すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【なでしこの課題】なでしこジャパンは致命的な「2つの欠点」を修正せよ

2023-09-08 05:00:55 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
ボールはオープンか? クローズか?

 今年8月に行われた「女子ワールドカップ2023」で8強入りしたなでしこジャパンには、2つの大きな欠点がある。もちろんあの大会で得た収穫は大きかったが、ここではあえて課題にフォーカスする。今後のためだ。

 なぜなら問題点はどこにあり、それを修正するには何をすべきか? を考えるのがサッカーで強くなる秘訣だと考えるからだ。

 さてサッカーでいちばん大切なことは、まずボールはオープンか? クローズか? を見ることだ。

 オープンというのはボールに敵のプレスがかかっておらず、ボールを前方へ自由に展開できる状態を指す。一方、クローズとは、ボールにプレスがかかり規制下に置かれている状態だ。そして、もし相手ボールがオープンならば、これをクローズしに行かなければならない。

ボールの状態を認知することですべてが決まる

「ボールはオープンか? クローズか?」によって、攻撃面ではパスコースの作り方や第3の動きをどこにどう入れるのか? また守備面では第1プレッシャーラインの置き方や、そもそも最終ラインをいったいどこに設定するのか? まで、すべてのプレイがこれによって決定づけられる。

 もしオープンか? クローズか? を認知せずにプレイしているとすれば、それは運まかせでクジ引きをひくようなサッカーになっているはずだ。強く運に左右されてしまう。日本サッカーの歴史を振り返れば、思い当たるフシは多いはずだ。

 たとえば古くはドーハの「悲劇」とやらから(さすがカズはあのときボールをクローズしに行ったが間に合わなかった)、最近では「ロストフの14秒」などと美的に伝説化されたベルギーに超ロングカウンターを食らった「喜劇」まで(あのときGKクルトワが抱えたボールは「オープン」だった)、すべてがボールの状態を認知してなかったために起きた悲喜劇だ。

 確かに試合中で疲労が蓄積しているときは、認知する力が鈍磨しがちだ。特にそれは攻守の切り替えのときに起こりやすい。場面が移り変わって、つい集中力が切れるからだ。ゆえに「心のトランジション」は常に研ぎ澄ませておかなければならない。

球際で競る意識が低い

 だがなでしこジャパンの場合、この「ボールはオープンか? クローズか?」の見極めが甘い。同時に敵のボールをクローズしようという意識が低い。

 で、球際の激しい競り合いを嫌い、ややもするとボールウォッチャーになってしまう傾向がある。よしんば競り合ったとしても球際で負けてしまう。特に言えることはプレッシングのハメどころがはっきりしない点だ。というよりハメどころが「ない」。

 例えばこの記事(リンクあり)で書いたようにプレスの収めどころを作り、ボールを保持する敵の最終ラインをマンツーマンでハメて、前でボールを奪うところまで行きたい。

 で、ボールを取ったら即、前線からショートカウンターをかける。これができれば1ランクも2ランクも上へ行けるはずだ。

 重要なのはパスコースを切りながらただ「見る」だけでなく、能動的に前からアグレッシブにプレスをかけること。球際でカラダを入れて敵ボールホルダーと激しく競る。ボールを保持する相手にカラダを押っ付け、足元に強くプレスをかけて自由にプレイさせない。そういう強度の高い守備が必要だ。

敵がクロスを入れる前にプレスで潰せ

 プレスの甘さと、その意識の低さ。このためなでしこジャパンは、互いにカラダをぶつけ合うハイボールの競り合いに持ち込まれるとテキメンに弱い。たとえば女子W杯・決勝トーナメント1回戦のノルウェー戦では、この形でしっかり1失点している。

 もしノルウェーがあんなに後ろに引いて守備的に構えず、サイドからがんがんクロスを入れる、縦にロングボールをどんどん放り込む、という自分たちの高さを積極的に生かす戦い方をしてきたら、なでしこジャパンは何失点していたかわからない。

 ノルウェーはこういう自分たちのストロングポイントを生かす戦い方をせず、「受けに回った」から自滅したのだ。

 さて、こんなふうに相手がハイボールを入れてくることを狙うケースでは、敵がクロスを入れる前にボールホルダーにプレスをかけて先に潰してしまいたい。まずはマークを掴んで離さない。自由にさせない。クロスを入れさせない。 

 ここがポイントだ。

 そういう「一手前」のディフェンスがなでしこジャパンには欠けている。相手ボールにプレスがかからず敵はクロスを入れ放題。これではやられる。

 以上が第一の課題になる。

敵の陣形が崩れていれば速攻を

 もうひとつの欠点は、「アジアカップ2023」で優勝したU-17日本男子代表のダメな点とまったく同じだ。

 それは、アドリブでそのときの局面や相手の態勢に応じてやり方を変えるところがない点だ。なでしこはあくまで自分たちの間合いだけで攻めたり守ったりしている。

 それが顕著に表れるのは、マイボール時に何気なくいったんバックパスして組み立て直し、「何でもかんでも遅攻に」してしまうところだ。

 なでしこを観ていると、深く考えず手クセのようにバックパスしているように見える。「取りあえずバックパスしておけば安心だ。あとのことはそれから考えよう」みたいな感じだ。

 そうじゃなく、特に相手の守備の態勢が崩れているときには、崩れているうちに早いタイミングで速攻をかけて攻め切りたい。逆に敵の守備隊形が万全ならば、そのときはいったんバックパスしてポゼッションをしっかり確立させてから攻めるのでいい。

 こんなふうに「すぐ攻めるべきか? それとも遅攻か?」は、あくまで相手の状況による。ゆえに何も考えずバックパスするその前に、敵味方の陣形を事前にまずしっかり確認しておくことだ。

 そして遅攻ばかりでなく、状況に応じて「必要なら縦に速く攻めること」も心がけたい。

 さて、なでしこジャパンは9月23日(土・祝日)12:00に福岡・北九州スタジアムでキックオフされる国際親善試合・アルゼンチン女子代表戦を戦う。先の女子W杯で出た上記のような課題を、しっかり修正して臨みたい。

 なおこの親善試合は、テレビ朝日系列で全国生放送される。現地へ行けない人はテレビでぜひ応援してほしい。

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