高名な解剖学者である養老先生が心筋梗塞を発症して入院しカテーテル手術によって一命を取り留めた一件を振り替えって、文章と対談で記録したもの。
※養老孟司&中川恵一『養老先生、病院へ行く』株式会社エクスナレッジ(2021年4月22日初版第二刷発行)
こういう軽いエッセイ本はあまり買わないのですが、私の病気を知った人が(奇特なことに)私に『読め❕』と差し入れてくれたのです。
※養老孟司&中川恵一『養老先生、病院へ行く』株式会社エクスナレッジ(2021年4月22日初版第二刷発行)
読んでみるとさすがに養老先生の書いた文章はとても面白い。他の部分とは大きなギャップがあり、読者を引き込む養老先生の筆力に感心する(変な)構造の一冊です。
養老先生の洞察はさすがに鋭いです。
『現代医療は人体を自動機械とみなして統計により判断している』と言い切り、『現代医療のシステムに取り込まれたくない』と病院に行くのを嫌がっていた先生。
それが検診で心筋梗塞が見つかり、急遽入院となるワケです。死を強く意識して『人生に意味はあるのか』と自らに問い、『ヒトはただ生きて死ぬだけ、意味など問うのは愚かなこと』と達観する。さすがの哲学者です。
人体を自動機械とみなすデカルト以来の伝統に疑問を投げ掛け、『世界の意味はこの世の外にある』というヴィトゲンシュタインと同じ結論に、趣味の昆虫観察を通じて至ったというのです。
きっかけは『何でこんな変な虫がいるんだろう』と思ったことだというから笑ってしまいます。そのうえで『意味を見いだそうとするのは、きわめて都会的な行為で反自然的』でこれは人間がアタマで考えたこと、もともとの『自然には意味などない』と断じます。
それでも病気になれば(嫌々ながらも)病院に行くしかないのが現実です。
この本を読めば入院や手術も少しは怖くなくなるかもしれません。病気に倒れる前にお読みください(笑)。