名古屋のフィッカデンティ監督が「コロナ疑い」で欠場
この試合、名古屋グランパスのマッシモ・フィッカデンティ監督がなんと「コロナ疑い」で欠場し、名古屋はブルー・コンカ・コーチが指揮を執った。この時点ですでに彼らは敗れていたのかもしれない。
名古屋はフィッカデンティ監督の下でひとつになり、強い求心力を発揮する集団だ。そのチームに監督がいないのではお話にならない。軸を欠いたグループはまったく機能しなかった。
試合前から名古屋の選手は顔がこわばり、立ち上がりから足に鉛がぶら下がっているかのように動きが重かった。パスを引き出す動きがないし、守備時のカバーリングも遅れた。
名古屋は試合前からメンタルが崩壊し、すべてにおいて川崎Fを下回っていた。先制され、なすすべなく敗れた第10節の鳥栖戦と同じ状態だった。
だが首位決戦はまだ終わったわけじゃない。2連戦だ。名古屋はきっちりメンタルを立て直し、次は中4日おいて5月4日にくる第12節の川崎F戦に備える必要がある。落ち込んでいるヒマなどない。
名古屋4-2-3-1、川崎Fは4-1-2-3システム
名古屋のフォーメーションは攻撃時4-2-3-1、守備時4-4-2だ。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から宮原、木本、丸山、吉田である。
セントラルMFは稲垣と米本。2列目は右からマテウス、柿谷、相馬。ワントップは山崎が務めた。
一方、川崎Fのフォーメーションは4-1-2-3だ。スタメンはGKがチョン・ソンリョン。最終ラインは右から山根、ジェジエウ、谷口、登里である。
アンカーにはジョアン・シミッチが入り、右インサイドMFは田中碧。左インサイドMFは旗手が務める。
3トップは右から家長、レアンドロ・ダミアン、三笘である。
パスワークが乱れる名古屋
あいにくの雨とあって、試合の立ち上がりは両チームともパスミスが目立つ。特に名古屋はボールの流れが乱れ、きれいに繋がらなかった。
そんな落ち着かない前半3分に、いきなり川崎Fが先制する。
まず川崎Fは三笘が左サイドから斜めの縦パスを入れた。これにレアンドロ・ダミアンがポストプレイ。受けた旗手がペナルティエリア中央から右足でシュートを叩き込んだ。
まるで前半6分に突然ゴールを決められ、0-2であっけなく敗れた第10節の鳥栖戦と同じ展開だ。
名古屋の選手は手足は動いても、魂がここにない感じ。すっかり浮足立っている。
このあとずっと川崎Fがポゼッションする展開になった。そのため名古屋は延々、自陣に引いてブロックを組んでいる。いや、というより「押し込まれている」と言ったほうが正解だ。
続く前半10分。川崎Fの家長が左サイドから糸を引くようなクロスを入れ、レアンドロ・ダミアンが打点の高いヘディングシュートを放つ。またゴール。これで彼らは早くも2点をリードした。
名古屋はマークが甘く、まったく別のチームになっている。散々だ。
名古屋がやっとロングカウンターを繰り出す
前半15分、名古屋は待望のロングカウンターを仕掛ける。トップ下の柿谷が川崎Fの最終ライン裏にスルーパスを出す。これにマテウスが走り込んでドリブルしたが、惜しくもボールはゴールラインを割ってしまった。
名古屋は引いて自陣でボールを奪っても、1本目のパスがなかなか通らない。それだけ川崎Fのプレッシングが利いている。
そんな川崎Fの3点目は前半23分だった。彼らの右CKからだ。
キッカーの田中碧が右足でクロスを入れ、ニアでシミッチが後ろにフリック。これにレアンドロ・ダミアンがこの日2点目になるヘディングシュートを決めた。
名古屋の選手たちは、いまや亡霊のように突っ立っている。魂が抜けたかのようだ。動きがぎこちない。インテンシティが極端に低い。
