吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

エラリー・クイーン『エジプト十字架の謎』創元推理文庫/2016年7月22日初版発行

2018-05-16 06:16:26 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護
 久しぶりに推理小説を読んだのだった。


※エラリー・クイーン『エジプト十字架の謎』創元推理文庫(新訳版)

 エラリー・クイーンといえば今や堂々たる古典ですが、当時最新の自動車(レーサーモデル)を駆って颯爽と登場する、カッコいい探偵でした。で、改めて読み直すと、設定が浅見光彦ソックリなんですね(いや、こちらの方が先だから、浅見光彦がこの設定を頂戴したワケですね)。

 ニューヨーク市警殺人課のクイーン警視を父親に持つ私立探偵エラリー・クイーン!父親の威光をタテに殺人現場へも入り込み、警察をコキ使う・・・浅見光彦では中盤に正体を明かすシーンがあって、水戸黄門の印籠みたいな効果がありますが、エラリー・クイーンの場合は最初から当然の権利のように使いまくります。

 で、ストーリーでは『エジプトに関するモチーフは大量に出てくるものの、呪いやオカルトとは全く無縁』、浅見光彦もこれを踏襲してますね。


※さまざまな十字架・・・実はエジプト十字架(アンク)はT字形ではないのです。

 国名シリーズの代表作ともいえるこの本は、新大陸アメリカの、んん・・・何というか文明の光に照らされた世界に、旧大陸の血で血を洗う確執が持ち込まれるという・・・いってみればコナン・ドイル作『緋色の研究』の逆ヴァージョンです。

 クリスマスの朝、T字路のTの字形をした道標に首を切られた死体が磔にされる、これが最初の殺人で、同じような死体が次々と発見されていく。モンテネグロから始まる2つの家族の血で血を洗う抗争の結果なのか?Tの字は何を意味するのか?これに怪しげなエジプト太陽神を崇拝する新興宗教やら、人妻の不倫やら、宝石泥棒が絡み、事件はますます混沌の様相に・・・。

 狡猾な犯人は次々を殺人を重ねていきますが、読み進めていくと誰でも犯人になれそうな気がします。

 これでは容疑者が多すぎると悩んでいると、たちまち『読者への挑戦状』です。

 与えられたデータをもとに、厳密なる論理と推理を働かせることによって、あてずっぽうではなく、犯人の正体をきちんと証明することが、現時点ですでに可能だ。

 ああっ!さっぱりワカラン~!(しかし、可能性を全部検証して『いちばんありえそうにない犯人』を予想したところ、何と当たっていた!)

 このトリック、今では結構使い古されている感がありますが、これは『お見事!』・・・私の推理は途中まで当たっていましたが、あてずっぽうで根拠はなく、何といっても〇〇の数が合わない・・・。
 現代では科学捜査の発達とか傷を手当する方法の変化で、もう少しするとこのトリックも分からないヒトが殆どになってしまうのでしょう・・・。


※エラリー・クイーンの愛車『デューシー』ことデューセンバーグ

 謎解きの面白さはもちろんですが、この小説はエンターテイメント性抜群です。磔にされた首無し死体というビジュアルに加えて、怪しげな新興宗教が管理するヌーディストの島まで登場。愛車デューセンバーグを駆り、はたまた飛行機をチャーターして、一足先に列車で逃げた犯人を追い詰めるエラリー・クイーン!ついにはアメリカ大陸を横断する大追跡劇に!(これ、誰か映画化してくれないものですかねー)。

 掛かった経費はどうするのかと思ったら、ぬけぬけと『ぼくは、この事件をもとに本を書きますよ。(中略)掛かった費用は読者の皆さんに払ってもらうことにしましょうよ!』だって。マイった!
 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