NHKスペシャル『ロボット革命 人間を超えられるか』
初回放送=3月17日(日)午後9時~9時49分
まるで人間のように判断をし、作業をこなすことができるロボット、ヒューマノイド。
ホンダの「ASIMO(アシモ)」に代表されるヒューマノイドの開発は、これまで日本の独壇場の感がありました。しかし、2年前の東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけにして、世界の主要な国ではより実用的なヒューマノイドの開発競争が始まり、その技術は飛躍的に進化してきています。番組は、内外で進むヒューマノイド型ロボット開発の最前線を追っていきます。
「人の役に立つロボット」を目標に、1986年から開発が始まった、ホンダの二足歩行ロボット「アシモ」。その能力は長足の進歩を遂げていました。
人工知能による「知的能力の進化」がはかられてきている「アシモ」。人の顔を識別したり、複数の人から発せられたそれぞれの言葉を理解し、判断することができます。また、指先につけられたセンサーにより物の硬さを感じ取り、握る力を加減することも可能です。
身体能力もかなりの進歩ぶり。走っているときには上半身でバランスをとり、両足が離れている瞬間でも転倒せずに走り続けることができるのです。「アシモ」は、登場から間もない頃のアイドル的存在を超え、人間に近い身体能力と知的能力を着実に備えてきていました。
2年前の原発事故後、「アシモ」を事故現場に投入するよう、たくさんの要望がホンダに寄せられたといいます。しかし、「アシモ」を事故現場に投入することはできませんでした。「アシモ」は平らな場所でなら行動可能なのですが、足場が悪い場所での行動はまだまだ無理だったのです。
なんとか事故現場でも使えるようなロボットを開発できないか•••。東京電力の依頼を受ける形で、ホンダは急ピッチで開発に取りかかります。
開発の結果生み出されたのが「作業アームロボット」。「アシモ」の足部分の技術を応用して作られたこのロボットは、強い力でプラント内のバルブを開閉することができるというもの。動作テストの結果も上々でした。しかし、東電側の方針転換もあり、バルブを開閉するためのアームの先はカメラに変更され、プラント内部の状況を探るのみ、という任務を与えられることに。
一方、アメリカの国防総省でも、原発事故を受けて災害用ヒューマノイド開発への動きを加速させていました。
国防総省の依頼を受けてヒューマノイド開発にあたる企業では、「アトラス」というヒューマノイドを生み出しました。これまで培った軍事用ロボットの技術を投入した「アトラス」は、油圧駆動による強力なパワーと、柔軟な関節を持つ高性能なもの。
国防総省は、「ロボティクスチャレンジ」なるヒューマノイド開発コンペを企画。これには世界中から100を超える企業や研究機関が名乗りを上げています。
その中には、軍事用予算を使った研究はできないから、と東京大学を辞めてベンチャー企業を立ち上げた研究者たちも。また、「アシモ」型のヒューマノイドを開発中の韓国の研究機関は、技術を公開した上で人工知能の開発をアメリカに依頼する、という形で開発を加速させ、「ロボティクスチャレンジ」を狙っています。
なんとか「作業アームロボット」の実用化に目処をつけたホンダ。その一方で、「アシモ」をさらに進歩させるための研究開発も着実に進めていました。
「求められているものを、求められているときに最速で出す」という考え方のもと、事故現場に対応できる形に作られている、新型「アシモ」の試作機。段差や溝を乗り越えることができるほか、横からの力を加えられても倒れないようにバランスをとることもできます。そして、赤外線センサーで暗闇での活動も可能に。
開発担当者はこのように語りました。
「日本で起きた災害なんで、夢を語っちゃいけない。そうしないと、人も救えないし役にも立たない」
番組を観る前は、ワクワクする夢のあるような内容なのかな、となんとなく考えていたのですが、観終わった後に残ったのは重い感慨でありました。
ヒューマノイド開発を加速させたのが、大震災とそれに続けて起こった原発事故という不幸な事態を受けてのことだったこと。そして、ヒューマノイドの進歩により、これまで人間がやってきた仕事が徐々に、ロボットに置き換えられつつあるという現実。それらが、観ていて重い感慨を抱かせました。
社会や人間の側が、果たしてロボット技術の進歩がもたらす変化の速度に追いついていけるのか。その未来像はまだまだよく見えないところがあります。しかし、その未来は意外と近いところにあるのかもしれません。そのとき、人間としてどうしていけばいいのか。
ヒューマノイド技術の進歩による「ロボット革命」は、人間とはどうあるべきなのか、人間としてどのように生きなければならないかを、否応なしに問いかけてくるのではないか、と思いました。
