①『さすらいの孤児ラスムス』(1956)
アストリッド・リンドグリーン 尾崎 義訳 岩波少年文庫 2003
『長くつ下のピッピ』を書いたリンドグリーンの作品です。
自分をもらってくれる里親を自分で探すため、「孤児の家」を逃げ出した9歳のラスムスの物語です。
寮母先生にムチでぶたれる恐ろしさから逃げるようにして夏の夜、こっそり逃げ出したラスムスは風来坊のアコーディオン弾きのオスカルに出会い、一緒に旅を続けます。始まったばかりのふたりの関係がこれからどう展開していくか、とても象徴的に語っている場面があります。
歩き疲れたラスムスが「オスカル、手をつないであげようか」というと、オスカルは考え込んでじっとラスムスを眺めて「うん、そうだな」「たのむ、手をひいてくれ。おれがおくれるといけないからな」と答えるのです。ラスムスがどんな少年で、オスカルがどんな人間か、見事に語っていて感動的です。こんなふたりの関係は物語の最後まで変わることなく、人間のやさしさにあふれる物語です。
そんな二人が旅の途中で、逃走 中の2人組の強盗犯人に出くわし、見事、捕まえるまでの展開は息詰まるような緊張感にあふれ、ハラハラさせられます。ラスムスの勇気と活躍に思わず拍手を送りたくなります。
66年前の作品ですが、このドキドキを今の子どもたちにも届けたいなと思います。きっとラスムスが大好きになります。最後、ラスムスもオスカルも最高の幸せを手にすることができ、感動をもらえます。リンドグレーンはこの作品で1958年、国際アンデルセン賞を受賞します。
②『岩波少年文庫のあゆみ 1950-2020』 若菜晃子編著 岩波少年文庫 2021.3
1950年創刊の岩波少年文庫は2020年に70周年を迎えました。戦争が終わってわずか5年後に創刊された岩波少年文庫にはこれから少年期を生きる子どもたちに対する大きな期待が込められていました。その少年文庫が70年も出版され続けてきたことの意味は大きく、70年の歩みを振り返り少年文庫の魅力に迫るとても興味深い本です。子どもの時から少年文庫に親しんできた著者が膨大な資料を読み込んで書きあげた力作です。
少年文庫の表紙(装丁)の70年の変遷の様子は特に興味深く、背表紙のマークや扉のさし絵に編集者の深い思いを知ることができます。450冊を超える少年文庫の中から代表作をたくさん紹介してあるのもうれしいです。さし絵や翻訳に関わった方々の話もおもしろく、少年文庫が手渡してきた豊かで楽しい世界の全体像をとらえることができます。最後に載っている少年文庫の総目録も貴重な資料です。
著者の若菜さんは山や自然、旅に関する書籍や雑誌を編集、執筆している方で、年2回、B6サイズのすてきな小冊子「murren」も編集、発行しています。2018年1月のvol.22では岩波少年文庫を特集。今回、文庫ではこの冊子も購入しました。雑木林の落ち葉の上に『ニルスのふしぎな旅』上下2冊がさりげなく置かれた表紙にはセンスのよさを感じます。
③『子どもの本のもつ力 世界と出会える60冊』 清水真砂子 大月書店 2019
「『かわいい』がとりこぼすものは?」「ひとり居がもたらしてくれるもの」「毎日は同じじゃない」「たのしいだけで十分!」「子どもが”他者”と出会うとき」「現在(いま)とむかしとこれから」―この6つのテーマを見ただけでどんな作品が取り上げられているか興味が湧きます。
それぞれのテーマで10冊の本が取り上げられ、計60冊のすてきな本に出合えます。絵本から幼年文学、児童文学、ヤングアダルト向けの作品まで様々なジャンルを網羅し、興味深い読書案内です。清水さんの指摘はいつも刺激的で、子どもの本に向き合うときの大切な視点を気づかせてもらえるように思います。
