『T2(ターミネーター2)』の正式な続篇という謳い文句です。
日本での副題は『ニューフェイト』ですが、世界的には『DARK FATE』が副題です。全然違いますねー!。
※アーノルド・シュワルツェネッガー主演『ターミネーター "DARK FATE"』2019年アメリカ
『ターミネーター』のシリーズは基本『近未来に人類と敵対するAIが、人類の抹殺を図るために、タイムマシンを使って過去の世界に刺客を送り込み、抵抗運動のリーダーとなる人物を見つけて未然に殺そうとする』というストーリーです。
ロボットやらサイボーグやら登場して派手なアクションを繰り広げますが、タイムトラベルが基本になっています。
過去に戻ることができるなら、変えたいことは色々あるでしょう。例えば『結婚する前の自分に会って「悲劇的な結果になるから、その相手だけはやめとけ❗」と諭す』とか・・・。
しかし、果たして過去は変えられるものなのでしょうか?思考実験ですが、例えば『過去に戻って自分が生まれる前の親を殺す』ことはできるのでしょうか?
これがSFの世界では有名な『親殺しのパラドックス』です。
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では『息子が両親の結婚を必死に後押しする』というアレンジがされていました。もっとも『自分が存在するのなら絶対に成功するミッションだろ?』ってツッコミが可能ではあります。
※映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985年アメリカ)』
SFの世界では昔からこのパラドックス解決のために様々なヒトが頭を悩ませてきました。
もっとも簡単な解決は『過去は変えられない』としてしまうことです。『過去を変えようとすると、超自然的なチカラが働いて強制的に未来に戻されてしまう』とか、ご都合主義の極みでは『タイムパトロールに捕まってしまう』なんてものもありました。
※タイムボカンシリーズ タイムパトロール隊オタスケマン(をいをい・・・)
『過去を変えたとしても、未来は定まった方向に進んでしまう』という考えもあります。例えば『画学生ヒトラーの暗殺に成功したとしても、代わりになる人物が登場してドイツ第三帝国は成立してしまう』というものです。
今回の映画『ターミネーター(ニュー・フェイト)』でも、『スカイネット』の存在しない未来のはずが、代わりに軍用システム『リージョン』が暴走して、前作とほぼ同じ暗黒の未来世界が登場してしまう、といった筋書きになっています。
私が思いますに、未来の可能性は無数の枝分かれをして拡がって行きます。過去に戻って何かを変えたとしても、それは未来の私たちに直接は繋がらす、別の未来に向かう世界が新しく生まれるだけなのです、きっと。
これが『パラレルワールド』という概念なのですが『過去から未来に向かう「世界線」を変更したとしても、それは別の未来が出来ただけで、今いる世界は何も変わらない』という考え方です。
※アニメ『シュタインズ・ゲート』にみる世界線の分岐・・・時間旅行はパラレルワールドの移動を伴う。
こう考えてみると、過去を変えて、現在の危機を回避しようとするAIの手法は、所詮『畜生のあさましさ』でしかないのですが、それゆえに、毎回性懲りもなく刺客を送り込んでくるワケです。
ツッコミどころは満載ですが、アクションの連続で飽きさせない展開になっています。
今回、未来からやってくる刺客は『Rev-9』という型式番号です。ターミネーターは全て『T』で始まる型式番号ですから、やはり出自はぜんぜん違うのです(実によく似てますが・・・)。コイツはT-800の骨格に、T-1000の液体金属ボディを合わせたような構造になっていて、何といいますか、例えれば『饅頭が薄皮と餡に分かれて闘う(をいをい・・・)』ようなことができるのです。
これに対決するのが、標的とされたダニー(ナタリア・レイエス:未来の人類のリーダーだが今は名もナイ一般人)を助けるサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)、に強化人間グレース(マッケンジー・デイヴィス)、そしてターミネーターT-101(アーノルド・シュワルツェネッガー)の3人(?)なのです(脚註↓)。
※アーノルド・シュワルツェネッガー主演『ターミネーター "DARK FATE"』2019年アメリカ
えっ!?ちょっと待って、スカイネットは存在しないはずでは?
実はシュワちゃんは『スカイネットが支配する未来から送り込まれたターミネーター』で『首尾よくジョン・コナーを殺すのに成功し(!)人間の間に潜入して暮らすうちに人間の感情を学習してしまった』という設定なのです(あれですかぁ?忍びの『草』が、里人の間に潜入しているうちに本来の使命を忘れてしまう、ってヤツですかぁ?)。
ここで観ている方は『未来の人類のリーダーとなるはずのジョン・コナーが既に死んでいる』という衝撃の事実を突きつけられてしまうのです。
やはり未来は無数に分岐していて、過去を変えたとしても現在は変わらない。分岐して別の未来が生まれるだけなのです。
それならAIは無駄な努力をしているのでしょうか?いや自分たちが世界を支配し人類を滅ぼす未来が1つでもあれば満足なのかもしれません。
そんなことを考えながら前作を上回るアクションの連続に浸って観ればイイと思います。
収容所からヘリで脱走し、輸送機に乗り換えて逃げる主人公たちを追い詰める『Rev-9』・・・空中のアクションからダムの底まで一気になだれ込むシーンはまさに圧巻です。
『絶対助からない!』という危機の連続!・・・最後はもちろんシュワちゃんが締めてくれます。
『えっ!?シュワちゃんはさっき死んだはずでは?』・・・いえいえ、第1作で明らかなようにターミネーターは破壊されても『非常用電源で再起動』できるのです。
※ターミネーターT-800のエンドスケルトン
楽しんでください。
※脚註:設定ではターミネーターT-800(お馴染み)のはずですが、この映画でシュワちゃんは自分のことを『型式番号T-101』だと皆に言ってました。やはり第1作とはまた異なる未来からやってきたマシンなのです。