軽井沢からの通信ときどき3D

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ガラスの話(9)香水瓶 ② Rene LALIQUE

2018-08-10 00:00:00 | ガラス
 先週に続き、資生堂アートハウスで開催された企画展「ヴィンテージ香水瓶と現代のタピスリー」で展示された、香水瓶を紹介させていただく。後半の今回は、ルネ・ラリック制作の香水瓶。

 ルネ・ラリックについてはパネルで次の説明が示されている。

《Rene Lalique / ルネ・ラリック》
 「ルネ・ラリック(Rene LALIQUE 1860-1945 )は、19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍した、フランスの芸術家です。
 ラリックのキャリアは、宝飾工芸家としてスタートしました。アール・ヌーヴォーの時代、ラリックは特権階級のために一点物の装身具を制作し、1897年にはレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエ工賞を受賞、1900年のパリ万国博覧会では宝飾部門のグランプリを受賞するなど高い評価を受け、アール・ヌーヴォーの申し子のような存在として、フランスの宝飾会に君臨していました。
 しかし、世紀が変わりアール・ヌーヴォーが衰退し始めたのと歩を合わせるように、ラリックは活動の場を宝飾品からガラス工芸へと移行させていきます。そのきっかけは、1908年から始まった香水商のフランソワ・コティとの協力関係でした。コティから依頼された香水瓶ラベルのデザインに対し、ラリックはガラス製のレリーフをバカラが制作したガラス瓶に溶着させる提案で応えます。この成功が大きな契機となり、ラリックはガラス工芸の道に専心することになります。
 ラリックは当初香水瓶においても、宝飾品と同様の職人的な技術を重視しますが、次第に工業的な技術と芸術性を結び付けた作品を制作していくことになります。当時発展しつつあった機械化を最大限に利用し、高級感のあるガラス製品を比較的安価に提供することによって、ガラス産業における企業家としても大成したのです。
 ラリックが制作した香水瓶は、香水の存在をより際立たせる詩的な叙情にみちており、1920年から30年代にかけては、ウビガンやドルセー、ロジェ・ガレなどの名門香水商がこぞって制作を依頼しました。
 ラリックが生前に制作した香水瓶の数は400種類にも及び、文字通り現代香水瓶の父として、今日に至るまでその歴史に不動の地位を築いています。」

 上記説明にあるように、ラリックが最初に手掛けたのは、香水瓶本体ではなく、他社(バカラ)の香水瓶に貼りつけるガラス製のレリーフであった。コティ社向けに制作したレリーフが貼られた香水瓶が、ラリックのコーナーの最初に展示されていた。ただ、これは年代としては初期のものではなく、後年の類似のものとの説明がされていた。


c1912年 コティ社「L'EFFLEURT(花摘み)」の香水瓶
 ラリックによる香水瓶の幕開けを飾る記念碑的作品です。1908年、著名な宝飾工芸家であったルネ・ラリックは、フランソワ・コティの依頼を受けて香水、「L'EFFLEURT(花摘み)」のラベルをデザインしました。このラベルは矩形のガラス板に香気の渦から立ち上る裸婦をレリーフで表現したもので、バカラによる古風なカラフォン型の瓶に取り付けられました。
 展示の香水瓶は「L'EFFLEURT(花摘み)」のセカンドバージョンです。ラベルや瓶の形は踏襲したものの、多面体のカットガラスだった栓はプレス加工による2匹の蝉が腹を合わせたデザインに変更されました。


1909年 ピヴェール社「SCARABEE(スカラベ)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


左から 1918年 アリス社「 EN FERMANT LES YEUX(瞳を閉じて)」
1914年 ドルセー社「POESIE D' ORSAY(ドルセーの詩情)」
1910年 コティ社「AMBRE ANTIQUE 「」(いにしえの琥珀)」
1911年 ドルセー社 「AMBRE(アンブル)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


1912年 メゾン・ラリック「TROIS GROUPES DE DEUX DANSEUSES(二人で踊る3グループ)」の香水瓶
(2018.6.16 撮影)


1912年 ロジェ・ガレ社「NARKISS(水仙)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


左:1920年 メゾン・ラリック「BOUCHON CASSIS(カシス)」
中:1913年 ロジェ・ガレ社「PAQUERETTES(ひな菊)」
右:1914年 ドルセー社「LEURS AMES(彼らの魂)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


1919年 ヴォルネイ社「CHYPRE AMBRE(琥珀色のキプロス)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


1920年 メゾン・ラリック「HIRONDELLES(燕)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