「川崎Fが強い」というより、名古屋が本領を発揮できていない、というのが正確な表現だろう。それほど彼らは見ていられないデキだった。
名古屋が4-1-2-3にシステム変更する
前半30分。名古屋は右SBの宮原を引っ込め、同じポジションの成瀬竣平を入れた。同時にワントップの山崎に代えて守備的MFの長澤和輝を投入する。
これにより米本をアンカー、右インサイドMFを稲垣、左インサイドMFを長澤とする4-1-2-3システムに変えた。守備時は柿谷と稲垣が2トップを組む4-4-2になる。
だがこの日の名古屋はシステムの問題じゃないのだ。
彼らはすっかり消極的になっており、守備ブロックを組む位置がいつもより低い。ディフェンディングサードである。そのため川崎Fのパンチを容赦なく浴び続けた。
名古屋はボールを奪ってからの速いポジティブ・トランジション(守→攻の切り替え)の動きがなく、ボールに対しサポートが欠落している。
パスの出し手と受け手という1対1の関係しかなく、3人目の動きがない。そのため川崎Fに容易にパスコースを読まれ、守備対応される。打つ手がない。
柿谷が敵GKと1対1になる
後半9分、そんな名古屋がやっと反撃する。
彼らは自陣でボールを奪い、右サイドをマテウスがドリブルする。そして敵陣中央から柿谷にスルーパスを出す。柿谷はGKチョン・ソンリョンと1対1になるが、GKが好セーブを見せてゴールを割らせなかった。際どいプレーだった。
柿谷は強いメンタルで孤軍奮闘、闘っていた。
このあと名古屋は稲垣がひどいパスミスをし、決定的なピンチを迎える。これまでのシーズンで彼にこんなシーンは一度もなかった。相馬も焦りからか、次第に自己中ドリブルに陥っている。
後半24分には、そんな相馬が前田直輝と交代を命じられる。
前田は右WGに入り、代わってマテウスが左WGに回った。このあと前田はスタメンのメンバーにはまるでない、活発な動きをした。この交代がもっと早ければ、と思わされた。
川崎Fが自陣にブロックを作るように
3点取って後半に入り、川崎Fはゆったり構えて無理せず自陣にブロックを作るようになった。上手に時間を使って試合を殺すうまいゲーム運びだ。
そのため名古屋はボールが持てるようになったかに見えるが、実は「持たされて」いるのだ。川崎Fの試合巧者ぶりが光っていた。
そんな川崎Fは後半27分、エースの三笘を引っ込め脇坂泰斗を投入。「お役御免」である。脇坂は左インサイドMFをまかされ、旗手が三笘の代わりに左WGに回った。
そして大団円の4点目は後半39分だ。脇坂が、途中投入され左前にいた遠野大弥にスルーパスを出す。
遠野はこれをキープし、角度のない左サイドから左足を強振。ゴール右スミに一直線、きっちりボールを沈めて見せた。見事なファインゴールである。
続く後半41分には名古屋がマテウスに代え、齋藤学を入れた。アグレッシブな齋藤は沈んだゲームの流れを変えるいい起爆剤になる。もっと早く投入してほしかった。
こうしてフィッカデンティ監督を欠く名古屋は采配面でも疑問手を指し、あえなくゲームセットになった。川崎Fが大量4点を奪い試合を締めた。レアンドロ・ダミアンは2得点1アシストの活躍である。
さて、問題は変則日程のため5月4日に行われる同じカードの次の試合だ。川崎Fのホーム、等々力陸上競技場で行われる第12節である。
この日は試合開始早々の失点で、完全にゲームプランが狂った。
名古屋はそんなショックから立ち直り、しっかり切り替える必要がある。まだシーズンは先が長い。ひとまず今度来るのはまた同じお相手だ。この日の試合をきっちり分析し、次に備えたい。何度もやられるわけにはいかない。
