中央から外れたところに点々とキノコが出ていて、このキノコが直径8mほどの円周上にならんでいるのが見えた。
また、キノコが生えている円周部分の芝生も周りに比べるとやや濃い緑色になっているように思えた。
グラウンドの芝生の中に現れたフェアリーリング(2016.10.15 撮影)
これが、フェアリーリングであった。
ちょうど、ここに研修に来ていた県内の大学生たちもぞろぞろと集まってきて、しばらくこの珍しい現象を眺めていた。
学生たちと比べるとこのフェアリーリングの大きさを実感していただけると思う。
研修に来ていた大学生が集まってきた(2016.10.15 撮影)
円周上のキノコはカサの大きさが10cmはある大きなもので、すでに枯れ始めていたのだが、元気なときに見ることができればもっと見事な眺めであったろうと、やや残念な気がした。
フェアリーリングを構成しているキノコは枯れはじめていた(2016.10.15撮影)
フェアリーリングを構成しているキノコは10cmくらいの大きさがある(2016.10.15 撮影)
リングの中心部分に行ってみると、ここには大きなキノコはなくて、カサの大きさが1cm程度のずっと小さいキノコが生えていた。
リングの中心部に生えていた小さいキノコ(2016.10.15 撮影)
マツタケなども、1本見つけると円形に生えているので、周囲をよく見るとさらに見つけることができると言われていたように記憶しているが、これは多くのキノコの性質なのだろうかと思って、少し調べてみた。
フェアリーリングは菌輪とか菌環と呼ばれ、こうした状態を形成する菌糸はコムラサキシメジ、シバフタケ、ホコリタケなどの50種類ほどが知られていて、主に春と秋に発生が多くなるという。
Wikipediaによるとフェアリーリング(菌輪)が形成される仕組みについては二つの説があるとされている。
一つは、胞子が芝生などに着生・発芽した地点から菌糸が放射状に伸び、古くなった中心部分から順に死滅していくことで周縁部分が環状に残る、というもの。
そして気温や地温・水分・光などの条件が整うと、地中の菌糸から子実体(キノコ)が形成され、われわれに認識されるようになるという。
二つ目の説は、日本におけるマツタケの生態調査の成果をもとに提唱されたもので、フェアリーリング(菌輪)はキノコの楕円形のコロニーが繋がってできたとするものである。
このコロニーの連なりが弧や円を形成すると、コロニーは同心円状に拡大してゆく(「菌輪」Wikipedia, 2014年6月22日 (日) 08:49 UTC )。
今回、私達が見たものは前者であるようだ。
原点である中心から外へ外へと広がり続けるというのも不思議な気がするが、こうして大きくなったものは今回のように直径10mほどに達するものも珍しいことではなく、中には直径600mというものもあるとされているし、寿命もフランスには700年という記録があるというから驚く。
名前のフェアリー(妖精)の由来はヨーロッパ起源というが、Wikipediaにはさまざまな民話や神話に基づく物語が紹介されていて、これはこれでとても面白いものである(前出)。
現実問題としてはこのフェアリーリングは芝生をリング状に枯らしたり、また逆に芝生をリング状に異常生育させたりするということで、ゴルフ場の敵であるらしい。
フェアリーリング対策用の薬も種々販売されている。
キノコがリング状に発生するということとは別に、こうした芝生を枯らしたり、逆に生育を促進させたりする現象がなぜ起きるのかについては、1675年にフェアリーリングに関する最初の科学的論文が発表され、その論文が1884年のNature誌に紹介されて以来、長い間謎のままだったようだ。
この謎解きに最近日本の研究者が挑戦し、その鍵をにぎる物質を突き止め、発表しているので以下に引用して紹介する(https://www.jsps.go.jp/seika/2015/vol1_010.html 参照)。
従来は、キノコの菌糸が土中のタンパク質を分解し、窒素分を硝酸など植物に吸収されやすい形、すなわち窒素肥料に変えるため、周囲の植物の成長が促されると考えられていた。
しかし2010年、静岡大の河岸洋和 教授らはこの定説をひっくり返す発見をしている。
フェアリーリングを生じるコムラサキシメジという菌を培養して、その培養液から芝の生長を促進する物質「2-アザヒポキサンチン(2-azahypoxanthine、AHX)」を発見し、さらに、芝の生長を抑制する「イミダゾール-4-カルボキシアミド(imidazole-4-carboxyamide、ICA)」も見つけたという。
また、AHXは植物に取り込まれると、2-アザ-8-オキソヒポキサンチン(2-aza8-oxohypoxanthine、AOH)になることが判明し、これら3つの化合物を、Nature(505巻、298頁、2014年)がこの研究を紹介した記事の見出し“fairy chemicals”から「フェアリー化合物」と命名している。
このフェアリー化合物は、あらゆる植物の生長を制御したことから、河岸教授は「植物自身もフェアリー化合物を作っているのではないか?」と考え実験を行い、予想通りの結果を得ている。
例えば、三大穀物である米、小麦、トウモロコシの可食部にもフェアリー化合物が存在していた。つまり、私たちは毎日フェアリー化合物を食べていることになるという。
さらに、フェアリー化合物は、米、小麦などの穀物や野菜類の収量を大幅に増加させることがわかり、しかも、低温、高温、塩、乾燥などの栽培の悪条件下でさらにその効果を発揮することから、フェアリー化合物の実用化に向けた研究を静岡大学の農場で行っているというからなかなか興味深いものである。
この知人が、近くのグラウンドにフェアリーリングができているからぜひ見てくるといいと教えてくれたのだ。
