囲碁・将棋界から初の国民栄誉賞が今年1月5日(囲碁の日)に決まり、2月13日に井山裕太十段と、羽生善治棋聖の授与式が行われた。また、このところ囲碁の世界では、コンピュータと人との対決の話題があったり、将棋の世界では中学生の5段の棋士が誕生するなど、比較的地味なこの分野がなかなかにぎやかである。
人の能力の限界というものについて考えさせられてしまうのであるが、私自身はというと囲碁・将棋は子供の頃に少しやった程度で、それ以後ほとんど実戦の記憶がない。大学時代に片道1時間45分の通学をしていた頃に、電車内での読み物に詰め将棋の本を買って読んだことがあるが、それどまりであった。
子供の頃の相手は小学校の同級生や父であった。父は同居していた母方の祖父と碁をやっていた記憶があり、そこそこ楽しんでいたようであった。私に将棋を教えてくれたのも父であった。負けることが嫌いだったが、かといって強くなるための勉強もしなかったので、私の方はしだいに碁や将棋からは遠ざかってしまった。
高校時代には相当将棋が強いという噂の同級生のI君がいたし、大学や職場でも周りでは結構囲碁・将棋を楽しんでいる仲間もいたのだが、ただただ尊敬のまなざしで見るだけであった。
ところが、一昨年に毎月実家の母のところに来るようになってからすぐに母が「五目並べ」をしようと言い出したので、付き合っている。父が亡くなってからは相手をしてくれる者がいなくなっていたようである。一応ルールは知っているつもりであったので、毎日夕食後の1時間ほどを、この五目並べの時間に割いてきた。風呂のスイッチを入れてから始め、18番勝負を終える頃には風呂も沸いてくるので、ちょうどいいタイミングというわけである。
18番勝負というのは、勝負がつくとどちらか勝ったほうが、碁盤の1辺の端から自身の色の碁石を1つづつ置いていくと、18個並んだところで、「今日はここまで!」という具合に終わることができるのである。
五目並べに勝つと、碁盤の一辺の端に自分の色の石を一個置いて勝敗の数を示す
ルールを知っていると書いたが、我が家流のローカルルールで、次のようなものである。
先ず、はじめに黒・白2個づつを碁盤の中央に互い違いに置く。そして、その後は好きなところに石を置いていくのである。禁手は黒・白共に三三、石を三個あるいは四個並べたところで、「さん」・「し」と相手に伝える、六個以上並べることは構わないが勝ちにはならない、また前の勝負で負けた方が次は先手になるといったところである。石は母が黒を、私が白を勝敗に関係なく使い続けることになっている。
我が家流の「五目並べの」スタート法、黒・白2個づつをこのように配置して始める
禁手の「三三」、この図ではAの位置に石を置くことはできない
ここでお気づきのことと思うが、我が家(母)のルールでは、碁石は碁盤の線の交点ではなく、マス目の中に置く。初めのうち何度か指摘して、交点に置くように言ったが、いっこうに聞く様子がないので、根負けして今はこのようにマス目の中に置くようになった。ただ、最初に石を黒白2個ずつ、四個置いてからスタートする我が家のローカルルールの場合には、この方が対称性の点ではより美的ではあるとしばらくして気がついた。
「さん」・「し」と三個あるいは四個並んだ時にはそのことを相手に伝えるのがルールと書いたが、これは私の子供の頃の記憶であって、今の母は自身が三個並べようが、四個になろうが無言である。従って、私も同じようにするようになったが、そうしていると三個並べても気がついてくれないことが時々あるので、結局私の方からは、そんな時には「さんだよ!」と言うことになる。
この五目並べを始めたころ、最短で勝負が着いたことがあったが、それは次のような手順であった。
最短で勝負が着いた手順
自分の手だけを考えていると、こうした落とし穴があることに早々に気がついたのだが、馬鹿にはできない、その後も何回か同じ手で勝負が着いたことがある。
ところで、我が家流のローカルルールと書いたが、正式な「五目並べ」のルールについてはこれまできちんと調べたことがなかったことに今回思いが至り、早速調べてみたところ、ずいぶん違っていることが判った。
正式なルールは次のようなものであった。
先ず碁盤中央の目(天元)に黒石を1個置いて始める。次に、白は黒に接する位置AまたはBに置き、その後は自由に黒、白と置いていく。
五目並べ正式ルールのスタートから3手目まで
禁手は、我が家の「三三」のほか「四四」と六個以上並ぶ「長連」がある。また、この禁手は先手の黒だけに適用され、白には禁手はない。先手は専ら「四三」を目指すことになる。次の図で、黒がA、B、Cに置くと禁手になり負ける。
五目並べ正式ルールの3種の禁手
