選手のプレイと戦術のキモを一挙紹介
いよいよ本日15時に、首位・川崎フロンターレ vs 2位・名古屋グランパスによる首位決戦・2連戦の火ぶたが切って落とされる。そこで今回は直前特集として、選手たちのプレイの見どころチェックや戦術の勘どころをご紹介しよう。
◆川崎MF・三笘薫と名古屋MF・相馬勇紀のドリブル対決
よくお題に上がる2人のドリブルだが、実はタイプがまったくちがう。
三苫はタッチ数が多く、細かく小突くメッシ風のドリブルだ。一方、相馬のドリブルはマーカーの重心移動を観察し、緩急をつけて相手の態勢を崩し「この瞬間」なら抜ける、という一瞬に爆発的に抜き去る。
また三苫のドリブルは目前の敵を抜くための戦闘行為だが、相馬のドリブルは抜いたあとにクロスを入れる、シュートを打つ、など目的とビジョンがはっきりしている。
◆名古屋MF・マテウスの曲芸ドリブルは見物だ
マテウスのドリブルは、お客さんを魅せるためのものでもある。そのため股抜きや、ボールの上に足を置いて引きワザを出すなど一種の曲芸ショーとしても楽しめる。必見だ。
◆川崎DF・山根視来はハーフスペースの魔術師である
右SBの山根はハーフスペースにポジショニングすることが多い。そしてダイナミックにインナーラップしてニアゾーンに侵入する。で、ラストパスやシュートを放つという攻撃的なプレイが得意だ。彼のプレイは見物である。
◆名古屋MF・稲垣祥のミドルシュートを見逃すな
守備的なセントラルMFである稲垣は、コーナーキックなどの際にはペナルティエリア外のゴール正面にポジショニングすることが多い。
で、ボールがこぼれてくると、カラダを倒しながらボールが浮かないよう低く抑えた速い弾道のミドルシュートを放つ。枠を捉える確率が非常に高い飛び道具だ。
◆川崎MF・田中碧は中盤のコンダクターである
4-1-2-3システムの右インサイドMFやアンカーを担当することが多い田中は、川崎フロンターレの心臓部を握る存在だ。
左右へのボールの振り分けや組み立てのパス、ラストパスなどピッチの中央で全体を交通整理する。彼の存在がなければ交差点は混雑して成り立たない。
◆名古屋CB・丸山祐市と中谷進之介、GKランゲラックは要塞の守護者だ
堅守を誇る名古屋にあって、2CMFと協力して中央に堅い要塞を作る丸山と中谷、ランゲラックは、最後の砦だ。チーム最後部での体を張ったせめぎあいやカバーリング、マーキングなど、彼らを観察して守備のコクを味わおう。
【戦術と戦術のせめぎ合いを堪能する】
では戦術的にはどうだろうか? まずフォーメーション(予想)は川崎Fが4-1-2-3、名古屋は4-2-3-1だ。ポゼッション率は6:4でポゼッション・スタイルの川崎Fが上回るだろう。ただしカウンター攻撃が得意な名古屋は「やられている」のではない。
攻撃的な川崎Fは前がかりになり攻めてくる。するとゾーンを上げた彼らの最終ラインの裏にはたっぷりスペースができる。名古屋はそこを狙う。
つまり相手にボールを持たせ、川崎Fが強く前へ出てくる力を逆用してカウンターを見舞うのだ。攻めているチームは守備のバランスを自ら崩している。そこで名古屋はボールを奪うと素早く敵の崩れた陣形を突く。
ボールを保持した川崎Fが攻め切るのが速いか? それとも名古屋の反撃が利くか? そこが見物である。
三笘薫、レアンドロ・ダミアン、家長昭博を擁する川崎Fの3トップは強烈だ。一気に彼らが名古屋を攻め潰す可能性も大いにある。
そんな彼らのミスを突き、名古屋がボール奪取してカウンターを決められるか? 今日のゲームの焦点はそこにある。
川崎のハイプレスを警戒せよ
また川崎Fはゲームの立ち上がりにハイプレスをかけ、名古屋のビルドアップを壊しにくるかもしれない。ハイプレスにより前でボールを刈り取り、一気に殲滅する狙いだ。
ならば名古屋はそれに構うのでなく、ディフェンディングサードで細かくつながず、いったんロングボールを入れて敵のゾーンを押し下げたい。
また川崎Fは攻めにかかってアタッキングサードでボールを失ったときも、リトリートせず「その場で」カウンタープレスをかけてボールを即時奪回しようとする。
これにより高い位置でボールを奪えれば、速いショートカウンターのチャンスなのだ。
では名古屋はどうすればいいか? こんなとき、下手にバックパスに逃げたりするのは下策である。敵が構える刀の前に首を晒すようなものだ。
ならば名古屋は少ないタッチ数でピッチを斜めに横切る放射状のロングボールを使い、敵のプレスを回避しながらボールを素早くサイドに振りたい。
もしそれが間に合わないなら、大きくクリアして敵のゾーンを下げさせる。で、陣地を回復してやり直しだ。ディフェンディングサードではセーフティ・ファーストがセオリーである。
川崎Fのポゼッションが生きるか?
