来月、6月に刊行される予定の文庫新刊から、個人的に気になる書目を8冊ピックアップしたいと思います。
これを記している5月14日、東日本では夏のごとき暑さのところが多かったようですね。春というのはあっという間に過ぎていき、これから徐々に夏本番に向けて暑さを増していくことでしょう。
今年の夏がどうなるのかは、まだよくわかりませんが、なるべく猛暑日は少ない方向でお願いしたいものだなあ、と汗っかきとしては思うのでありますが•••。
ともあれ、今回もノンフィクションのみの偏りまくったチョイスではありますが、なにか皆さまの関心に引っかかるような本がありましたら幸いであります。
刊行データについては、書店向けに取次会社が発行している情報誌『日販速報』の5月19日号の付録である、6月刊行の文庫新刊ラインナップ一覧などに準拠いたしました。発売日は首都圏基準ですので、地方では1~2日程度のタイムラグがあります。また、書名や発売予定は変更になることもあります。
『評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」』 (横田増生著、朝日文庫、6日発売)
没後10年以上を経て、今もなお色褪せることのない消しゴム版画とコラムを生み出し続けたナンシー関。その批評眼と非凡なセンスはいかにして育まれたのか。いとうせいこう、リリー・フランキー、みうらじゅんなど、生前のナンシーと親交のあった人びとの証言を豊富に折り込みつつ紐解かれる、希代のコラムニストの生涯。
単行本で読みましたが、本書で初めて知ったエピソードも多くあり、胸に迫るところがありました。文庫化により、あらためてナンシーさんの価値が広く見直されますように。
『信仰が人を殺すとき』上・下 (ジョン・クラカワー著、佐宗鈴夫訳、河出文庫、6日発売)
なぜ、熱心な宗教者が人を殺すことになったのか?山岳ノンフィクションの名著『空へ』などで知られる著者が、理性と信仰、原理主義と人間の倫理の問題など、宗教の深い闇に迫った渾身のノンフィクション。
一つの主義への行き過ぎた傾倒がもたらす弊害や悲劇は、宗教に限らずあり得ることです。そのような観点からも、この本には深い関心がありますね。ぜひ読んでみようと思っております。
『雨のことば辞典』 (倉嶋厚監修、講談社学術文庫、10日発売)
四季のうつろいとともに千変万化する日本の雨は、さまざまな文学や詩歌でも描かれてきた。それら「雨」にまつわることばを、季語から気象用語、各地の方言まで約1200語集めた辞典。
これから梅雨の時期を迎えますが、うっとうしく感じられる雨をこの辞典でちょっと見直し、味わってみるというのもいいかも、ですね。
『ヒゲのウヰスキー誕生す』 (川又一英著、新潮文庫、27日発売)
サントリーの基礎を築き、ニッカウヰスキーを起こした国産ウイスキーの父、竹鶴政孝。洋酒を通して近代日本の一翼を担った男の、苦難と栄光の半世紀を描く。
日本のウイスキーは、今や世界的にも品質の高さが認められている存在となっていますが、その礎を築いた人物の生きざまには興味がそそられるものがありますね。
『法医学昆虫学者の事件簿』 (マディソン・リー・ゴフ著、垂水雄二訳、草思社文庫、5日発売)
誰よりも早く死体を発見し、卵を産みつける、殺人事件の「第1の発見者」、昆虫。それを丹念に集めて分析することで、犯行の時期を的確に推定していくのが「法医昆虫学」。普通の昆虫学者から法医昆虫学者となった著者が、数々の実例とともにその捜査法を紹介した一冊。
死体につく虫を捜査に活用する、ということは話には聞いたことがあるのですが、その実態は全く知りませんでした。これはなかなか興味を惹かれるものあり、です。
『知のモラル 18世紀イギリスの文化と社会』 (近藤和彦著、ちくま学芸文庫、10日発売)
「200年前のイギリスに生きた、ふつうの男と女。その暮らしともめごと、希望と連帯をたんねんに読み解く」(元本のオビより)。イギリスの歴史で一番興味深い時期を、民衆文化と政治文化の双方から描き出すとのことで、ちょっと注目であります。
『宮脇俊三 鉄道紀行セレクション 全一巻』 (宮脇俊三著、小池滋編、ちくま文庫、10日発売)
国鉄全線完乗や、最長片道切符の旅などの鉄道紀行ノンフィクションで、鉄道ファンにとどまらない幅広い読者を引きつけていた宮脇俊三さん。その数多くの鉄道紀行から厳選した作品をまとめた一冊です。思い起こせば、わたくしが鉄道旅行を好きになるきっかけをつくってくれたのも、宮脇さんの著作でありました。なので、これは保存版として買っておこうかなあ、と。
『ファスト&スロー』上・下 (ダニエル・カーネマン著、村井章子訳、ハヤカワ文庫NF、20日発売)
6月刊行分で一番買いたい本が、これであります。
私たちの「意思」はどのように決まるのか?そして「直感」はどれほど正しいのか?心理学者にしてノーベル経済学賞を受賞した著者が、直感的で感情的な「早い(ファスト)思考」と、意識的、論理的な「遅い(スロー)思考」というモデルをもとにして意思決定の仕組みを解き明かし、私たちの判断がいかに錯覚の影響を受けているのかを浮き彫りにしていく•••。
以前、オススメ本紹介サイト「HONZ」のレビューで知って読んでみたかったのですが、上・下巻で値が張っていたこともあり、なかなか買えずにおりました。なので、この度の文庫化はまことに嬉しい限りであります。