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この試合、名古屋グランパスのマッシモ・フィッカデンティ監督がなんと「コロナ疑い」で欠場し、名古屋はブルー・コンカ・コーチが指揮を執った。この時点ですでに彼らは敗れていたのかもしれない。
名古屋はフィッカデンティ監督の下でひとつになり、強い求心力を発揮する集団だ。そのチームに監督がいないのではお話にならない。軸を欠いたグループはまったく機能しなかった。
試合前から名古屋の選手は顔がこわばり、立ち上がりから足に鉛がぶら下がっているかのように動きが重かった。パスを引き出す動きがないし、守備時のカバーリングも遅れた。
名古屋は試合前からメンタルが崩壊し、すべてにおいて川崎Fを下回っていた。先制され、なすすべなく敗れた第10節の鳥栖戦と同じ状態だった。
だが首位決戦はまだ終わったわけじゃない。2連戦だ。名古屋はきっちりメンタルを立て直し、次は中4日おいて5月4日にくる第12節の川崎F戦に備える必要がある。落ち込んでいるヒマなどない。
名古屋4-2-3-1、川崎Fは4-1-2-3システム
名古屋のフォーメーションは攻撃時4-2-3-1、守備時4-4-2だ。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から宮原、木本、丸山、吉田である。
セントラルMFは稲垣と米本。2列目は右からマテウス、柿谷、相馬。ワントップは山崎が務めた。
一方、川崎Fのフォーメーションは4-1-2-3だ。スタメンはGKがチョン・ソンリョン。最終ラインは右から山根、ジェジエウ、谷口、登里である。
アンカーにはジョアン・シミッチが入り、右インサイドMFは田中碧。左インサイドMFは旗手が務める。
3トップは右から家長、レアンドロ・ダミアン、三笘である。
パスワークが乱れる名古屋
あいにくの雨とあって、試合の立ち上がりは両チームともパスミスが目立つ。特に名古屋はボールの流れが乱れ、きれいに繋がらなかった。
そんな落ち着かない前半3分に、いきなり川崎Fが先制する。
まず川崎Fは三笘が左サイドから斜めの縦パスを入れた。これにレアンドロ・ダミアンがポストプレイ。受けた旗手がペナルティエリア中央から右足でシュートを叩き込んだ。
まるで前半6分に突然ゴールを決められ、0-2であっけなく敗れた第10節の鳥栖戦と同じ展開だ。
名古屋の選手は手足は動いても、魂がここにない感じ。すっかり浮足立っている。
このあとずっと川崎Fがポゼッションする展開になった。そのため名古屋は延々、自陣に引いてブロックを組んでいる。いや、というより「押し込まれている」と言ったほうが正解だ。
続く前半10分。川崎Fの家長が左サイドから糸を引くようなクロスを入れ、レアンドロ・ダミアンが打点の高いヘディングシュートを放つ。またゴール。これで彼らは早くも2点をリードした。
名古屋はマークが甘く、まったく別のチームになっている。散々だ。
名古屋がやっとロングカウンターを繰り出す
前半15分、名古屋は待望のロングカウンターを仕掛ける。トップ下の柿谷が川崎Fの最終ライン裏にスルーパスを出す。これにマテウスが走り込んでドリブルしたが、惜しくもボールはゴールラインを割ってしまった。
名古屋は引いて自陣でボールを奪っても、1本目のパスがなかなか通らない。それだけ川崎Fのプレッシングが利いている。
そんな川崎Fの3点目は前半23分だった。彼らの右CKからだ。
キッカーの田中碧が右足でクロスを入れ、ニアでシミッチが後ろにフリック。これにレアンドロ・ダミアンがこの日2点目になるヘディングシュートを決めた。
名古屋の選手たちは、いまや亡霊のように突っ立っている。魂が抜けたかのようだ。動きがぎこちない。インテンシティが極端に低い。