初回放送=3月17日(日)午後9時~9時49分
まるで人間のように判断をし、作業をこなすことができるロボット、ヒューマノイド。
ホンダの「ASIMO(アシモ)」に代表されるヒューマノイドの開発は、これまで日本の独壇場の感がありました。しかし、2年前の東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけにして、世界の主要な国ではより実用的なヒューマノイドの開発競争が始まり、その技術は飛躍的に進化してきています。番組は、内外で進むヒューマノイド型ロボット開発の最前線を追っていきます。
「人の役に立つロボット」を目標に、1986年から開発が始まった、ホンダの二足歩行ロボット「アシモ」。その能力は長足の進歩を遂げていました。
人工知能による「知的能力の進化」がはかられてきている「アシモ」。人の顔を識別したり、複数の人から発せられたそれぞれの言葉を理解し、判断することができます。また、指先につけられたセンサーにより物の硬さを感じ取り、握る力を加減することも可能です。
身体能力もかなりの進歩ぶり。走っているときには上半身でバランスをとり、両足が離れている瞬間でも転倒せずに走り続けることができるのです。「アシモ」は、登場から間もない頃のアイドル的存在を超え、人間に近い身体能力と知的能力を着実に備えてきていました。
2年前の原発事故後、「アシモ」を事故現場に投入するよう、たくさんの要望がホンダに寄せられたといいます。しかし、「アシモ」を事故現場に投入することはできませんでした。「アシモ」は平らな場所でなら行動可能なのですが、足場が悪い場所での行動はまだまだ無理だったのです。
なんとか事故現場でも使えるようなロボットを開発できないか•••。東京電力の依頼を受ける形で、ホンダは急ピッチで開発に取りかかります。
開発の結果生み出されたのが「作業アームロボット」。「アシモ」の足部分の技術を応用して作られたこのロボットは、強い力でプラント内のバルブを開閉することができるというもの。動作テストの結果も上々でした。しかし、東電側の方針転換もあり、バルブを開閉するためのアームの先はカメラに変更され、プラント内部の状況を探るのみ、という任務を与えられることに。
一方、アメリカの国防総省でも、原発事故を受けて災害用ヒューマノイド開発への動きを加速させていました。
国防総省の依頼を受けてヒューマノイド開発にあたる企業では、「アトラス」というヒューマノイドを生み出しました。これまで培った軍事用ロボットの技術を投入した「アトラス」は、油圧駆動による強力なパワーと、柔軟な関節を持つ高性能なもの。
国防総省は、「ロボティクスチャレンジ」なるヒューマノイド開発コンペを企画。これには世界中から100を超える企業や研究機関が名乗りを上げています。
その中には、軍事用予算を使った研究はできないから、と東京大学を辞めてベンチャー企業を立ち上げた研究者たちも。また、「アシモ」型のヒューマノイドを開発中の韓国の研究機関は、技術を公開した上で人工知能の開発をアメリカに依頼する、という形で開発を加速させ、「ロボティクスチャレンジ」を狙っています。
なんとか「作業アームロボット」の実用化に目処をつけたホンダ。その一方で、「アシモ」をさらに進歩させるための研究開発も着実に進めていました。
「求められているものを、求められているときに最速で出す」という考え方のもと、事故現場に対応できる形に作られている、新型「アシモ」の試作機。段差や溝を乗り越えることができるほか、横からの力を加えられても倒れないようにバランスをとることもできます。そして、赤外線センサーで暗闇での活動も可能に。
開発担当者はこのように語りました。
「日本で起きた災害なんで、夢を語っちゃいけない。そうしないと、人も救えないし役にも立たない」
番組を観る前は、ワクワクする夢のあるような内容なのかな、となんとなく考えていたのですが、観終わった後に残ったのは重い感慨でありました。
ヒューマノイド開発を加速させたのが、大震災とそれに続けて起こった原発事故という不幸な事態を受けてのことだったこと。そして、ヒューマノイドの進歩により、これまで人間がやってきた仕事が徐々に、ロボットに置き換えられつつあるという現実。それらが、観ていて重い感慨を抱かせました。
社会や人間の側が、果たしてロボット技術の進歩がもたらす変化の速度に追いついていけるのか。その未来像はまだまだよく見えないところがあります。しかし、その未来は意外と近いところにあるのかもしれません。そのとき、人間としてどうしていけばいいのか。
ヒューマノイド技術の進歩による「ロボット革命」は、人間とはどうあるべきなのか、人間としてどのように生きなければならないかを、否応なしに問いかけてくるのではないか、と思いました。