井の中の蛙、カイラス山巡礼に挑む!

夢のカイラス巡礼を終え、登山を再開しました。山岳信仰の延長上に四国遍路、カイラス山巡礼があり、原点の登山に戻ります。

トレッキング・10日目・ムクチナート(3,760m)→カグベニ(2,800m)

2010-01-03 19:16:30 | アンナプルナ・サーキット
昨夜は宿の部屋も暖かくよく眠ることが出来た。
やはり標高が下がってくると大分暖かく感じる。

朝日に輝くダウラギリの写真を撮ろうと思い宿の屋上へ上がる。
宿は谷にあるので陽が差してくるには大分間がある。
ダウラギリの山頂に陽が差し、ダウラギリヒマールの山々が茜色に輝くが回りが明るすぎるのであまりいい写真にはならない。
       
        朝日に輝くダウラギリ

写真を何枚か写したが思うような写真が撮れないので諦める。
今日も天気は良さそうだ。

 さて、ここまで一緒に歩いてきたOくんとは今日でお別れだ。
Oくんは私よりトレッキングの日程が少ないので、ここから先の行程が私より早くポカラへ戻るようになっている。

朝食後、先に出発するOくんを見送くる。
10日ほど一緒に行動してきたOくんなので、ちょっと寂しい気持ちになる。

8:30分、私達もムクチナートの宿を出発する。
宿の前をベールを被った男女を先頭に20人ほどが2列になって歩いてくる。
よく見ると結婚式のパレードのようだ。

ビビさんの話だと、オーストラリアから来ている人が一番奥にあるヒンデゥー教の寺院で結婚するのだという。
今日は、年に数日ある結婚するにはいい日の中でも一番いい日だという。
だから、ここムクチナートの寺院で結婚式を挙げるのでないかと話してくれる。

ベールを被った2人を回りの人達が囃し立てている。
このパレードが町のメーンストリートを登って行く。
わざわざこんなところまで来て結婚式を挙げる外国人がいるのかと思うと、私の娘も結婚間近なのを思い出し、ちょっとウルウルとしてしまった。

今日の行程は約千メートルほどの下り道となる。
トロン・コーラという川に沿って下流を目指す。
この川がカリ・ガンダキ・ナディという川に合流するところにカグベニの町がある。

ムクチナートまで車で入れるようになって降り、その車道を歩く。
しかし、この車道はパサパサの細かい砂状の土が溜まっており、車が走ってくるとものすごい土煙るが上がる。
息が出来ないほどの土煙だ。
こんな道がトレッキングルートとなるなら歩く人がいなくなってしまうと思うほどだ。

川下の方からパタパタという爆音が聞こえてくる。
ヘリコプターが飛んできた。
私達の上空を一回りして左手の広場に着陸しようとしている。
      
      ここまでヘリが飛んでくるということは、もし怪我などした場合に運んでもらえるのかなどとよけいなことを考えてしまった。
その場合には、AIUの保険が使えるかも?
単調な道を歩いているとよけいなことを考えてしまいます。

陽が当たってくると暑くなってきたのでフリースを脱ぐために一息入れます。
ビビさんは他のパーティーのガイドと話しながら先を歩いているので、私一人でゆっくり休む。

標高が下がるたびに暖かくなってくるような気がして心も軽くなってきます。
ズーッと遠くに見える川に木が生えているようです。
そこがカグベニだと教えられ、右手に進むとムスタンだといわれる。

カグベニの町が間近になってくる。
      
      木が生えているところは果樹園になっておりリンゴが植えられている。
この辺りは日本のNGOの援助の基、リンゴ栽培技術が取り入れられてリンゴが実るようになったという。
カグベニからジグザグに車道が延びている。
その車道をショートカットするように急な道が付けられ、それをドンドン下っていく。

 町に近くなったところで一息ついてよく見ると城郭のようなものが見える。
         
    
    カグベニはムスタン王国の入り口にある町であり、この町の右手に進んでいくとチベットで行くことが出来る。
そして左に進むとジョムソンを経由してポカラへ行くことが出来る。
むかしからの交易路であり中国とインドを結ぶ道があり、ネパールではジョムソン街道と呼ばれている。
その中継点となる町の一つがカグベニなのです。
     

  ムスタンにはいるには特別な許可が必要です。
ガイドを伴わないとダメなだけでなく、グループ単位でなければ入域出来ず、しかも入域料が1人当たり65ドルとべらぼうに高いのです。
それだけ貴重なものがあるということでしょうか?

