④『ローズの小さな図書館』 キンバリー・ウィリス・ホルト 谷口由美子訳 徳間書店 2013
第1章は14歳の少女ローズの物語(1939年~1940年)です。本が好きで、将来は小説家になりたいと思っているローズが、生活のため17歳と偽って、移動図書館バスの運転手として働く話。その後、ローズがどんな人生を送ったのか、第2章ではローズの息子、第3章ではローズの孫娘、第4章ではローズのひ孫の男の子を主人公に、同じ13歳の子どもたちの喜び、悲しみを描くことを通して語られていきます。
母として、祖母として、曾祖母としてのローズが時々登場します。最終章は2004年。ローズは79歳になっています。14歳のころの体験を書いた本が出版され、小説家になりたい夢が実現し、家族や友人、みんなから祝福を受けるローズです。ローズの14歳から79歳までの65年間の、4世代にわたる壮大な物語です。読者は何度もローズの家系図を確かめながら読んでいくことになります。本や図書館のこと、図書館で働く人についてもすてきに描いた興味深い作品です。
⑤『かこさとし 子どもと遊び、子どもに学ぶ』 別冊太陽 平凡社 2017.3
かこさんは2018年5月2日、92歳で亡くなりましたが、これは亡くなる前年に出版された本です。
1959年、『だむのおじさんたち』(こどものとも)で絵本作家としてデビューしたかこさんは、それから60年間、たくさんの絵本や紙芝居、子どもの遊びに関する著作など、600冊以上の本を出版します。そんなかこさんの絵本作家としての歩み、子どもと子どもの本に捧げた生涯をまとめた貴重な本です。写真も多く掲載され、年譜、著作リストも充実しています。
年譜を見ながら、気づいたことがあります。1926年、福井県の武生で生まれたかこさんは、7歳の時に東京に引っ越します。成蹊高校に入学し、1944年、高2の頃、国語の教師であった俳人の中村草田男に俳句の指導を受けています。かこさんより10歳年上の瀬田貞二さんはそれよりはやく、1939年23才の頃から中村草田男に師事して俳句をやっています。1950年代後半から、福音館書店で「こどものとも」の仕事をたくさんなさっているおふたりが、俳人の中村草田男とつながっていて驚きました。ちょっとした発見です。
⑥MОE『かこさとし』 白泉社 2019.3.1 月間モエ2019.4月号
「かこさとし 永遠の宝物」と題して特集が組まれています。長女の鈴木万里さんや、松居直さん、中川李枝子さん、最後の絵本となった『みずとはなんじゃ?』の絵を担当した鈴木まもるさんなどが、かこさんについて語っています。今春から『かこさとし展』が全国を巡回するという記事も載っています。まず3月21日から5月12日まで、越前市の武生公会堂記念館で「加古里子 ~ただ子どもたちのために~」が開催されます。