まつお文庫からのご案内

仙台市若林区中倉3-16-8にある家庭文庫です。水・土の3時~6時(第2土は休み)どなたでも利用できます(無料)。

新しく買った本 8月

2024-08-21 12:03:08 | 文庫のページ
新しく買った本
①『王さまめいたんてい』 理論社2012
②『たまごがいっぱい』  理論社2013
③『王さまレストラン』  理論社2014 寺村輝夫 原作/わかやましずこ 構成・絵

 寺村さんの死後、2012年から「新 王さま絵本」として新しく3冊出版になりました。
①遊ぶのが好きで勉強が嫌いな王様は、大臣に頭のいいところを見せてやろうと、自分で人形を隠し、盗まれたと騒ぎ、名探偵ぶりを発揮しようとしますが、大臣には誰が犯人かわかってしまいます。(『王さまめいたんてい』1977 に収録されている話。)
②大好きな卵を自分だけ食べようと、国中に卵を食べることを禁止する王さま。国中大騒ぎになりますが、一番腹を立てたのは自分たちの出番がなくなったフライパンたちです。王さまに抗議するフライパンたちの活躍が見ものです。(『王さまびっくり』1974 に収録されている話。)
③お城の庭でレストランを始めた王さまですが、王さまの作る料理はまずく、お城の人は誰も来なくなります。ところが冷蔵庫に残ったたった一つの卵を割ると、不思議なことが起こり、おかげで王さまはみんなにおいしいトンカツをごちそうすることができるのです。(『王さまレストラン』1981に収録されている話。)
 和歌山静子さんの描く茶目っ気たっぷりの王さまがなんとも魅力的です。
④『ねえねえ、きょうのおはなしは‥‥ せかいのたのしいむかしばなし』 大塚勇三再話・訳 PEIACO絵 福音館書店 2024
 グリムやノルウェーの昔話の他、ギリシャ、ウィグル、朝鮮半島、リトアニア、アイスランド、ロシアの昔話など、世界のいろいろな国の昔話が楽しめます。大塚さんの訳された『グリムの昔話』(全3巻)、『ノルウェーの昔話』から選ばれた昔話が10話、「母の友」や「おおきなポケット」に掲載された昔話が10話、あわせて20話をまとめた小型サイズの昔話集です。装丁もすてきで、低学年の子どもにも手に取ってもらえそうです。
 最後にある斎藤惇夫さんの「解説」も興味深いです。
⑤『風の見たもの 銀色の糸 不思議な一粒』 沓澤小波/フジコ・ヘミング 自費出版 2024.7
 宮城県柴田町在住の沓澤さんの童話「銀色の糸」と「不思議な一粒」に、4月に92才で亡くなられたピアニストのフジコ・ヘミングさんの挿絵がついたすてきな童話集です。お二人の出会い、付き合いは20年以上になります。沓澤さんは仙台で何度かフジコ・ヘミングさんのコンサートを開催してきました。
 「銀色の糸」は、満月の夜に聞こえてきたバッハの「無伴奏チェロ組曲」を聴きながら眠ってしまった女の子の夢の中の物語です。満月の夜までに、切れてしまったチェロの糸を直さなければならないという猫に出会い、亡くなったお母さんにもらった銀の糸で直してあげるのです。チェロを弾く猫とのふしぎな時間が流れる物語です。
 「不思議な一粒」は、一度もぶどうの「ド」を食べたことのない王子さまの物語です。それを食べると、人の心の奥を読むことができるのです。ある時、山ぶどうの「ド」を食べてしまった王子さまの心には悲しみが広がります。コウモリと再会し、再び笑顔を取り戻す王子さまの再生の物語。
 おふたりの最初の絵本『青い玉』(2009)も文庫にありますので、どうぞ手に取ってみてください。
⑥『夏のサンタクロース フィンランドのお話集』(1933) アンニ・スヴァン/ルドルフ・コイヴ
古市真由美訳 岩波少年文庫 2023.10

 1933年に出版された『アンニ・スヴァン童話集』には46編の童話が収めてあります。その中から訳者の古市さんが心ひかれた童話13編を選んでまとめた童話集です。
 表題作の「夏のサンタクロース」は、大切なブーツの片方を盗まれて困っているサンタクロースを子どもたちとキツツキが助ける話です。「森のクリスマス・イヴ」に出てくるクマの言葉、「春を迎えに行った三人の子どもたち」に出てくる春の女神の言葉が印象深いです。「ふしぎの花」は魔物に足をつかまれ、獣の足にされてしまった若者と、黒い美しい花が咲くまでは誰がきても決して戸を開けてはならないという亡くなった母の言葉を守る娘との出会いと別れと再会の物語です。
 どのお話も北欧フィンランドの豊かな森や自然を感じます。小鳥や動物たちが言葉を交わし、小人や妖精や魔物が登場し、子どもたちの喜びや若者たちの愛の物語など、想像の翼を存分に楽しませてくれる童話にたくさん出会えます。物語の世界を印象深く描いたルドルフ・コイヴのモノクロのペン画も美しく、心に残ります。
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