10:40分、カグベニの宿へ着きます。
宿は町外れにあり、窓の外にカリ・ガンダキの広い河原が見えています。
部屋は1階の一番奥にあり、南向きの窓からサンサンと日が入ってきます。
シャワーとトイレ付きの部屋です。
昼食は12時に食べることにしてまずは昼寝を楽しむことにします。
陽の当たる窓際のベットで寝ると寝袋を掛けているだけで暖かくなり、下着姿でくつろいで寝ます。

12時になったので食堂へ行くと大きな食堂の片隅に白人の老女が一人静かに本を読んでいます。
私は反対側のテーブルに腰掛け昼食を注文して地図を見たり日記を書いて過ごします。食堂にも日差しがあり背に受けて昼食を食べると暑くなってきてフリースを脱いでしまいます。
標高が下がった分だけ暖かくなったことが実感させられます。

昼食後、町を散策すると用水路があり、その両側に木が植えられています。
     
     これを見ていると、回りの荒涼とした風景とは違い、水があるから緑がある。
水は生命の源という言葉がしみじみ実感させられます。


 部屋の外で話し声が聞こえる。
その声が日本度で話している。
どうやら日本人のグループがこの宿の泊まるようだ。

食堂へ行くと日本人が入ってくる。
男性1人に女性が2人のグループ。
それに日本語の話せるガイドがついている。

挨拶をして話を聞くとK夫妻と友達のSさん、風の旅行社を使ってトレッキングに来たようだ。

ラルジュンにある日本人が経営している日本人向けのホテルに泊まり、ここから、マルハ、カグベニ、ムクチナートまで歩き、車でジョンソンへ戻り飛行機でポカラへ行くのだと話してくれる。

Kさんはトロン・パス越えに興味があり、いつか歩きたいといっていろいろと聞いてくる。
その他に四国遍路にも興味があるらしい。
Sさんはカイラス山にいってみたいというので、私のブログを見てくださいと話しておく。

K夫妻達が使っている「風の旅行社」とはカトマンズにある有名なガイド会社で
日本人が経営している。
日本語が堪能なガイドさんを沢山抱えていると聞いている。

今回ガイドしている人も日本が上手だ。
個人的にもガイドをするというので名刺をいただく。

こんな縁を大事にすることが次のトレッキングに繋がると思います。


 夕食を食べに食堂へ行くと、ムクチナートで結婚式をしていた一行がパーティーをやっている。
正面中央の席に新郎と新婦が座っています。
新婦は、35~36歳くらい、キャリアウーマンといった風情で新郎よりは年上に見える。
新郎は年下で30歳くらい、体型がちょっと小太りで頼りない感じがする。
完全な姉さん女房といったところか?
(よけいなお世話ですね!)

新郎新婦の両親、それに友達、ガイドなど約20人弱でパーティーをしている。

私の娘も今回トレッキングに出掛けて来る前に結婚したので、このカップルのことが妙に気になってついつい見てしまう。

ちょっとおぼっちゃまで気弱な新郎に、「がんばれ!」と心の中で声を掛ける。


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     今日の行動
      8:30分 ムクチナートの宿を出発
     10:40分 カグベニの宿着


   

トレッキング・9日目・ハイキャンプ→トロン・パス(5,416m)→ムクチナート(3,760m)

2010-01-01 20:49:33 | アンナプルナ・サーキット
いよいよ、今日は今回のトレッキングの目標点となるトロン・パス越えとなる。

朝4時半出発することになっているので、3時半に寝袋を出てパッキングを始める。
3時過ぎに外へ出ると直ぐ横にある岩壁の上にオリオン座が煌々と輝いている。
どうやら天気は良さそうだが、寒い!