「川崎Fが強い」というより、名古屋が本領を発揮できていない、というのが正確な表現だろう。それほど彼らは見ていられないデキだった。
名古屋が4-1-2-3にシステム変更する
前半30分。名古屋は右SBの宮原を引っ込め、同じポジションの成瀬竣平を入れた。同時にワントップの山崎に代えて守備的MFの長澤和輝を投入する。
これにより米本をアンカー、右インサイドMFを稲垣、左インサイドMFを長澤とする4-1-2-3システムに変えた。守備時は柿谷と稲垣が2トップを組む4-4-2になる。
だがこの日の名古屋はシステムの問題じゃないのだ。
彼らはすっかり消極的になっており、守備ブロックを組む位置がいつもより低い。ディフェンディングサードである。そのため川崎Fのパンチを容赦なく浴び続けた。
名古屋はボールを奪ってからの速いポジティブ・トランジション(守→攻の切り替え)の動きがなく、ボールに対しサポートが欠落している。
パスの出し手と受け手という1対1の関係しかなく、3人目の動きがない。そのため川崎Fに容易にパスコースを読まれ、守備対応される。打つ手がない。
柿谷が敵GKと1対1になる
後半9分、そんな名古屋がやっと反撃する。
彼らは自陣でボールを奪い、右サイドをマテウスがドリブルする。そして敵陣中央から柿谷にスルーパスを出す。柿谷はGKチョン・ソンリョンと1対1になるが、GKが好セーブを見せてゴールを割らせなかった。際どいプレーだった。
柿谷は強いメンタルで孤軍奮闘、闘っていた。
このあと名古屋は稲垣がひどいパスミスをし、決定的なピンチを迎える。これまでのシーズンで彼にこんなシーンは一度もなかった。相馬も焦りからか、次第に自己中ドリブルに陥っている。
後半24分には、そんな相馬が前田直輝と交代を命じられる。
前田は右WGに入り、代わってマテウスが左WGに回った。このあと前田はスタメンのメンバーにはまるでない、活発な動きをした。この交代がもっと早ければ、と思わされた。
川崎Fが自陣にブロックを作るように
3点取って後半に入り、川崎Fはゆったり構えて無理せず自陣にブロックを作るようになった。上手に時間を使って試合を殺すうまいゲーム運びだ。
そのため名古屋はボールが持てるようになったかに見えるが、実は「持たされて」いるのだ。川崎Fの試合巧者ぶりが光っていた。
そんな川崎Fは後半27分、エースの三笘を引っ込め脇坂泰斗を投入。「お役御免」である。脇坂は左インサイドMFをまかされ、旗手が三笘の代わりに左WGに回った。
そして大団円の4点目は後半39分だ。脇坂が、途中投入され左前にいた遠野大弥にスルーパスを出す。
遠野はこれをキープし、角度のない左サイドから左足を強振。ゴール右スミに一直線、きっちりボールを沈めて見せた。見事なファインゴールである。
続く後半41分には名古屋がマテウスに代え、齋藤学を入れた。アグレッシブな齋藤は沈んだゲームの流れを変えるいい起爆剤になる。もっと早く投入してほしかった。
こうしてフィッカデンティ監督を欠く名古屋は采配面でも疑問手を指し、あえなくゲームセットになった。川崎Fが大量4点を奪い試合を締めた。レアンドロ・ダミアンは2得点1アシストの活躍である。
さて、問題は変則日程のため5月4日に行われる同じカードの次の試合だ。川崎Fのホーム、等々力陸上競技場で行われる第12節である。
この日は試合開始早々の失点で、完全にゲームプランが狂った。
名古屋はそんなショックから立ち直り、しっかり切り替える必要がある。まだシーズンは先が長い。ひとまず今度来るのはまた同じお相手だ。この日の試合をきっちり分析し、次に備えたい。何度もやられるわけにはいかない。
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