吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

勅使河原宏監督『他人の顔』1966年/日本

2022-07-31 21:56:00 | 映画・ドラマを観て考えよう
 1966年の作品です。
 ひさびさにBS放映されたので、ご覧になった方もいらっしゃるかもです。

 予告編(↓)にもありますが、スタッフ、キャスト等メチャクチャ豪華です。



 顔とは何でしょう。肉体の一部でありながら、顔は社会的な器官でもあります。

 これは事故で顔に大火傷を負った主人公が、(社会生活の助けとするために)他人の顔をコピーした仮面を作ってもらう話です。


※精神科の医師は『劣等感を補うための』仮面(義顔)を制作することを承諾する

 個人を個人たらしめているものは何でしょうか。私が私であること、すなわちアイデンティティーの源って何なんだろうか❔
それを問いかける映画です。

 義顔を付けた時から自分が変わっていくのを感じる主人公。それまでのしがらみを離れて別の人間になる、という感覚を楽しむようになります。

 しかし顔が変わっただけで別の人間にはなれやしないのです。私の経験ですが真冬にフード付のパーカーを被っていたとき(フードで顔は全く見えません)、後ろから名前を呼ばれてビックリ仰天したことがあります。歩き方や姿勢で分かったらしいのですが、個人を特定できるのは顔だけではないのです。

 ヒトは会社や社会に所属していますから、個人を個人たらしめているものは他人による認識でもあります。周囲のニンゲンが『あのヒトは○○さん』と思えば、そのヒトは○○さんなのです。

 自分でいくら『私は○○ではありません』と言っても信じてもらえなかったら❔あとは免許証や保険証しか自分が自分であることを証明するしかテがないのです。

 こう考えてみると『自分を自分たらしめているのは、自分や他人の記憶だけだ』という結論に達します。自分という概念は、全くあやふやなものに支えられているモノなんですね~。

 私も名刺のない生活をしたことがありますが、ヒトって『ナニに所属しているか』がアイデンティティーの元になっているのです、結局のところ。

 他人の顔になって自由(❔)を手に入れた主人公は、だんだんと大胆な行動に出ます。他人のフリをして自分の会社を訪ねたり、果ては自分の妻に不倫を持ちかけたりするのです。


※妻を誘惑する主人公

 コトが終わった後『簡単すぎる‼️』と怒る主人公に、妻は『分からないと思ったの❔』と返します。

 確かに分からないはずがありません。日常一緒に暮らしている相手にはバレバレなはずですわ。

 主人公は究極の自由を手に入れようとしますが、それは更なる悲劇を生んでいく破局に繋がっていくだけです。

 ニンゲンとは❔個人とは❔いろいろ考えさせられる映画でした。
 機会があればぜひご覧ください。


2022夏季アニメ勝手にランキングしちゃいます

2022-07-29 09:12:00 | 映画・ドラマを観て考えよう
 夏のアニメもだんだんと出揃ってきましたね~。しかし良いアニメは依然として不作ですね。あまりにも安易な『異世界への転生もの』やら、『美少女さえ出しておけば何とかなりそう』なんて・・・制作側の魂胆丸見えの駄作が多いのです。

 さて、そんなガラクタの中から『おおっ❔これは❓』と思える作品を見つけましたよ。

 今回の第3位として『よふかしのうた』を挙げることに致しましょう。

※吸血鬼に憧れる主人公がモノホンの吸血鬼に出遭ってしまう(❔)『よふかしのうた』

 思春期の男女にありがちなセンチメンタルな感情を描いて秀逸です。なんだか青春時代を思い出してしまうアニメです。
 実際には夜更かししても『ただ眠い』だけで何も起こらないのが現実なンですがね~(笑)。


※可愛い吸血鬼なずなちゃん。

 さて、第2位には『オーバーロードⅣ』を挙げましょう。

※『オーバーロードⅣ』から、最高位のアンデッドとしてゲーム世界に君臨する(してしまう)元サラリーマンの主人公

 この作品『主人公がゲームの世界で意識を持ってしまう』と、よくある転生モノのパターンを踏んだ作品ではあるのですが、異世界の構築やサブキャラの設定等が実に細かく行われてて見応えがあります。
 未見の方のために、ざっと振り返るなら『廃盤となったゲームの世界で他のプレイヤーを探すため領土を拡大する』ことが主軸となるストーリーですが、侵略される他国の内情までちゃんと描写されています(この辺が違うンですよね~)。
 『Ⅳ』とつく通り全くの新作ではなく続編ですがオモシロイからいいのです。