そのグラウンドに行ってみると、中央から外れたところに点々とキノコが出ていて、このキノコが直径8mほどの円周上にならんでいるのが見えた。
また、キノコが生えている円周部分の芝生も周りに比べるとやや濃い緑色になっているように思えた。
グラウンドの芝生の中に現れたフェアリーリング(2016.10.15 撮影)
これが、フェアリーリングであった。
ちょうど、ここに研修に来ていた県内の大学生たちもぞろぞろと集まってきて、しばらくこの珍しい現象を眺めていた。
学生たちと比べるとこのフェアリーリングの大きさを実感していただけると思う。
研修に来ていた大学生が集まってきた(2016.10.15 撮影)
円周上のキノコはカサの大きさが10cmはある大きなもので、すでに枯れ始めていたのだが、元気なときに見ることができればもっと見事な眺めであったろうと、やや残念な気がした。
フェアリーリングを構成しているキノコは枯れはじめていた(2016.10.15撮影)
フェアリーリングを構成しているキノコは10cmくらいの大きさがある(2016.10.15 撮影)
リングの中心部分に行ってみると、ここには大きなキノコはなくて、カサの大きさが1cm程度のずっと小さいキノコが生えていた。
リングの中心部に生えていた小さいキノコ(2016.10.15 撮影)
マツタケなども、1本見つけると円形に生えているので、周囲をよく見るとさらに見つけることができると言われていたように記憶しているが、これは多くのキノコの性質なのだろうかと思って、少し調べてみた。
フェアリーリングは菌輪とか菌環と呼ばれ、こうした状態を形成する菌糸はコムラサキシメジ、シバフタケ、ホコリタケなどの50種類ほどが知られていて、主に春と秋に発生が多くなるという。
Wikipediaによるとフェアリーリング(菌輪)が形成される仕組みについては二つの説があるとされている。
一つは、胞子が芝生などに着生・発芽した地点から菌糸が放射状に伸び、古くなった中心部分から順に死滅していくことで周縁部分が環状に残る、というもの。
そして気温や地温・水分・光などの条件が整うと、地中の菌糸から子実体(キノコ)が形成され、われわれに認識されるようになるという。
二つ目の説は、日本におけるマツタケの生態調査の成果をもとに提唱されたもので、フェアリーリング(菌輪)はキノコの楕円形のコロニーが繋がってできたとするものである。
このコロニーの連なりが弧や円を形成すると、コロニーは同心円状に拡大してゆく(「菌輪」Wikipedia, 2014年6月22日 (日) 08:49 UTC )。
今回、私達が見たものは前者であるようだ。
原点である中心から外へ外へと広がり続けるというのも不思議な気がするが、こうして大きくなったものは今回のように直径10mほどに達するものも珍しいことではなく、中には直径600mというものもあるとされているし、寿命もフランスには700年という記録があるというから驚く。
名前のフェアリー(妖精)の由来はヨーロッパ起源というが、Wikipediaにはさまざまな民話や神話に基づく物語が紹介されていて、これはこれでとても面白いものである(前出)。
現実問題としてはこのフェアリーリングは芝生をリング状に枯らしたり、また逆に芝生をリング状に異常生育させたりするということで、ゴルフ場の敵であるらしい。
フェアリーリング対策用の薬も種々販売されている。
キノコがリング状に発生するということとは別に、こうした芝生を枯らしたり、逆に生育を促進させたりする現象がなぜ起きるのかについては、1675年にフェアリーリングに関する最初の科学的論文が発表され、その論文が1884年のNature誌に紹介されて以来、長い間謎のままだったようだ。
この謎解きに最近日本の研究者が挑戦し、その鍵をにぎる物質を突き止め、発表しているので以下に引用して紹介する(https://www.jsps.go.jp/seika/2015/vol1_010.html 参照)。
従来は、キノコの菌糸が土中のタンパク質を分解し、窒素分を硝酸など植物に吸収されやすい形、すなわち窒素肥料に変えるため、周囲の植物の成長が促されると考えられていた。
しかし2010年、静岡大の河岸洋和 教授らはこの定説をひっくり返す発見をしている。
フェアリーリングを生じるコムラサキシメジという菌を培養して、その培養液から芝の生長を促進する物質「2-アザヒポキサンチン(2-azahypoxanthine、AHX)」を発見し、さらに、芝の生長を抑制する「イミダゾール-4-カルボキシアミド(imidazole-4-carboxyamide、ICA)」も見つけたという。
また、AHXは植物に取り込まれると、2-アザ-8-オキソヒポキサンチン(2-aza8-oxohypoxanthine、AOH)になることが判明し、これら3つの化合物を、Nature(505巻、298頁、2014年)がこの研究を紹介した記事の見出し“fairy chemicals”から「フェアリー化合物」と命名している。
このフェアリー化合物は、あらゆる植物の生長を制御したことから、河岸教授は「植物自身もフェアリー化合物を作っているのではないか?」と考え実験を行い、予想通りの結果を得ている。
例えば、三大穀物である米、小麦、トウモロコシの可食部にもフェアリー化合物が存在していた。つまり、私たちは毎日フェアリー化合物を食べていることになるという。
さらに、フェアリー化合物は、米、小麦などの穀物や野菜類の収量を大幅に増加させることがわかり、しかも、低温、高温、塩、乾燥などの栽培の悪条件下でさらにその効果を発揮することから、フェアリー化合物の実用化に向けた研究を静岡大学の農場で行っているというからなかなか興味深いものである。