メガヒヨの生息日記

メガヒヨ(観劇、旅行、鳥好き)のささいな日常

メガヒヨ、絵本ごときを読んでサンマが食べられなくなる

2010年11月22日 | メガヒヨの日々つれづれ
秋も既に終盤。
意味もなく感傷的な気分になってくる。

さてそんなアナタを更に追い込み。
この絵本を読めば、ますますメランコリーになること間違いなし。


それは数年前のある日のこと。
本屋で知人と待ち合わせしたメガヒヨ。
約束の時間までかなり余裕があったので、当てもなく様々な本の表紙を眺め歩いていた。
その時に印象深い絵本に出くわす。

タイトルは『焼かれた魚』。
表紙のイラストと装丁に惹かれて手に取ったのだが、それはとんでもない鬱爆弾だった。

焼かれた魚―The Grilled Fish
小熊 秀雄,市川 曜子
パロル舎


白い皿の上にのつた焼かれた秋刀魚(さんま)は、たまらなく海が恋しくなりました。
 あのひろびろと拡がつた水面に、たくさんの同類たちと、さまざまの愉快なあそびをしたことを思ひ出しました、いつか水底の海草のしげみに発見(みつけ)てをいた、それはきれいな紅色の珊瑚は、あの頃は小さかつたけれども、いまではかなり伸びてゐるだらう、それとも誰か他の魚に発見(みつ)けられてしまつたかもしれない、などと焼かれた秋刀魚は、なつかしい海の生活を思ひ出して、皿の上でさめざめと泣いて居りました。



海で楽しく泳いでいたはずが人間に捕まり、網の上で焼かれてしまったサンマくん。
その家の飼いネコに、自らのほっぺの肉をあげるから海に連れて行ってほしいと懇願する。

ネコは途中まで連れてっていってくれるものの、途中で放棄。
サンマくんは、犬、カラスなどさまざまな生き物に自らに肉を差し出し、海への帰還を切望する。
しかしながら引受人たちは、報酬を受け取りつつも彼の望みを裏切ってしまう。

紆余曲折を経て、最終的には慈悲深いアリの王様が施しとしてサンマくんを海に戻してくれる。
念願の海に戻ることが出来た彼。
しかしその身は既に骨だけになっていた…

といった、あらすじを書いただけでも落ち込んでしまうようなストーリー。


うっかりこの話を読んでしまった当時。
その衝撃は計り知れなかった。

一週間はどよーーーんと落ち込み、一カ月はサンマが食べられなかった。
そのどん底の様な気持ちを自分一人では抱えきれなくなり、姉にこの絵本の話をした。
そうしたら見事に伝染し、姉は三カ月サンマが食べられなくなってしまった。


ひたすらに救いようの無い話に思えるこの絵本。
だけどこれだけ人の感情に訴えるのだから、強い作品の力があるのだろうね。
所詮、人間もこんな感じに死んで行くのだろうし。

もちろん、この作品の奥深いところまではまだまだ理解出来ない。
でもいつか、その抱え込むメッセージを読み取れるのかな~と思う晩秋の頃なのであった。


追記
サンマが食べられなくなったのは、あくまで数年前
現在のメガヒヨは「いただいた命は無駄にしない」がモットーで、出来るだけ食べ残しはしない。
お魚全般も以前は食べなかったハラワタ、出来れば骨までありがたくいただいている。
というかそれらは日本酒に合うので、「お酒が進んでどうしてくれよう」と新たな悩みも出ている