吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

吉田大八監督「敵」2025年/ハピネットファントム・スタジオ、ギークピクチュアズ

2025-01-28 15:20:00 | 映画・ドラマを観て考えよう
 映画「」を観てきました。
 妻に先立たれ、今は引退して独り暮らしをする老教授のアタマの中に敵が棲みつく・・・毎日の収入と支出を計算し、預貯金が底をつく「Xデー」を計算して毎日を過ごす老教授・・・最初はパソコンの迷惑メールに現れた「」のひと文字・・・パソコンがウイルスに乗っ取られ壊ていくのと並行して、老教授の妄想は膨らみ、ついには妄想が現実に取って代わり、悲劇的な結末を迎える・・・そんな映画です。

 最初は老教授の日常が丁寧に描かれます。ご飯を炊いて、シャケの切り身を焼き、丁寧に盛り付けて食事をし、洗い物や洗濯までこなす。まことにマメな生活で独り暮らしのお手本のような生活です。
 だんだん妄想が激しくなると、老教授の生活の質が極端に落ちてきます。ご飯がカップ麺になり、最後は菓子パンの袋を手に持って齧るようになってしまいます。

 「ああ❗最初日常を丁寧に描いていたのはこれを示すためだったのね❗」と観ているわれわれに分かるようストーリーは実に緻密に組み上げられています。

 しかし、そこは筒井康隆原作だけあって一筋縄ではいきません。妄想がエスカレートして、最初は「日常あるある」だった出来事が不穏な事態にまで、だんだんと変質していく過程が見ものです。思わず失笑してしまいます。

 この映画を観ると「臨終に備えて身辺整理をキチンとしなくちゃイカンなー❗」としみじみ思いました。まさに「メメント・モリ(死を忘れるな)」です。必見の映画です。

 「老いる」ことは様々なものを喪失していく過程ですから、失う前の今を大切に生きて行きましょう。



 あ、老教授行きつけのバーでマスターの姪ごを演じている河合優実さん。テレビ「不適切にも程がある」でヤンキー役をこなしていた方ですね。これから伸びる女優さんだと確信しました。


2025冬季アニメ勝手にランキングしちゃいます❗

2025-01-24 13:00:00 | 映画・ドラマを観て考えよう
 恒例の「勝手にランキングしちゃいます❗」コーナーです。
 いやー私が見るに今年の新作アニメはやや不調なんですよ~❗理由は昨年から継続しているアニメが凄過ぎるンですよね。
 ちょっと見渡しただけでも「るろうに剣心」に「Dr.Stone」、「ドラゴンボールDAIMA」やら「Re:ゼロから始まる異世界生活」と傑作揃いです。甘神さんちの縁結び」もなかなか健闘しています。

 あ「Re:ゼロ」は3rd.seasonの再放送が延々と続いてるだけなんですが、見てたら「あ~、また時間が戻ってやり直してるのね」と思えて、ストーリーの先が分かっていても見れてしまうンですね~、これが(笑)。

 そんな中で「これは❓」と目を引いたのが「誰ソ彼ホテル」です。


※生と死のあわいに建つ「誰ソ彼ホテル

 生死の間をさ迷う人間が一時逗留する誰ソ彼ホテル・・・ここに来た人間は自らのアイデンティティと記憶を取り戻して生または死の世界へと旅立ってゆく・・・。
 これは注目作品です。「個々人を規定しているのは記憶である」ことをまざまざと想起させるストーリーです。
 なかなかの着想だと思います。

 さて、ランキングに入ります。

 第3位はSAKAMOTO DAYSを推します。


※伝説の殺し屋の引退後を描く「SAKAMOTO DAYS

 いまはただの太ったおっさんにしか見えないコンビニ店長が実は伝説の殺し屋(❗)という意外性が楽しいアニメです。家族愛に目覚めて引退したので殺しはナシ❗ってところもイイですね。

 第2位は「全修」を推します。
 「全修」とは「全部やり直し」の意味でアニメーターが一番聞きたくない言葉だそうです。


※アニメ作者が異世界に⁉️「全修
 
 新作の行き詰まりに苦しむアニメ監督が賞味期限の切れたハマグリ弁当を食べて気を失った。気がついたらアニメ作品の中にいた(❗)という内輪ウケ満載のアニメ。
 自分の描いたセル画が実体化するという一種の魔法世界で、イキナリ巨神兵を描いてピンチ脱出・・・庵野監督ファンなら泣いて喜ぶ第1話でした。
※巨神兵がラフスケッチのまま出現⁉️

