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1940年の『1812年』

2012年02月02日 23時05分49秒 | チャイコフスキー
先日、ヒトラーがドイツで政権を掌握し、第二次大戦に至るまでのビデオを見る機会がありました。けっこうたくさんの人が見ていたのですが、特に、ヒトラーの演説シーンやナチスの党大会の様子などでは、みなさん真剣な顔で見ておられたのが至極印象に残りました。彼の強烈な個性やカリスマ性には、惹きつけられるものがあるんでしょうねえ。圧倒的な支持をしていた民衆は、こののちヒトラーにえらいめにあわされる運命なんだと思うと、少々複雑でした。混乱の時代は、強力な指導者を求める。現在の日本も、これを歴史の教訓にしなければいけませんねえ。

それはさておき、ヒトラーからなぜか、チャイコフスキーの大序曲「1812年」を聴くことになりました。久しぶりです。中学生のころ、カラヤンの指揮のレコードを買ってよく聴きました。このど派手でおもしろい曲は、けっこう気に入って聴いていました。レコードがまだ家にあります。この演奏は、冒頭のギリシャ正教の聖歌をドン・コサック合唱団が歌っているのがなかなかいいです。その後CDでは買う機会がなく、長く聴いていませんでした。最近買ったロリン・マゼールのBOXに収められていたので聴きましたが、この演奏での最後の大砲の爆音の凄さには驚きました。この爆音は一聴の価値がありますね。そして、この曲のいい演奏としてはどんなものがあったかなあ、と思っていると、ふと、ウィレム・メンゲルベルクの演奏がたしか有名だったよなあ、と思い出しました。以前にも取り上げた10枚組のメンゲルベルクのBOXに収められていした。

メンゲルベルクの「1812年」はACOとの録音です。1940年4月9日のスタジオ録音。第二次大戦が欧州で始まって約半年後。この日ドイツ軍がデンマーク・ノルウェーに侵攻し、デンマークが降伏。オランダにも5月10日に進攻開始、オランダは15日にドイツに降伏するという、とんでもない時期のライブです。「1812年」は、ナポレオンがロシアに進攻、冬将軍の前に敗退したという、ナポレオンのロシア遠征を描いた曲ですが、のちに同じようにヒトラーもソ連遠征に失敗することになりますが、1940年のこの演奏とヒトラーとは特に関連はないでしょうね。

さて、メンゲルベルクの演奏です。正直言ってこの曲、どんな演奏でも同じやろ、と多寡をくくっていたのですが、このメンゲルベルクグの演奏は、まったくもって凄い。他の演奏とは、まったく比較にならないものですよ。今から70年前の録音ですが、スタジオでのものということもあって、そんなに音質が悪くはありません。全体にゆったりめ。特に前半はその傾向。後半以降は場面に応じてテンポが動き、効果を挙げています。やはりロシアの音楽は管楽器が鳴り響き、弦も強靱な表現に終始するものいい。この演奏も、力一杯がこもり、迫力満点の演奏は尋常ではありませんね。複数のメロディが絡み合ってスケールの大きな曲になっていく様は、聴いていて爽快であります。この曲、だいたいは、気持ちのこもった演奏というより、派手な管弦楽の妙技が展開される演奏が多いのですが、この演奏はその双方が満喫できます。

最初のギリシャ正教聖歌は、合唱で歌われる方がいいなとも思いますが、この演奏では、神の前で立ち尽くす、といった様子が聴かれます。続いて登場するオーボエによる主題では次第に壮絶になっていく表情が、そしてロシア軍の行軍でも、沈痛な面持ちが聴き取れる。このあたりは暗い表現が続きます。そして、ラ・マルセイエーズが登場あたりから次第に迫力に満ちたオケの演奏が展開される。ロシアとの戦闘の場面では、ますます迫力と盛り上がりが一杯になります。そして、ロシアの勝利の様子があちこちで聴かれ初め、テンポも快活になっていく。大砲がぶっ放され、ギリシャ正教聖歌が凱歌のように高らかに歌われ、勝利を知らせるような鐘が鳴り響きます。ロシア兵の活躍の背後でロシア国歌が歌われ、ロシアはナポレオンを打ち破るのでありました。これ以上の迫力に満ちた演奏は、他にもあると思いますが、この演奏ほど気持ちのこもった熱い演奏はないかな、と思います。

この曲の最後の場面で、ロシア国歌が流れるのが、なぜかわからなかったのです。それでブラバンをやっている職場の同僚に教えてもらいました。それ以来、なんでこれがわからなかったのか、というくらい明快に理解できました。わかって感動しました(笑)。
(History 205254-303 MAESTRO APPASSIONATO)

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