アストリッド・リンドグリーン 尾崎 義訳 岩波少年文庫 2003
『長くつ下のピッピ』を書いたリンドグリーンの作品です。
自分をもらってくれる里親を自分で探すため、「孤児の家」を逃げ出した9歳のラスムスの物語です。
寮母先生にムチでぶたれる恐ろしさから逃げるようにして夏の夜、こっそり逃げ出したラスムスは風来坊のアコーディオン弾きのオスカルに出会い、一緒に旅を続けます。始まったばかりのふたりの関係がこれからどう展開していくか、とても象徴的に語っている場面があります。
歩き疲れたラスムスが「オスカル、手をつないであげようか」というと、オスカルは考え込んでじっとラスムスを眺めて「うん、そうだな」「たのむ、手をひいてくれ。おれがおくれるといけないからな」と答えるのです。ラスムスがどんな少年で、オスカルがどんな人間か、見事に語っていて感動的です。こんなふたりの関係は物語の最後まで変わることなく、人間のやさしさにあふれる物語です。
そんな二人が旅の途中で、逃走 中の2人組の強盗犯人に出くわし、見事、捕まえるまでの展開は息詰まるような緊張感にあふれ、ハラハラさせられます。ラスムスの勇気と活躍に思わず拍手を送りたくなります。
66年前の作品ですが、このドキドキを今の子どもたちにも届けたいなと思います。きっとラスムスが大好きになります。最後、ラスムスもオスカルも最高の幸せを手にすることができ、感動をもらえます。リンドグレーンはこの作品で1958年、国際アンデルセン賞を受賞します。
②『岩波少年文庫のあゆみ 1950-2020』 若菜晃子編著 岩波少年文庫 2021.3
1950年創刊の岩波少年文庫は2020年に70周年を迎えました。戦争が終わってわずか5年後に創刊された岩波少年文庫にはこれから少年期を生きる子どもたちに対する大きな期待が込められていました。その少年文庫が70年も出版され続けてきたことの意味は大きく、70年の歩みを振り返り少年文庫の魅力に迫るとても興味深い本です。子どもの時から少年文庫に親しんできた著者が膨大な資料を読み込んで書きあげた力作です。
少年文庫の表紙(装丁)の70年の変遷の様子は特に興味深く、背表紙のマークや扉のさし絵に編集者の深い思いを知ることができます。450冊を超える少年文庫の中から代表作をたくさん紹介してあるのもうれしいです。さし絵や翻訳に関わった方々の話もおもしろく、少年文庫が手渡してきた豊かで楽しい世界の全体像をとらえることができます。最後に載っている少年文庫の総目録も貴重な資料です。
著者の若菜さんは山や自然、旅に関する書籍や雑誌を編集、執筆している方で、年2回、B6サイズのすてきな小冊子「murren」も編集、発行しています。2018年1月のvol.22では岩波少年文庫を特集。今回、文庫ではこの冊子も購入しました。雑木林の落ち葉の上に『ニルスのふしぎな旅』上下2冊がさりげなく置かれた表紙にはセンスのよさを感じます。
③『子どもの本のもつ力 世界と出会える60冊』 清水真砂子 大月書店 2019
「『かわいい』がとりこぼすものは?」「ひとり居がもたらしてくれるもの」「毎日は同じじゃない」「たのしいだけで十分!」「子どもが”他者”と出会うとき」「現在(いま)とむかしとこれから」―この6つのテーマを見ただけでどんな作品が取り上げられているか興味が湧きます。
それぞれのテーマで10冊の本が取り上げられ、計60冊のすてきな本に出合えます。絵本から幼年文学、児童文学、ヤングアダルト向けの作品まで様々なジャンルを網羅し、興味深い読書案内です。清水さんの指摘はいつも刺激的で、子どもの本に向き合うときの大切な視点を気づかせてもらえるように思います。