歩く度に足元の雪がキュッ!キュッ!と鳴る。
雪がこの音を出すのはマイナス5度以下の時だと以前聞いたことがある。
風がないので体感ではそれほど寒いとは感じないが、吐く息は白く、空気が薄いせいか足の疲れが回復していないのか足取りが重い。

4時頃に食堂へ入るが、他のお客さんの姿は見えない。
ヌードルスープを食べて身支度を整える。
外は寒いので、ダウンのジャケットを着てその上にゴアの雨具を重ね着する。
もちろんズボンの下には股引を穿く。

4:35分、ハイキャンプを出発する。
ビビさん、私、Oくん、ハボンさんの順で歩く。
ヘッドライトに照らし出される登山道には所々雪が残っている。
その雪の上を歩くとキュッ!キュッ!と鳴る靴音が寒空に響いていく。

ビビさんが「昨夜のガイド部屋は人が一杯でよく眠れなかった。」とこぼしている。
でも、足取りはしっかりしている。

寒いので休憩をほとんど取らずに歩く。
1時間を超えると足の動きが重くなるので、200まで数を数え、数え終わったところで15回ほど深呼吸をしてまた歩く。
これを繰り返しているとビビさんが先行して歩いているので、私が遅れ、Oくんとハボンさんが一緒に休んでくれる。

3人が一緒になって歩いていくとだんだん回りが明るくなってくる。
6時を過ぎるとヘッドランプ無しでも歩けるようになってきたので、ランプを消す。
下の方を見ると次から次に歩いてくる人達のヘッドランプに光が列になって見えている。

山の向こうが明るくなってくる。
そろそろトロンパスではないかと思い歩いていると、小高い丘にタルチョンが幾重にも重なってはためいているのが見えてきた。
トロンパスだ。

7:00分、まだ陽の当たらないトロンパスにようやく到着する。
       
      トロンパス(5,416m)、今回のトレッキング最高到達点。

トロンパスに上がると正面から強い風が吹いてくる。
その風が冷たい!
ドンドン身体の熱が奪われていく。

トロンパスにある茶店の小屋に避難しようとするが、小屋は鍵が掛かっていて入ることが出来ない。
仕方がないので小屋に風下に身体を寄せて風に当たらないようにする。

汗をかいた身体に少し風が当たるだけでドンドン冷えていくので体が震えだす。
やっと、トロンパスに陽が差してくる。
タルチョンが重なるトロンパスの標識にも陽が当たる。

       
     登ってくる人がドンドン増えてくる。

すっかり陽が当たるようになったトロンパスで記念写真を写しあう。
       

 陽が当たるようになったが風も強くなってくる。
小屋の陰で風を避けているとハイキャンプの方からザックを持たない人がトコトコと歩いてくる。
この人が小屋の鍵を開けて中へ入っていく。
どうやら小屋番のようだ。

さっそく小屋の中へ入ったが、小屋の中は風が当たらないだけでここも寒い。
小屋番がストーブに火を付けてお湯を沸かす。
そのお湯で作ったブラックティーを飲むが、この程度では体が温まってこない。
小屋の中に煙るが充満してノドが痛くなってくる。

外は寒いし小屋の中は煙い。
どこにも居場所がなくなってきたので、峠を下りることにする。

今回のトレッキングにおいて最大の目標であったトロンパスに来たというのに
寒さのためバタバタして何の感慨もなく峠を下ることになってしまった。
峠の向こうはまだ陽が差していない。
その道を下り出すが、向こうにはダウラギリヒマールが白く輝いて私達を待ってくれている。
      
     日陰の雪道を下る。
ほんの少し下っただけで風は止んでしまう。
そうすると身体がドンドン暖かくなってくる。
でも、油断は出来ない。

日陰の雪道の所々が凍っている。
その部分の見極めが日陰なのでうまくできない。
凍った部分に足を取られると滑って転んでしまう。

注意しながら下っていく。
しかし、急な下りが際限なく続いている。
づーと下の方まで見えているのでどこまで下ればいいのかと見ているとウンザリしてしまう。

4,700mまで下って一休みする。
この辺りまで下ると雪がなくなってザラザラの登山道となっている。
このザラザラ道も気を付けて下らないと足を取られてしまう。

ビビさんは先にドンドン下っていっているので、私はゆっくり下ることにする。

9:40分、4,195m地点にある宿「ポカラ」で一休みする。
ムクチナートはここから1時間くらいだといわれ、ちょっとホッとする。
       
      ダウラギリヒマールの山々がドンドン近くなってくる。

ムクチナートの町が左手の尾根越しに見えてくる。
その向こうに三角錐を空に突き上げるような大きな山が見えている。
ビビさんが、ダウラギリだという。
      
      手前に広がる町がムクチナート

     