 そして栄ある第1位は、・・・

 『メイドインアビス/烈日の黄金郷』です。

※左からリコ、レグ、ナナチ。『メイドインアビス/烈日の黄金郷』

 実はこれも第1作『メイドインアビス』の続編なんですね~。
 深い縦穴の底には伝説の黄金郷が‼️黄金郷を目指す人たちは『探窟家』と呼ばれるようになる。探窟隊のひとつ『リコさん隊』は独自に穴の底を目指しています。
 地球空洞説を彷彿とさせるような巨大な穴の中には独自の生態系があり、奇妙な生き物で溢れています。主人公たちは探窟家なんだから、これらの生き物を捕らえて喰ったりして探窟を続けていきます。
 この奇妙な生物たちの描写が実に見事なんですよ(よく毎回こんな変なモノを思い付きくな~と感心します)。ニンゲンの想像力って凄いんですね~。ひとつの世界を創造しちゃうンですから。
 これは楽しい作品です。録画してソンはありません。

 いずれも深夜の放映です。くれぐれもオンエアで観てはいけませんよ~(笑)。
 コロナ禍の真っ最中です。夜更かしはせず、体調を整えておきましょう。





モバちゃんお料理コーナー『カツオたたきのスパ』

2022-07-24 22:46:00 | 愚行を固執すれば賢者となる
 恒例のモバちゃんお料理コーナー、今回は和とイタリアンの融合『カツオたたきスパ』です。

 カツオたたきはポン酢醤油でいただくのがフツーですが、今日はイタリアン‼️たたきをカルパッチョ風にアレンジしてみます。

 まずはタマネギをスライス。塩を振って水分が少々出たらサッと水洗いしてザルにあげます。これをお皿の底に敷きま~す。

 スパを茹でます。塩は入れなくてもオケ。茹で上がったら湯切りしてボウルに移しオリーブオイルを掛けてぐーるぐーる。
 スパの表面をオリーブオイルでコーティングしま~す。

 いよいよカツオのたたきを切ります。

※『カツオたたき』は安い冷凍もので充分です。

 解凍途中の方がキレイに切れるンです。

 先ほどお皿に敷いたスライスオニオンの上にスパを掛けたらカツオのたたきを並べます。スパは熱々ではなく程よい温度になるよう調整しましょう。

 その上に薬味をパラパラ。ネギ、ミョウガ、ニンニク等お好みでどうぞ。

 ポン酢醤油(無いときはめんつゆ)を掛けて出来上がり。


※キレイに盛り付けましょう。

 ただし盛り付けた状態は一瞬だけ。
 スプーンとフォークでぐるぐる混ぜていただきます。

 ぜひお試しください。ボナペティ❗


英国ドラマ:『宇宙戦争』The War of the Worlds(H.G.ウエルズ原作)

2022-07-16 13:28:00 | 映画・ドラマを観て考えよう
 いま旬なドラマ『宇宙戦争』をご紹介したいと思います。

 見掛けは旧い作品のような体裁をとっていますが、2019年にBBCで製作されたドラマです。

 H.G.ウエルズの宇宙戦争はオーソン・ウエルズがラジオドラマ化して以来、何度もドラマや映画に仕立てられています。

 この誰もが知るような古典的作品をどうやって新作に仕立てるかは製作側もアタマを痛めるところ。イマドキ『火星人の侵略』なんて言っても『火星に生命なんてあるのか?』と返されそうな現代では作品にリアリティーを持たせるのは至難のワザです。


※ロンドンに向けて進撃するトライポッド。原作通り三本脚で歩行します。

 このドラマは何と『未来を回想する』ドラマ造りを行ってその問題を解決してしまったのです。何というウルトラC‼️かつて人間がこのように想像していたであろう未来を(過去を振り返るように)描き出しているのです。すでにSFじゃなくて歴史モノになっちゃってます。