まとめるとゲームの焦点のひとつは、名古屋の緻密なビルドアップからの攻撃が決まるか? それとも川崎Fがハイプレスでその組み立てを破壊しカウンターを見舞うのか? だ。
またカウンターだけでなく、もちろん川崎Fは丁寧なビルドアップからショートパスとドリブルでポゼッションし、きっちり組み立てて攻めることもできる。この時間帯が長くなれば名古屋はガマンの時になる。
もっとも名古屋はミドルサードやディフェンディングサードにリトリートし、4-4-2のブロックを作って組織的守備をすることに慣れている。繰り返しになるがこのとき名古屋は「やられている」ように見えて、実は相手にボールを持たせてカウンターのチャンスをうかがっている。
ならば「個の力」が強い川崎Fとしては完全に攻め切り、シュートで終わることが肝心だ。こうしてプレイをいったん切れば、名古屋の速いカウンターを食らわずにすむ。
いずれにしろ、今日の試合は狸と狐の化かし合いだ。2連戦のうち1戦目を先勝すればグンと有利になる。ゆえに双方、総力戦で来ることはまちがいない。
川崎Fの鬼木達監督、名古屋のマッシモ・フィッカデンティ監督による選手交代を使ったゲームマネージメントも含め、見どころ満載。極上のエンターテインメントになりそうだ。
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◆川崎MF・三笘薫と名古屋MF・相馬勇紀のドリブル対決
よくお題に上がる2人のドリブルだが、実はタイプがまったくちがう。
三苫はタッチ数が多く、細かく小突くメッシ風のドリブルだ。一方、相馬のドリブルはマーカーの重心移動を観察し、緩急をつけて相手の態勢を崩し「この瞬間」なら抜ける、という一瞬に爆発的に抜き去る。
また三苫のドリブルは目前の敵を抜くための戦闘行為だが、相馬のドリブルは抜いたあとにクロスを入れる、シュートを打つ、など目的とビジョンがはっきりしている。
◆名古屋MF・マテウスの曲芸ドリブルは見物だ
マテウスのドリブルは、お客さんを魅せるためのものでもある。そのため股抜きや、ボールの上に足を置いて引きワザを出すなど一種の曲芸ショーとしても楽しめる。必見だ。
◆川崎DF・山根視来はハーフスペースの魔術師である
右SBの山根はハーフスペースにポジショニングすることが多い。そしてダイナミックにインナーラップしてニアゾーンに侵入する。で、ラストパスやシュートを放つという攻撃的なプレイが得意だ。彼のプレイは見物である。
◆名古屋MF・稲垣祥のミドルシュートを見逃すな
守備的なセントラルMFである稲垣は、コーナーキックなどの際にはペナルティエリア外のゴール正面にポジショニングすることが多い。
で、ボールがこぼれてくると、カラダを倒しながらボールが浮かないよう低く抑えた速い弾道のミドルシュートを放つ。枠を捉える確率が非常に高い飛び道具だ。
◆川崎MF・田中碧は中盤のコンダクターである
4-1-2-3システムの右インサイドMFやアンカーを担当することが多い田中は、川崎フロンターレの心臓部を握る存在だ。
左右へのボールの振り分けや組み立てのパス、ラストパスなどピッチの中央で全体を交通整理する。彼の存在がなければ交差点は混雑して成り立たない。
◆名古屋CB・丸山祐市と中谷進之介、GKランゲラックは要塞の守護者だ
堅守を誇る名古屋にあって、2CMFと協力して中央に堅い要塞を作る丸山と中谷、ランゲラックは、最後の砦だ。チーム最後部での体を張ったせめぎあいやカバーリング、マーキングなど、彼らを観察して守備のコクを味わおう。
【戦術と戦術のせめぎ合いを堪能する】