これを記している5月14日、東日本では夏のごとき暑さのところが多かったようですね。春というのはあっという間に過ぎていき、これから徐々に夏本番に向けて暑さを増していくことでしょう。
今年の夏がどうなるのかは、まだよくわかりませんが、なるべく猛暑日は少ない方向でお願いしたいものだなあ、と汗っかきとしては思うのでありますが•••。
ともあれ、今回もノンフィクションのみの偏りまくったチョイスではありますが、なにか皆さまの関心に引っかかるような本がありましたら幸いであります。
刊行データについては、書店向けに取次会社が発行している情報誌『日販速報』の5月19日号の付録である、6月刊行の文庫新刊ラインナップ一覧などに準拠いたしました。発売日は首都圏基準ですので、地方では1~2日程度のタイムラグがあります。また、書名や発売予定は変更になることもあります。
『評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」』 (横田増生著、朝日文庫、6日発売)
没後10年以上を経て、今もなお色褪せることのない消しゴム版画とコラムを生み出し続けたナンシー関。その批評眼と非凡なセンスはいかにして育まれたのか。いとうせいこう、リリー・フランキー、みうらじゅんなど、生前のナンシーと親交のあった人びとの証言を豊富に折り込みつつ紐解かれる、希代のコラムニストの生涯。
単行本で読みましたが、本書で初めて知ったエピソードも多くあり、胸に迫るところがありました。文庫化により、あらためてナンシーさんの価値が広く見直されますように。
『信仰が人を殺すとき』上・下 (ジョン・クラカワー著、佐宗鈴夫訳、河出文庫、6日発売)
なぜ、熱心な宗教者が人を殺すことになったのか?山岳ノンフィクションの名著『空へ』などで知られる著者が、理性と信仰、原理主義と人間の倫理の問題など、宗教の深い闇に迫った渾身のノンフィクション。
一つの主義への行き過ぎた傾倒がもたらす弊害や悲劇は、宗教に限らずあり得ることです。そのような観点からも、この本には深い関心がありますね。ぜひ読んでみようと思っております。
『雨のことば辞典』 (倉嶋厚監修、講談社学術文庫、10日発売)
四季のうつろいとともに千変万化する日本の雨は、さまざまな文学や詩歌でも描かれてきた。それら「雨」にまつわることばを、季語から気象用語、各地の方言まで約1200語集めた辞典。
これから梅雨の時期を迎えますが、うっとうしく感じられる雨をこの辞典でちょっと見直し、味わってみるというのもいいかも、ですね。
『ヒゲのウヰスキー誕生す』 (川又一英著、新潮文庫、27日発売)
サントリーの基礎を築き、ニッカウヰスキーを起こした国産ウイスキーの父、竹鶴政孝。洋酒を通して近代日本の一翼を担った男の、苦難と栄光の半世紀を描く。
日本のウイスキーは、今や世界的にも品質の高さが認められている存在となっていますが、その礎を築いた人物の生きざまには興味がそそられるものがありますね。
『法医学昆虫学者の事件簿』 (マディソン・リー・ゴフ著、垂水雄二訳、草思社文庫、5日発売)
誰よりも早く死体を発見し、卵を産みつける、殺人事件の「第1の発見者」、昆虫。それを丹念に集めて分析することで、犯行の時期を的確に推定していくのが「法医昆虫学」。普通の昆虫学者から法医昆虫学者となった著者が、数々の実例とともにその捜査法を紹介した一冊。
死体につく虫を捜査に活用する、ということは話には聞いたことがあるのですが、その実態は全く知りませんでした。これはなかなか興味を惹かれるものあり、です。
『知のモラル 18世紀イギリスの文化と社会』 (近藤和彦著、ちくま学芸文庫、10日発売)
「200年前のイギリスに生きた、ふつうの男と女。その暮らしともめごと、希望と連帯をたんねんに読み解く」(元本のオビより)。イギリスの歴史で一番興味深い時期を、民衆文化と政治文化の双方から描き出すとのことで、ちょっと注目であります。
『宮脇俊三 鉄道紀行セレクション 全一巻』 (宮脇俊三著、小池滋編、ちくま文庫、10日発売)
国鉄全線完乗や、最長片道切符の旅などの鉄道紀行ノンフィクションで、鉄道ファンにとどまらない幅広い読者を引きつけていた宮脇俊三さん。その数多くの鉄道紀行から厳選した作品をまとめた一冊です。思い起こせば、わたくしが鉄道旅行を好きになるきっかけをつくってくれたのも、宮脇さんの著作でありました。なので、これは保存版として買っておこうかなあ、と。
『ファスト&スロー』上・下 (ダニエル・カーネマン著、村井章子訳、ハヤカワ文庫NF、20日発売)
6月刊行分で一番買いたい本が、これであります。
私たちの「意思」はどのように決まるのか?そして「直感」はどれほど正しいのか?心理学者にしてノーベル経済学賞を受賞した著者が、直感的で感情的な「早い(ファスト)思考」と、意識的、論理的な「遅い(スロー)思考」というモデルをもとにして意思決定の仕組みを解き明かし、私たちの判断がいかに錯覚の影響を受けているのかを浮き彫りにしていく•••。
以前、オススメ本紹介サイト「HONZ」のレビューで知って読んでみたかったのですが、上・下巻で値が張っていたこともあり、なかなか買えずにおりました。なので、この度の文庫化はまことに嬉しい限りであります。