 絵柄がいかにも量産アニメっぽいのも「これがアニメの世界」なんだってンなら納得です。

 第1位は・・・

 ・・・天久鷹央の推理ファイルです❗

※「天久鷹央の推理ファイル

 これはオモシロイ❗殺人事件を総合診断医が推理するストーリーなんですが犯行トリックの奇想天外さにヤラれます。

 私のオススメです。


【関連記事】



江戸川乱歩の美女シリーズ⑳「天使と悪魔の美女」1983年TBS

2024-12-30 22:33:57 | 映画・ドラマを観て考えよう
 BS松竹東急で毎週日曜日に再放映していた江戸川乱歩の美女シリーズ、ご存知でしょうか。年末(12月29日)に放映されたこの作品でそろそろシリーズも終了かと思われましたので、記念に記事にしておきます。

〈あらすじ〉

大富豪・青木の招きにより、明智小五郎が迷い込んだ妖しい仮装舞踏会。そこから始まる不可思議な現象。貞淑な人妻の淫らな遊び。ドッペンゲルガー。倒錯した性。人体改造、白日夢。謎と秘密の霧が晴れた時、明智がそこに見たものは……歌劇「カルメン」が引き起こした、少女歌劇の二大スターの悲しい運命だった!!(第Ⅰ部「黒髪の麗人」/第Ⅱ部「エロスの白い肌」


※おどろおどろしい題字

配役は、明智小五郎に天地茂、大富豪役は中村嘉葎雄、その夫人に高田美和、主治医が鰐淵晴子、大富豪の姪に美保純という豪華キャスト‼️このメンツで乱歩独自のエログロワールドをマジメに映像化した怪作です。

 中村嘉葎雄演じる大富豪は通常の快楽には飽きたらず、明智小五郎に夫人の素行調査を依頼する。夫人を尾けた明智は何故か大富豪と遭遇、大富豪は何と自ら夫人の不倫現場を覗き見して楽しんでいたのです。

 そして夫人の不倫相手が殺される。



※夜ごと主治医(鰐淵晴子)を往診させて「治療」を受ける大富豪



※夫人は執事も誘惑する

 この後執事が殺されます。


※主治医と姪のレズシーン

 そして姪(美保純)が殺される。



※このシリーズは浴室で死んでた(または殺される)ケースが異常に多いのです(サービスサービスゥ❗)。

 実は主治医は最新の美容整形術を駆使して「夫人のコピーとなる人間」を造って屋敷に送り込んでいたのです。最初の頃は「夫人にはアリバイが」なんて言ってたのを根底から覆すムチャクチャな種明かしです。2人の夫人に挟まれて混乱した大富豪は「偽物はオマエだ❗」と一方をナイフで突き刺して殺してしまいます。直後に残ったもうひとりの夫人にナイフで刺され「これで私の美学が完成した」と満足して息を引き取ります。

 謎を追う明智は主治医の診療所にたどり着きますが、逆に囚われて改造手術(‼️)を受けさせられそうになります。



※明智小五郎危機一髪❕

 実は夫人と主治医は元ミュージカルのスターで、過去に因縁のある間柄だった。



※残った方の夫人と主治医はカルメンの舞台上演に向けて練習を繰り返す

 明智と警察に追い詰められて2人は死を選ぶ。



※舞台と現実で悲劇が繰り返される

 さて、夫人とそのコピーはどちらが残ってたんでしょうか?

 原作をかなり離れて自由なアレンジをした怪作。しかし江戸川乱歩の目指した世界に迫る優れた作品になってました。


※ラストシーンは江戸川乱歩の言葉で終わります。

 現世(うつしよ)は夢、夜の夢こそ真(まこと)

 機会があればぜひご覧ください。





 


2024秋季アニメ勝手にランキングしちゃいます❗

2024-10-13 09:40:00 | 映画・ドラマを観て考えよう
 4半期毎のお約束投稿です。
 今年の秋季アニメはメチャクチャ豊作です。特に続編やリメイクはもう「すばらすごい❗」としか言いようのない作品が目白押し。ランキングに悩むという嬉しくも大変なことになってます‼️

 まずは続編&リメイクから。新作以外はランキング対象から外すのがワタシの主義なので続編&リメイクは☆の数による評価にしましょう。☆5つが最高にオモシロイ評価とします(↓)。

 何回視てもオモシロイのは「るろうに剣心」。完全なリメイクで筋立てや展開もワカッテいるのに見直すと新しい発見があるスグレアニメです。

※「るろうに剣心 ー明治剣客浪漫譚ー 京都動乱」☆☆☆☆☆

 BLEACHはユーハバッハとの決戦がさらに佳境に。しかし最近「敵を倒した」と思ったら「効かぬな、その程度の攻撃では私は倒せん」の繰り返しになってきてイイ加減飽きてきました。
 
※「BLEACH 千年決戦篇」☆☆☆

 「七つの大罪」も黙示録の四騎士シリーズが再開です。パーシバルの成長が楽しみ。安定した水準を保ってます。
※「七つの大罪 ー黙示録の四騎士ー」☆☆☆☆

 現代版シャーロック・ホームズ「鴨乃橋ロンの禁断推理」も第二部が始まりました。主人公の首に付けられたマークの意味が明らかになり、いよいよロン誕生の秘密に迫るようです。
※「鴨乃橋ロンの禁断推理 2nd season」☆☆☆☆

