まつお文庫からのご案内

仙台市若林区中倉3-16-8にある家庭文庫です。水・土の3時~6時(第2土は休み)どなたでも利用できます(無料)。

新しく買った本 ’11年2月

2011-02-14 20:38:05 | 新しく買った本
①『にいさん』 いせひでこ 偕成社
 伊勢さんは1990年から画家ゴッホの足跡を訪ねてオランダ、ベルギー、フランスと長い旅を続けてきました。ゴッホと弟テオドルスの物語。生涯ゴッホを支えた弟の、ゴッホを失った時の深い悲しみが「ああ、ぼくのたったひとりの、ぼくだけのにいさん」という言葉に凝縮されていて胸を打ちます。豊かな自然の中で幼い日、兄弟の過ごした時間が印象的です。油絵の重厚な感じ、濃い群青の色の深さ、大きく広がる空の印象、画面いっぱいに描かれる麦畑やひまわりなど、どのページも絵のすばらしさに圧倒されます。大人の方にもぜひ手に取ってみて欲しい絵本です。2008年出版。
②『大きな木のような人』 いせひでこ 講談社
 これは2009年出版の絵本。フランスの大きな植物園が舞台。樹齢400年のアカシアや樹齢250年のプラタナスなどたくさんの木々や花が水彩で美しく描かれています。スケッチブックを持った「さえら」は植物園で草花をスケッチしながら植物園で働く人たちと友だちになっていきます。若い女性の植物学者のソフィーにも出会います。伊勢さんの『ルリユールおじさん』に登場していた女の子を覚えているでしょうか。絵本の最後で「そして私は植物学の研究者になった」と出ていました。そのソフィーがここに登場しています。さえらはその後、日本に帰国するのですが、その後の話は次の『まつり』に続きます。
③『まつり』 いせひでこ 講談社
 秋、フランスの植物園で知り合った木の先生が日本にやってきて、さえらはうれしい再会をします。さえらは先生に日本の祭りを見てもらいたいと思います。江戸時代から伝わる彫刻屋台祭り(栃木県鹿沼市)の様子が美しい水彩で描かれています。木と共に生きる人々の感動的な物語です。2010年出版。
④『つづきの図書館』 柏葉幸子 講談社
 主人公は図書館に勤める司書の山神桃さん。本の主人公たちがその本を大好きだった子どもたちのその後をどうしても知りたいと、本の中から飛び出してきて山神さんを困らせる話です。山神さんの奮闘ぶりが楽しめます。
⑤『哲夫の春休み』 斎藤惇夫 岩波書店
 28年ぶりに斎藤惇夫さんの新作が出ました。小学校を卒業しての春休み、哲夫は一人、父親の故郷、長岡に行くことになり、そこで出会ったさまざまな人との不思議な物語です。タイムファンタジー。列車の中で偶然出会ったおばさんとなぜか一緒の旅をすることになり、そのおばさんの過去と哲夫の父の過去がつながっていたり、10歳の頃の父親に出会ったり、この旅を通して哲夫はさまざまな人の心を知ります。でもこの物語の主人公はもしかして長岡という風土のような気もします。イギリスの児童文学に比べると、日本の児童文学には風土性が弱いような気がします。この物語は作者自身のふるさと長岡への強い思いなくしては生まれなかった作品かもしれません。長岡の持つ風土性が、登場する人々の心にさまざまな影を落としています。「哲夫」は、2008年に亡くなられた斎藤さんの息子さんの名前です。
コメント
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