この禁手のうち、長連に関しては例外があり、次のように黒がAに置いて5連になると同時に長連になる時には、5連の方が優先されて、黒の勝ちになる。
長連が禁手にならない場合
リーチ(麻雀のようだが、こう呼ぶらしい)は次の4通りがある。リーチとは、相手が正しく対応しないと勝負が着いてしまう状態であるが、正式ルールではこのリーチの状態になっても「さん」、「し」と相手に告げなくてもいいようである。気がつかないのが悪いということになる。もっとも、伝えようにも、こちらが気付かないうちに三個並んでいたということも起きるので仕方ないことかもしれない。
4通りのリーチの石の並び
「五目並べは先手必勝」という言葉を聞いたことがあるので、それについてもこの際調べてみたところ、確かに禁手の有無にかかわらず、先手必勝のようである。これでは、まともな試合にはならないということで、もう少し細かなルールを定めた「連珠」というものが考案されている。
この連珠では、碁盤の大きさも小さく変更され、通常の碁盤の19x19の目数に対して、15x15と定められている。禁手については通常の五目並べと同様のようであるが、3手目までの打ちかたには制限が設けられ、以下に示すような26通りの内のいずれかで進めることがルール化さている。(注:破線内の他の位置にも打つことはできるが、対称性から等価なので図では略している)
そして、ご丁寧にこの26通りの石の配置にはそれぞれ名前までつけられている。
連珠で、白の2手目が直接黒に接する場合に、次に黒が打てる13通りの位置
イ:寒星、ロ:渓月、ハ:疎星、ニ:花月、ホ:残月、ヘ:雨月、ト:金星、チ:松月、リ:丘月、
ヌ:新月、ル:瑞星、オ:山月、ワ:遊月
連珠で、白の2手目が間接的に黒に接する場合に、次に黒が打てる13通りの位置
カ:長星、ヨ:峡月、ラ:恒星、レ:水月、ソ:流星、ツ:雲月、ネ:浦月、ナ:嵐月、ラ:銀月、
ム:明星、ウ:斜月、ノ:名月、ク:彗星
である。
この場合でも、二の花月(カゲツ)とネの浦月(ホゲツ)には必勝法が見出されているとされていて、このほかにも形によっては後手有利、あるいは互角ということも判っている。このため試合では更なるルールが付け加えられ、先手・後手の差をなくす工夫が行われているそうである。
しかし、当然ながら我が家の場合そんな心配は全く無用で、今日もローカルルールでのどかに五目並べをしている。ちなみに、縁に並んだ18個の石のうち、だいたい2個から5個は黒が占めている。
人の能力の限界というものについて考えさせられてしまうのであるが、私自身はというと囲碁・将棋は子供の頃に少しやった程度で、それ以後ほとんど実戦の記憶がない。大学時代に片道1時間45分の通学をしていた頃に、電車内での読み物に詰め将棋の本を買って読んだことがあるが、それどまりであった。
子供の頃の相手は小学校の同級生や父であった。父は同居していた母方の祖父と碁をやっていた記憶があり、そこそこ楽しんでいたようであった。私に将棋を教えてくれたのも父であった。負けることが嫌いだったが、かといって強くなるための勉強もしなかったので、私の方はしだいに碁や将棋からは遠ざかってしまった。
高校時代には相当将棋が強いという噂の同級生のI君がいたし、大学や職場でも周りでは結構囲碁・将棋を楽しんでいる仲間もいたのだが、ただただ尊敬のまなざしで見るだけであった。
ところが、一昨年に毎月実家の母のところに来るようになってからすぐに母が「五目並べ」をしようと言い出したので、付き合っている。父が亡くなってからは相手をしてくれる者がいなくなっていたようである。一応ルールは知っているつもりであったので、毎日夕食後の1時間ほどを、この五目並べの時間に割いてきた。風呂のスイッチを入れてから始め、18番勝負を終える頃には風呂も沸いてくるので、ちょうどいいタイミングというわけである。
18番勝負というのは、勝負がつくとどちらか勝ったほうが、碁盤の1辺の端から自身の色の碁石を1つづつ置いていくと、18個並んだところで、「今日はここまで!」という具合に終わることができるのである。
五目並べに勝つと、碁盤の一辺の端に自分の色の石を一個置いて勝敗の数を示す
ルールを知っていると書いたが、我が家流のローカルルールで、次のようなものである。
先ず、はじめに黒・白2個づつを碁盤の中央に互い違いに置く。そして、その後は好きなところに石を置いていくのである。禁手は黒・白共に三三、石を三個あるいは四個並べたところで、「さん」・「し」と相手に伝える、六個以上並べることは構わないが勝ちにはならない、また前の勝負で負けた方が次は先手になるといったところである。石は母が黒を、私が白を勝敗に関係なく使い続けることになっている。