 異世界モノの最高峰「Re:ゼロから始める異世界生活」も再開です。異世界モノは見ないワタシもこれだけは見ます。失敗してもリトライができる異世界で、やり直しの条件は「自分が死ぬこと」。悲惨に痛い目に遭わないと悲劇が回避できない宿命と主人公の一所懸命さが悲しいアニメです。
※「re:ゼロから始める異世界生活」☆☆☆☆☆

 待望の「夏目友人帳」第七部がスタート。物悲しくも優しい妖怪たちの世界がまたまた展開します。
※「夏目友人帳 漆」☆☆☆☆☆

 「らんま1/2」がリメイク⁉️
 最近高橋留美子作品のリメイクが多いンですが、「かつてあんなに流行ったのは何だったンだろう❓」と思うぐらい、今見てオモシロくないアニメになってしまってます。期待ハズレでした。
※「らんま1/2」☆

 そして真打ち「ドラゴンボールDAIMA」まで始まりました。ドラゴンボールはシリーズを重ねるうちに当初のホノボノした雰囲気は無くなってしまいましたが悟空がちっちゃくなる今回は初期の楽しさを取り戻す試みになるかもです。抜群の安定感です。

※「ドラゴンボールDAIMA」☆☆☆☆

 ここから新作ランキングに入ります。

 3人娘の暮らす神社に居候するという嬉しハズかしい設定の「甘神さんちの縁結び」は単なる美少女モノかと思いきや、毎回小さな奇跡を配して心暖まる話になってます。
 これが第3位。

※「甘神さんちの縁結び」☆☆☆☆

 「チ、地球の運動について」はヨーロッパの架空の国で地動説を唱え、パラダイムチェンジを行う人々の物語。ガリレオが異端審問に掛けられ「それでも地球は回っている」と呟くエピソードを彷彿とさせる造りになってます。これを第2位に推しましょう。
※「チ、地球の運動について」☆☆☆☆

 そして栄えある1位は「ダンダダン」です。宇宙人の存在を信じる男の子と妖怪の存在を信じる女の子が意地を張り合ったあげく、男の子は妖怪の呪いを受け、女の子は宇宙人に誘拐(アブダクション)され生体実験(キャトルミューテーション)を受けそうになる。女の子を救ったのは妖怪ターボババアの呪いで変身した男の子というムチャクチャな展開ですが・・・魅せます❗
 これが文句無しダントツ第1位です。
※「ダンダダン」☆☆☆☆☆
 なお、トビラの画像も「ダンダダン」です。

 今秋はアニメ大豊作です。
 くれぐれも寝不足にはお気をつけください。
 ではまた冬季アニメの新作が揃ったらね➰👋😃


〈関連記事〉


スタンリー・キューブリック監督『博士の異常な愛情』1964年/アメリカ・イギリス合作

2024-09-18 09:30:00 | 映画・ドラマを観て考えよう
 この記事は2017年8月31日に発表したものを加筆修正したものです。
 2024年9月18日13:00~)NHK-
BSにて放映されたので再掲しました。

 正しい題名は『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』です。



 2017年の放映は北朝鮮によるミサイル発射の翌日という絶妙のタイミングで行われたので、観たヒトも多かったんじゃないかと思います。

 物語は、アメリカ軍基地司令官が妄想に憑りつかれ、警戒中の全爆撃機にソ連への核攻撃命令を出してしまう・・・(ソ連では核攻撃を受けた場合に自動的に爆発する『放射能汚染で地球全体を破滅させる爆弾』なるものを設置している!)。

 「飲料水にフッ素が入っているのは共産主義者の陰謀だ❗」という基地司令官の妄想は今で言う陰謀論に該当するものです。SNS上にこうした誤情報が溢れている現状を予見していたのでしょうか。そう思うと一層現実味が増して感じられます。

 核戦争が始まれば世界は破滅する!・・・何とか核攻撃を止めようと登場人物たちが右往左往する中、ついに命令解除のコードが判明!爆撃機B52の大群はソ連領内から基地へ引き返す・・・・はずだったが、地対空ミサイルによる撃墜を免れ無線装置が壊れた1機が水爆をソ連のICBM基地に投下してしまう。

 映画のラストは水爆が爆発して次々とキノコ雲が立ち上るシーンで終わります。ヴェラ・リーンの印象的な歌が流れる中で・・・。

 また会いましょう
 どこかも知らず
 いつかも分からないけれど
 きっとまた会えるでしょう
 いつか ある晴れた日に





 三役を演じ分けるピーター・セラーズの怪演が見事です。特に大統領がソ連首相とホットラインで会話する一人芝居は絶妙!

いまこそ見直したい映画です。