ついに買ってしまいました。クトゥルーです‼️
世間にはここから派生した物語が溢れかえっていますが、これこそが原典です。
やはり原典を正しく知らずして語るのは邪道に違いないということで、これから読み進めて行こうと思います。
7つの短編が収められています。
異次元の色彩
ダンウィッチの怪
クトゥルーの呼び声
ニャルラトホテプ
闇にささやくもの
暗闇の出没者
インスマスの影
今日はその中から第一話《異次元の色彩》を取り上げてみましょう。
それにしても怪奇小説とは誠に難しいものだと思います。
ヒトにとって何が怖いのかを考えてみれば「正体のハッキリしないもの」がイチバン怖いのです。新型コロナウイルスにしても「正体不明の悪疫」である間はとても恐ろしかったですが「新型コロナウイルス」と名前がついて、アルファからオミクロンまで株の分類も進んでくると「何とかして対処しなければ」という気になってくるから不思議です。
わかってしまえば恐怖は半減してしまいます。ヒトを怖がらせようとする怪奇小説は「ハッキリ描写してはならない」という矛盾を内包しているのです。
その意味から言うと「異次元の色彩」は稀有な傑作であろうと私は思います。
何が起こったかの説明は一切ないままに、起こった怪異現象が語られていきます。
奇妙な隕石が飛来したあと、忘れられかけた開拓地に起こる怪奇現象。
隕石は柔らかく、いつまでも熱を発していて、だんだん縮んでいく。あたりの植物は異常な発育をして奇妙な色彩が乱舞する状態になったかと思うと枯れてしまい、広大な砂地が現れます。住人は真っ黒に変色し(生きたまま)おき火のように燻り、身体が崩れて消滅します。隕石とともにやってきた「何か」は一部が宇宙に還り、一部は古井戸の底に潜んでいます(たぶん)。すべては謎のまま、いずれ村ごとダムの底に沈むことが暗示され、物語は終わります。
現代科学の目で物陰を解明するなら「隕石は未知の放射線を発して動物を生きながら焼き尽くし、植物の染色体を異常なものに変えた(質量をエネルギーに変換しているのでだんだん小さくなっていく)」となるのでしょうが、それではSFになってしまい怪奇小説とは言えなくなってしまいます。怪奇小説とは、ことほど難しいものですが、この作品は素晴らしい成功を収めた傑作といえるでしょう。
ラヴクラフト自身も「最も好きな作品」と言っているようです。
次回は第二話「ダンウィッチの怪」の予定です。いよいよヨグ・ソトース神の登場です。
クトゥルー神話入門書として最適の一冊だと思います。ぜひお買い求めください。
(つづく)