 時は1905年、エドワード時代のイギリスに火星からの飛来物が墜落します。これが侵略の始まりでした。

 今回のドラマでは最初イギリス政府が『ロシアの攻撃じゃないか❓』と疑うところが出色のシナリオです(もしかしたらBBCは3年前に🇷🇺ロシアの🇺🇦ウクライナ侵略を予想していたのかしら❓)。イギリス自身も植民地拡大に血道をあげていた時代背景の中で、火星からの侵略が(その時代なりのリアリティーで)描かれます。


※主人公のジョージ

 主人公のジョージは妻との離婚協議中で恋人のエイミーと災厄の中を生き延びます。この2人の恋の行方も気になるところ。


※エイミーとフレデリック(ジョージの実兄、二人の交際に反対しています)

 火星人は原作に忠実な三本脚の巨大マシーン『トライポッド』でロンドンに向かって進撃し始め、同時に地球の火星化(マーズフォーミング❓)を進めて地球環境を激変させてしまいます。

 この設定は現代の地球温暖化を含む環境問題もさりげなく鏤められていて興味深いところです。


※巨大なトライポッドの映像化が見処です。

 深夜枠(TV大阪毎週木曜深夜25:00~26:00)なので録画以外ではまず観ることはできませんが、ご興味を持たれた方はぜひご覧ください。オススメします。
 

追記 全4回だそうで、明日(7月21日深夜で最終回だそうです、見るならお早めに‼️)


『寒山拾得への道』展 横尾忠則現代美術館(2022年4月9日~2022年7月18日)

2022-07-01 11:59:00 | 日々美しいものに触れようよ
 横尾忠則は回想の作家である。
 そういう思いを強くしました。

 つい先日、横尾忠則現代美術館にて開催中の『寒山拾得への道』展に行ってきたのでした。

 作者の横尾忠則は突発性難聴を発症して以降、病や老いをテーマに取り込んだ作品を発表しています。更に利き腕である右手が腱鞘炎になり、マトモな筆運びができなくなったのを逆手にとり、チューブから直接絵の具を筆で取り出してキャンバスに打ち付ける技法に転向して、(何が描かれているか判然としない)自らの新画風を『朦朧体』だとうそぶく大胆さは凄い(笑)。

 題材は自らの記憶の中の表象を自在に組み合わせて独特の世界を形造っています。

 今回は曽我蕭白の寒山拾得図にインスピレーションを得て自在にアレンジした作品を中心にした展覧会です。


※寒山拾得を題材にしたシリーズ。

 寒山拾得の手にしている経典はトイレットペーパーに、箒は電気掃除機に変化している点がさすが横尾忠則。

 繰り返し姿を変えて現れる寒山と拾得の姿に思わず笑みがこぼれます。

 この美術館自体が横尾忠則の作品なので通路や小部屋も作品と化してます。これも見どころのひとつです。

※キュミラスム・トゥ・アオタニと名付けられた休憩スペース

 キュミラスムはキュビスム(立体派)とミラー(鏡)を合成した造語です。


※鏡と窓が組み合わされ現実の風景と過去の風景(写真)が混ざり合う情景が作り上げられています。


※時間感覚がオカシくなったような不思議な世界です。


※通路の壁にも眼がいっぱい‼️

 作品は幼少期の思い出から始まり、だんだんと宗教色を帯びてきます。


※『来迎図』という作品・・・中の仕掛けから鐘の音が響きます。

 拡大してみると、オモチャの部品やら鶏手羽元の骨なんかが貼りつけられているのが分かります。


※『ガーディアン・エンジェル』電飾が派手に光っています


※寒山拾得の様々なバリエーション

 今回の展示室内には常に『荒野の用心棒のテーマ(さすらいの口笛)』が流れています。横尾忠則にとっては『寒山拾得』と『さすらいの口笛』は分かち難く結びついているのだそうです。

 
※お聴きください『荒野の用心棒のテーマ』

 PVに登場する『首吊り縄』も繰り返し絵画の中に出てきます。

 見て回って楽しい展示会でした。