我が家流の「五目並べの」スタート法、黒・白2個づつをこのように配置して始める
禁手の「三三」、この図ではAの位置に石を置くことはできない
ここでお気づきのことと思うが、我が家(母)のルールでは、碁石は碁盤の線の交点ではなく、マス目の中に置く。初めのうち何度か指摘して、交点に置くように言ったが、いっこうに聞く様子がないので、根負けして今はこのようにマス目の中に置くようになった。ただ、最初に石を黒白2個ずつ、四個置いてからスタートする我が家のローカルルールの場合には、この方が対称性の点ではより美的ではあるとしばらくして気がついた。
「さん」・「し」と三個あるいは四個並んだ時にはそのことを相手に伝えるのがルールと書いたが、これは私の子供の頃の記憶であって、今の母は自身が三個並べようが、四個になろうが無言である。従って、私も同じようにするようになったが、そうしていると三個並べても気がついてくれないことが時々あるので、結局私の方からは、そんな時には「さんだよ!」と言うことになる。
この五目並べを始めたころ、最短で勝負が着いたことがあったが、それは次のような手順であった。
最短で勝負が着いた手順
自分の手だけを考えていると、こうした落とし穴があることに早々に気がついたのだが、馬鹿にはできない、その後も何回か同じ手で勝負が着いたことがある。
ところで、我が家流のローカルルールと書いたが、正式な「五目並べ」のルールについてはこれまできちんと調べたことがなかったことに今回思いが至り、早速調べてみたところ、ずいぶん違っていることが判った。
正式なルールは次のようなものであった。
先ず碁盤中央の目(天元)に黒石を1個置いて始める。次に、白は黒に接する位置AまたはBに置き、その後は自由に黒、白と置いていく。
五目並べ正式ルールのスタートから3手目まで
禁手は、我が家の「三三」のほか「四四」と六個以上並ぶ「長連」がある。また、この禁手は先手の黒だけに適用され、白には禁手はない。先手は専ら「四三」を目指すことになる。次の図で、黒がA、B、Cに置くと禁手になり負ける。
五目並べ正式ルールの3種の禁手
この禁手のうち、長連に関しては例外があり、次のように黒がAに置いて5連になると同時に長連になる時には、5連の方が優先されて、黒の勝ちになる。
長連が禁手にならない場合
リーチ(麻雀のようだが、こう呼ぶらしい)は次の4通りがある。リーチとは、相手が正しく対応しないと勝負が着いてしまう状態であるが、正式ルールではこのリーチの状態になっても「さん」、「し」と相手に告げなくてもいいようである。気がつかないのが悪いということになる。もっとも、伝えようにも、こちらが気付かないうちに三個並んでいたということも起きるので仕方ないことかもしれない。
4通りのリーチの石の並び
「五目並べは先手必勝」という言葉を聞いたことがあるので、それについてもこの際調べてみたところ、確かに禁手の有無にかかわらず、先手必勝のようである。これでは、まともな試合にはならないということで、もう少し細かなルールを定めた「連珠」というものが考案されている。
この連珠では、碁盤の大きさも小さく変更され、通常の碁盤の19x19の目数に対して、15x15と定められている。禁手については通常の五目並べと同様のようであるが、3手目までの打ちかたには制限が設けられ、以下に示すような26通りの内のいずれかで進めることがルール化さている。(注:破線内の他の位置にも打つことはできるが、対称性から等価なので図では略している)
そして、ご丁寧にこの26通りの石の配置にはそれぞれ名前までつけられている。
連珠で、白の2手目が直接黒に接する場合に、次に黒が打てる13通りの位置
イ:寒星、ロ:渓月、ハ:疎星、ニ:花月、ホ:残月、ヘ:雨月、ト:金星、チ:松月、リ:丘月、
ヌ:新月、ル:瑞星、オ:山月、ワ:遊月
連珠で、白の2手目が間接的に黒に接する場合に、次に黒が打てる13通りの位置
カ:長星、ヨ:峡月、ラ:恒星、レ:水月、ソ:流星、ツ:雲月、ネ:浦月、ナ:嵐月、ラ:銀月、
ム:明星、ウ:斜月、ノ:名月、ク:彗星
である。
この場合でも、二の花月(カゲツ)とネの浦月(ホゲツ)には必勝法が見出されているとされていて、このほかにも形によっては後手有利、あるいは互角ということも判っている。このため試合では更なるルールが付け加えられ、先手・後手の差をなくす工夫が行われているそうである。
しかし、当然ながら我が家の場合そんな心配は全く無用で、今日もローカルルールでのどかに五目並べをしている。ちなみに、縁に並んだ18個の石のうち、だいたい2個から5個は黒が占めている。