1924年 ウォルト社「dans la nuit(夜に)」の香水瓶とアトマイザー(2018.6.16 撮影)


1924年 フィオール社「CHOSE PROMISE(約束されたもの)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


1925年 ウビガン社「LA BELLE SAISON(美しい季節)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


1926年 ロジェ・ガレ社「LE JADE(翡翠)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


1926年 ウォルト社「VERS LE JOUR(光に向かって)」の香水瓶とアトマイザー(2018.6.16 撮影)


1928年 モリナール社「LE BAISER DU FAUNE(牧神のキス)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


1928年 カナリナ社「LES YEUX BLEUS(青い目)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


ウォルト社 6種 左から:
1931年 「JE REVIENS(再会の時)」
1933年 「VERS TOI(あなたのもとへ)」
c1935年 「PROJETS(計画)」
1929年 「SANS ADIEU(さよならは言わない)」
1929年 「SANS ADIEU(さよならは言わない)」
1929年 「SANS ADIEU(さよならは言わない)」(2018.6.16 撮影)

 ルネ・ラリックは、顧客である香水商向けの香水瓶だけではなく、自社製品として、空の香水瓶も制作し販売した。それがメゾン・ラリックの香水瓶である。パネルに、次のような説明があった。

《メゾン・ラリックの香水瓶について》
 「この展示場でご覧いただく香水瓶18点は、すべてLA MAISON LALIQUE(メゾン・ラリック)によるものです。
 Maison(メゾン)とはフランス語で家や建物を意味する言葉ですが、店舗や会社などの意味もあり、ここではラリックが経営していたガラスメーカーが独自に販売した香水瓶を指しています。香水商から依頼されたものではないこれらの香水瓶は、空のまま販売され、購入した顧客は好みの香水を入れて楽しんだのでした。
 メゾン・ラリックの香水瓶は、ラリックの創作欲を随意に反映させることができたためか、ユニークで贅沢な作品が多いこともその特徴の一つです。
 中でも、扁平なボトルの両面にそれぞれ異なるガラス製のカメオを嵌め込んだ『FOUGERES(シダ)』や、ラリックとしては珍しくクリスタルガラスを用い、大きなティアラ型の栓に燕をインタリオ(陰刻)した『BOUCHON TROS HIRONDELLIES(三羽のツバメ)』などはその典型で、想像力に遊ぶラリックの豊かな芸術性をみてとることができます。」


1910年 「PETITES FEUILLES(小さな葉)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


1910年 「QUATRE CIGARES(四匹の蝉)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


1911年 「A COTES, BOUCHON PAPILLONS(パピヨン)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


1912年 「LUNARIA(ルナリア)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


1912年 「PANIER DE ROSES(薔薇籠)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


左:1920年 「PAN(牧羊神)」
中:1919年 「ANSES ET BOUCHON MARGUERITES(ひな菊)」の香水瓶
右:1912年 「FOUGERES(シダ)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


1912年 「DEUX FIGURINES, BOUCHON MARGUERITES(二人の肖像)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


1912年 「ROSASE FIGURINES(薔薇窓)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


左:1919年 「BOUCHON EUCALYPTUS(ユーカリ)」
中:1920年 「BOUCHON TROIS HIRONDELLES(三羽のツバメ)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)
右:1920年 「BOUCHON CASSIS(カシス)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)


1931年 「CLAIREFONTAINE(クレールフォンテーヌ)」の香水瓶(2018.6.16 撮影)
 
 多くの香水瓶を見学してきたが、自由に撮影することを許可していただいた、資生堂アートハウスに感謝申し上げる。

 今回展示されていた、バカラやラリックのほとんどの作品は、資生堂アートハウスが、過去の展覧会(前期|バカラ クリスタルの雅歌2015.7.17-9.27、後期|ルネ・ラリック 幻視のファンタジー 2015.10.2-12.13)の際に発行した素敵なカタログ「香水瓶の世紀」に収録されていて、改めてじっくりと見ることができる。参考書としてこの本を購入し、同じ敷地内の少し離れた場所にある、資生堂資料館に移動した。


「香水瓶の世紀」(2015年 資生堂アートハウス発行)の表紙

 この後、資生堂アートハウスでは、続編の企画展「ヴィンテージ香水瓶とタピスリー 様々なデザイン」が、2018.7.3-9.2の期間開催され、多くの香水瓶が展示されているようである。さてどうするか。


2018.7.3-9.2 開催の「ヴィンテージ香水瓶と現代のタピスリー さまざまなデザイン」のパンフレット

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