     
     今回のトレッキングで初めて目にする8千メートル級の山、ダウラギリ8,167m、世界第7位の山。

 ダウラギリというのはサンスクリット語で白い山という意味らしい。
その名の通り白い山が空に突き出ている。

10:55分、やっとムクチナートに着く。
宿に入ったが昼食を食べる気がしない。
それより早く身体を横にしたかった。

ビビさんに昼食は13:00からといって頼み、寝袋を広げてベットで横になる。
ウトウトしているだけで、身体が休まる。

小1時間ほどウトウトしている寝ていると部屋の外で日本語が聞こえてくる。
男性の声がしている。
日本人数人がこの宿で昼食を取るようだ。

ベットから起きて部屋を出ると60~70代の男性3人が昼食を取っている。
挨拶をして話を聞くと来るまでムクチナートまで来たという。
ここにある、ヒンデゥー教の寺院を見学しに来たという。

今日中にジョムソンまで下がり、明日は飛行機でポカラへ行くという。
歩いている人には申し訳ない行程だ。などと話してくれる。

昼食を食べてから宿の前にある通りに店を出している露天を見に行く。
ムクチナートは一番奥にあるヒンデゥー教の寺院の他にチベット仏教の寺院もあり、聖地として大事にされているという。

5~6月には聖地巡礼として沢山のインド人などがこの地を訪れるようだ。
今は巡礼の時期ではないので、町の中も閑散としている。

宿の前の道はカクベニ→トロンパスに繋がる1本道のメーンストリート。
両側に露天が出ており、仏具を中心に首飾り、ストール、帽子、アンモナイトまで売っている。

宿の直ぐ前の露天に横に機織り機があり、おばさんがコトリコトリと動かしている。
      
この機織り機があちらこちらの露天横にあり、町の女性が店番をしながら動かしている。

午後になるとトロンパス方面から歩いてくる人が多くなる。
トロン・フェデェから歩き出してトロン・パスを越えた人達なのだろう。
疲労の色が濃い顔をしている。

少し休んで体の調子が良くなってきたので、洗濯をしてしまう。
トロンパスを越えてここまで下ってしまうと太陽に光も強く感じる。
洗濯物も乾きやすく感じ、シャツや靴下などを洗って外に干す。


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    今日の行動
     4:35分 ハイキャンプ発
     7:00分 トロン・パス着
     8:50分 4,700m地点で休憩
     9:40分 ポカラで休憩(4,195m)
    10:55分 ムクチナート着


 今回のトレッキングは、トロン・パスを越えるのが大きな目標だった。
トロン・パスは、カイラス山のドルマ・ラ(5,600m)より低いが、ネパールのトレッキングでは高い標高まで上がらなければならないコースとなっている。

エベレストベースキャンプは5,200メートルほどだから、それより高いところまで登ったことになる。

3年半前にドルマ・ラを越えたせいなのか、今回のトレッキングではまったく高度障害らしい症状は出てこなかった。
足の動きは悪かったが、これは連日歩いていることの疲れだ大きな原因だと思う。
息苦しさなどは全くなかったので、普段、山へ登ったりジョギングしている効果が出ているかも知れない。

アンナプルナヒマールで8千メートルを超えているのはアンナプルナⅠ峰だけだ。後のⅡ、Ⅲ、Ⅳ峰は、いずれも8千メートルには達していない。
今まで歩いて来たコースではアンナプルナⅠ峰は見えていない。
だから、ムクチナートに来て見えたダウラギリが私が初めてみた8千メートを超える山ということになる。