庭の餌台に来る野鳥の種類は、餌に用いている種子の種類による制約もあると思われるが、それでもこれまでに20数種を数えている。これらは写真撮影できたものを順次紹介させていただく。
今年に入り、カメラをぶら下げて近くの雲場池に早朝散歩に出かけるようになった。厳冬期ではあっても野鳥の姿を見かけることができる。この池には常連のマガモ、カルガモ、キンクロハジロ、オオバンの姿が見られる。この時期の早朝ともなるとさすがにほとんど人影はなく、私が歩いて行くとカモたちはスーッと遠ざかり、中には飛び立つものもいる。池の周りを1周して帰るのであるが、毎日出掛けていると水鳥たちも次第に慣れてくるようで、慌てて逃げだすようなことはなくなってきて、少し距離を置くが浅い水底の藻などを平気で食べるようになってきた。
水鳥以外の常連は、ハクセキレイで、浅い場所でせっかちに何やらついばんでいる。この鳥は人をあまり恐れる様子がなく、むしろ適当な距離はとりながらも積極的に近くまでやってくることがある。毎日のように出会うのはこれくらいであるが、ある時枯れ草の中でゴソゴソ動いている2羽の地味な色をした鳥を見かけたので写真を撮った。見たことのない種で、帰ってから鳥類図鑑で調べてみると、カヤクグリだろうということになった。スズメと同じくらいかやや小さいサイズで、全体に褐色をしている。嘴(くちばし)はスズメに比べると鋭い感じで、この時撮影した写真は次のようである。
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早朝の落ち葉の中で餌を探すカヤクグリ(2020.1.13 撮影)
次の日、この日は池のほとりで近くの結婚式場から撮影のためにやってきた新婚カップルと撮影者の姿が見られたので、撮影の邪魔にならないようにと、前日とは反対周りで池を回っていったのだが、この日も同じ場所で2羽のカヤクグリが枯葉の中に首を突っ込んで餌を探しているところを見かけた。
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池のほとりで記念撮影をする新婚カップル(2020.1.14 撮影)
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早朝の落ち葉の中で餌を探すカヤクグリ(2020.1.14 撮影)
原色日本鳥類図鑑(小林桂助著、1973年保育社発行)には、カヤクグリは次のように記されている。
「形態 暗褐色の地味な鳥。嘴峰12~13mm、翼長66~71mm、尾長53~60mm、跗蹠20~22mm。頭上、後頸は黒褐色、背は赤かっ色で黒かっ色の縦はんがある。耳羽(じう)は黒かっ色で微小な黄白色はんがある。下面は灰ねずみ色で腮(あご)と喉(のど)とは黒かっ色を帯びる。♂♀同色。
生態 日本列島特産種。亜高山帯上部のオオシラビソ、コメツガの森林や高山帯のハイマツ、ウラジロナナカマドなどの低木林で多数繁殖している。細い声でチィー、チィー、チリ、チリと鳴く。冬季は低地に漂行し暖温な地方のやぶ中にはまれでない。
分布 本州の高山で繁殖し、冬期は本州の平地・伊豆七島・四国・九州などに渡来する。」
野鳥のことに馴れない身には難しい言葉が出てきたが、嘴峰(しほう)とは上嘴の基部から先端までの稜線を指し、この長さを嘴峰長(しほうちょう)というとのこと。また跗蹠(ふしょ、またはふしょう)とは踵から趾の付け根までの部分をいう(次図参照、前書より)。
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嘴峰(しほう)と嘴峰長(しほうちょう)の測定
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跗蹠(ふしょう)と跗蹠長(ふしょうちょう)の測定
この後1月の下旬には雪が降り、軽井沢のこの辺りでも15㎝ほど積もった。池の周辺もすっかり雪景色となり、カヤクグリなど地表で餌を探していた野鳥たちは餌の確保に困ったかもしれない。
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1月28日に降った雪で一面雪景色になった(2020.1.28 撮影)
1月14日以来姿を見なくなっていたカヤクグリであったが、2月6日にやはり同じ場所で餌を探していた。見かけるのはこれで3回目になるが、少し慣れて来たのか2-3mまで近づいて撮影しても逃げて行かず、シャッター音にも驚く様子がなかった。
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これまでと同じ場所で佇むカヤクグリ(2020.2.6 撮影)
高山で繁殖するというカヤクグリなので、春になるとまた浅間山系の方に移動していくのであろう。冬の間、下りてきているときにだけ見ることができる種ということになる。いつ頃まで見ることができるのか、様子を見ていこうと思う。
【追記 2020.12.11】夏の間姿を消していたカヤクグリが、久々に元気な姿を見せた。12月に入ってからのことだが、場所は前回2月に見かけたのとほぼ同じ場所であった。
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雲場池のカヤクグリ(2020.12.5 撮影)
【追記 2021.2.25】その後も、あまり人を警戒する様子がなく、時々散歩中に姿を見せてくれている。
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雲場池のカヤクグリ(2020.12.29 撮影)
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雲場池のカヤクグリ(2021.2.15 撮影)
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雲場池のカヤクグリ(2021.2.16 撮影)