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アーベントロートの悲愴な「悲愴」

2008年09月02日 00時09分03秒 | チャイコフスキー
やはり、9月になったら、暑くなりましたね。まあ、8月の終わりが涼しすぎたんでしょうがね。こんな年ってけっこうありますね。私は毎日田舎の田園地帯を通って通勤していますが、周囲の田圃には稲が実りつつあります。早いものであります。
HMVのサイトなどを見ていると、宇野功芳氏選曲による「アーベントロートの芸術」という計5枚のシリーズが発売されるとか。その中には、ブラームスの1・3番もありました。少し前に、3番のCDを中古やさんで買ったのを後悔した次第です。その3番のオビには「幻の指揮者蘇る 凄まじい情熱 ドイツ的ロマン性」なるコピーがありました。この手のコピーにはついつい引き込まれてしまいますね。よくよく考えてみれば、この「ドイツ的ロマン性」って一体何なんでしょうかねえ。どんなんをいうのでしょうか。不可解あります。
それはさておき、今回はそのドイツ的ロマン性を体現する?アーベントロートであります。彼の遺産として最も有名なのはチャイコフスキーの交響曲第6番ロ短調「悲愴」でありましょう。私的には5番は、何回も取り上げたのに「悲愴」はこれで二回目…。昔はこの曲好きだったんですがね。
アーベントロートとライピツィヒ放送交響楽団の演奏、1952年1月28日のラジオ放送用録音です。モノラルですが、音がかなり鮮明です。問題ない音質かと思います。そして、なんといっても演奏が凄まじい。現代にも迫力ある音づくりの指揮者はいますが、それが空威張りのように感じてしまう、そんな魂が鼓舞されるような熱い演奏です。第1楽章から、思いの外のテンポの移り変わりが耳を引きます。第一主題がまず遅くなる。そして、第二主題の出てくる直前まで次第に遅くなって、堰を切ったような第二主題になだれ込みます。そして、この曲の最も美しい部分が熱く、また叙情的に語られます。このあたりの演出は見事ですね。そして展開部の爆発に至っても、それぞれの楽器の音がきれいな上で堅実でかつ迫力満点ですね。このあたり、すごくいい。そして、第2楽章、中間部は暗いです。陰鬱になったメロディがこれでもかと繰り返されます。この楽章が明るく感じるものもありますが、ここではそうは思わず、テンポが速まって第3楽章スケルツォへ、この楽章が多くの人がこの演奏の白眉、と言ってます。トロンボーンとティンパニが凄みをきかせ、それに活気のある諸楽器が応じて、異様な迫力が繰り広げられ、そしてテンポの急降下。それにトロンボーン・ティンパニの乱打ち?が加わり、効果満点。すごいすごい。そして、怒濤のように第4楽章へ。アーベントロートの心情をさらけ出すような、力を込めたメロディは、あくまでねちっこく、いつ終わるともなく。悲しい、まさに悲愴でありますねえ。全曲がおわると深いため息ひとつ。でもよかった。ほんとよかったと。
そんなわけで、アーベントロート、いいです。この指揮者の演奏、もっと聴かなければなりませんね。
(ドイツシャルプラッテン 27TC-240 1989年)

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