1齢幼虫はミツバの葉の表面を齧って食べ続けた。その結果ミツバの葉は穴だらけになっていった。
最初に7月9日に屋外で孵化した1齢幼虫(A)は、12日にはミツバの葉上に糸を吐いて台座と呼ばれている定位置を作った。そこから周辺に動いて行って葉を齧り食べると、また元の場所に戻るということを繰り返していた。
そして、その場所でじっと動かなくなり、脱皮の時期が近付いたと思われた。この時の様子と大きさは次のようであり、脱皮前になると約6mmに成長している。

1齢幼虫と食痕(2020.7.12 撮影動画のキャプチャー画像)

1齢幼虫の大きさ測定、約6mmに成長した。右下は同じ個体の孵化直後の画像。頭の大きさは変わらない。(2020.7.12 撮影映像のキャプチャー画像)
この1齢幼虫(A)が脱皮する様子は見逃してしまった。これに続いた別の1齢幼虫(B)が、孵化後約5日目で脱皮して2齢になった。この幼虫も脱皮の瞬間は見逃したが、脱皮が終わり、まだ後ろに抜け殻を残した状態でいるところを見つけた。
このBが抜け殻を食べ終わるところを撮影し、続いて、ミツバの茎の上で眠(ミン)状態にある個体(C)を見つけて、ようやく脱皮の瞬間を撮影できた。以下に、順序は逆になるが、先ずCが脱皮し、抜け殻を食べるところを、続いてBが同様に抜け殻を食べるところの両方のシーンを見ていただく。
キアゲハ1齢幼虫は脱皮し、2齢になると、脱皮後の抜け殻を食べてしまう
(2020.2.14 , 「C」:11:40-13:10、「B」:10:40-10:52、共に30倍タイムラプス撮影後編集)
脱皮直後の2齢幼虫(C)は、頭部が白く体の色は淡い褐色をしている。脱皮後はしばらくじっとしているが、この間に頭部と体の色は次第に濃くなっていく。
向き直って脱皮殻を食べ始めるころには頭部はかなり黒くなり、体の色も再び脱皮前の黒褐色に戻っている。背中・中央部の白斑は1齢に比べ、よりはっきりとしている。次の写真(キャプチャー画像)は、脱皮直後から3時間半ほどの間の変化を追ったものであるが、頭部と体色の変化がわかる。

脱皮後の2齢幼虫の、頭部と体色の変化(2020.7.14, 11:47-15:16 キャプチャー画像)
2齢幼虫の大きさは体長約5~6mmである。孵化直後の1齢幼虫の体長は約2.5~3mmであったから、この間に幼虫はほぼ2倍の大きさ(長さ)になったことになる。
脱皮後の幼虫にくっついている古い頭部の抜け殻と比べると、新しい頭部の大きさ(幅)もほぼ2倍になっている。1齢幼虫は5日間で体長が2倍になったが、この間、頭部の大きさは変わらなかったようである。脱皮してはじめて、大きくなった体に合った頭部を獲得したことになる。
脱皮前後で頭部の構造がどのようになっているのか、興味深い。脱皮前になると、幼虫は餌を食べなくなり、しばらくじっと葉上にとどまっている(眠状態)が、これは頭部内部で起きている変化のために、餌を食べることができないからかもしれないと思ったりする。
こうした幼虫の頭部の変化は、ヤママユガの仲間を飼育した時にも見られたことで、齢数を確認するときには、体よりも頭部の大きさを見るとよくわかるということがある。
さて、次の段階の、2齢幼虫が3齢になるシーンは実は撮影できなかった。前回と同様に、1匹目が脱皮し、後ろに抜け殻を引きずっているところを確認して、2匹目以降でうまくタイミングを計り撮影しようとしたが、結局そのタイミングを捉えることが出来なかった。なかなか思うような行動をカメラの前で演じてくれないものである。
次の画像は脱皮前の眠状態の2齢と、翌朝脱皮し、抜け殻を食べてしまった後の3齢である。脱皮前の2齢幼虫の長さは約9mmに成長していることが分かる。

脱皮前の2齢幼虫(2020.7.16 , 13:43 キャプチャー画像)

脱皮後の3齢幼虫(2020.7.17, 7:42 キャプチャー画像)
次の2つの映像は、脱皮を終えた直後の3齢幼虫を撮影したもので、脱皮後の抜け殻を食べる様子である。2匹とも同様の行動を取る。
キアゲハ、脱皮直後の3齢幼虫の行動(1)
(2020.7.18, 22:13-24:00, 30倍タイムラプス撮影後編集)
キアゲハ、脱皮直後の3齢幼虫の行動(2)
(2020.7.20, 9:13-9:43, 30倍タイムラプス撮影)
脱皮後の3齢幼虫の大きさは約10mmである。当然ながら脱皮前後の体長はほぼ同じであるが、頭部の大きさ(幅)はここでも倍増している。
脱皮後、抜け殻を食べる幼虫であるが、頭部の抜け殻については無関心のようである。

脱皮直後の3齢幼虫の体長測定(2020.7.20 キャプチャー画像)
続く