では戦術的にはどうだろうか? まずフォーメーション(予想)は川崎Fが4-1-2-3、名古屋は4-2-3-1だ。ポゼッション率は6:4でポゼッション・スタイルの川崎Fが上回るだろう。ただしカウンター攻撃が得意な名古屋は「やられている」のではない。
攻撃的な川崎Fは前がかりになり攻めてくる。するとゾーンを上げた彼らの最終ラインの裏にはたっぷりスペースができる。名古屋はそこを狙う。
つまり相手にボールを持たせ、川崎Fが強く前へ出てくる力を逆用してカウンターを見舞うのだ。攻めているチームは守備のバランスを自ら崩している。そこで名古屋はボールを奪うと素早く敵の崩れた陣形を突く。
ボールを保持した川崎Fが攻め切るのが速いか? それとも名古屋の反撃が利くか? そこが見物である。
三笘薫、レアンドロ・ダミアン、家長昭博を擁する川崎Fの3トップは強烈だ。一気に彼らが名古屋を攻め潰す可能性も大いにある。
そんな彼らのミスを突き、名古屋がボール奪取してカウンターを決められるか? 今日のゲームの焦点はそこにある。
川崎のハイプレスを警戒せよ
また川崎Fはゲームの立ち上がりにハイプレスをかけ、名古屋のビルドアップを壊しにくるかもしれない。ハイプレスにより前でボールを刈り取り、一気に殲滅する狙いだ。
ならば名古屋はそれに構うのでなく、ディフェンディングサードで細かくつながず、いったんロングボールを入れて敵のゾーンを押し下げたい。
また川崎Fは攻めにかかってアタッキングサードでボールを失ったときも、リトリートせず「その場で」カウンタープレスをかけてボールを即時奪回しようとする。
これにより高い位置でボールを奪えれば、速いショートカウンターのチャンスなのだ。
では名古屋はどうすればいいか? こんなとき、下手にバックパスに逃げたりするのは下策である。敵が構える刀の前に首を晒すようなものだ。
ならば名古屋は少ないタッチ数でピッチを斜めに横切る放射状のロングボールを使い、敵のプレスを回避しながらボールを素早くサイドに振りたい。
もしそれが間に合わないなら、大きくクリアして敵のゾーンを下げさせる。で、陣地を回復してやり直しだ。ディフェンディングサードではセーフティ・ファーストがセオリーである。
川崎Fのポゼッションが生きるか?
まとめるとゲームの焦点のひとつは、名古屋の緻密なビルドアップからの攻撃が決まるか? それとも川崎Fがハイプレスでその組み立てを破壊しカウンターを見舞うのか? だ。
またカウンターだけでなく、もちろん川崎Fは丁寧なビルドアップからショートパスとドリブルでポゼッションし、きっちり組み立てて攻めることもできる。この時間帯が長くなれば名古屋はガマンの時になる。
もっとも名古屋はミドルサードやディフェンディングサードにリトリートし、4-4-2のブロックを作って組織的守備をすることに慣れている。繰り返しになるがこのとき名古屋は「やられている」ように見えて、実は相手にボールを持たせてカウンターのチャンスをうかがっている。
ならば「個の力」が強い川崎Fとしては完全に攻め切り、シュートで終わることが肝心だ。こうしてプレイをいったん切れば、名古屋の速いカウンターを食らわずにすむ。
いずれにしろ、今日の試合は狸と狐の化かし合いだ。2連戦のうち1戦目を先勝すればグンと有利になる。ゆえに双方、総力戦で来ることはまちがいない。
川崎Fの鬼木達監督、名古屋のマッシモ・フィッカデンティ監督による選手交代を使ったゲームマネージメントも含め、見どころ満載。極上のエンターテインメントになりそうだ。
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