しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

国家神道の解体

2020年11月07日 | 昭和21年~25年
国家神道の解体

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「岡山市百年史下巻」編集・岡山市 ぎょうせい 平成三年発行 より転記


国家と神道の分離

連合国司令部は、昭和20年12月15日いわゆる「神道指令」と呼ばれる覚書を発した。
前文の中には、
「日本国民を欺き侵略戦争へ誘導する意図のもとに、
神道の教理並びに信仰を歪曲して軍国主義的並びに過激なる国家主義宣伝に利用するが如きことの
再び起ることをことを防止する為に」とある。
主な内容は国家と神社神道の完全な分離、国家神道(神社神道)の教義・儀式の宣伝の禁止、
内務省神祇院の廃止などであった。
そして神社神道は国の保護から離れ、軍国主義、過激な国家主義的要素を除けば民間の一宗教として存続できることを明らかにした。
翌21年1月1日、
天皇みずからの神格否定の人間宣言、神祇院廃止、2月2日宗教法人改正公布によって解体した。


連合国総司令部は軍国・国家主義を除けば宗教とみなした。
それによって神社神道が廃絶をまぬがれた。
「アメリカ人は信仰の自由を大切にする。
神道はつぶしたくても、信仰の自由を犯してはたいへんだと、自らジレンマにおちいった」
改革を迫られた神社神道は、昭和21年2月宗教法人神社本庁を設立した。
翌3月岡山県神職会が中心となって、神社本庁県支部として宗教法人県神社庁を設立した。
連合国総司令部がもっとも注目していたのは、靖国・護国神社グループの動きであった。
靖国・護国神社グループは軍国主義的色彩を消すのに懸命であった。



(岡山護国神社 2016.4.5)



護国神社から操山神社へ

岡山県護国神社は昭和21年11月、宗教法人操山神社と改称した。
(講和条約発効の昭和27年、旧名に戻す)

明治初年南朝などの忠君を祭神とする神社が各地につくられた。
操山神社につくられた三勲神社もその一つで、和気清麻呂・楠正行・児島高徳を祭る県社であった。
終戦後浮浪者の宿になり、屋根の銅板は盗まれ、社殿の板・柱は薪にされた。
昭和22年、有志が御霊屋を玉井宮に移した。
氏子もなく地域との結びつきのなかった神社の象徴的なできごとであった。



(玉井東照宮 2016.4.5)



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

戦没者慰霊施設②忠霊塔・招魂社

2020年11月07日 | 昭和16年~19年
「続・しらべる戦争遺跡の事典」 柏書房 2003年発行

・・・・・・・・・・・・・・・・・

戦没者慰霊施設②忠霊塔・招魂社


忠霊塔


(忠霊塔・笠岡市北木島町諏訪神社。
建立は「皇紀2600年」、揮毫は、「陸軍大将 男爵 本庄繁」
角柱状でなく円形)

忠霊塔は、1939年(昭和14)に設立された大日本忠霊顕彰会が、一市町村一基の忠霊塔を全国に建設する運動を展開するなかで広まった。
同会は「一日戦死」をスローガンに掲げ、国民の寄付金を募り、忠霊塔の建設費に当てた。
忠霊塔の形式は、規模の大小にかかわらず箱型の基壇上に角柱状の塔身を載せ、塔身に「忠霊塔」の文字を表したものである。
また、基壇の内部には納骨施設を持ち、遺骨や戦没者名簿などを安置する。
忠魂碑と墓碑の性格を併せ持った施設の必要性を説く陸軍の意向があった。
慰霊祭は地元の慣習に任せるとし、仏教的な儀礼を排除しなかったため、神社界の強い反発を招いた。
遺骨と霊魂を併せ祀る忠霊塔は、霊魂を遺骨から切り離して祀る護国神社や靖国神社とは異質の霊魂観に支えられており、
神社界の反発には根強いものがあった。



招魂社


(笠岡の招魂社)

招魂社は1869年(明治2)に東京招魂社が創建された。神社である。
1874年に内務省が官費で維持する方針を出したことによって制度的に確立した。
1934年(昭和9)内務省は招魂社を一府県一社とする方針を各府県に示し、それを1939年に制度化した。
1939年さらに、招魂社を護国神社と改称することを命じ、護国神社制度が発足をみた。
大日本忠霊顕彰会が設置され、忠霊塔の建設が本格化するのもこの年のことであり、
日中戦争の膠着状態のなかで国民を戦争協力に掻き立てるべく戦没者慰霊施設の整備が画策されたものと考えられる。
靖国神社は1879年に東京招魂社が改称されたもので、各地の招魂社・護国神社の頂点に立つ存在となった。



忠魂堂
神道的な慰霊施設に対し、仏教の立場から戦没者を供養した施設として忠魂堂の存在が知られる。
忠魂堂は遺骨や遺品を納める施設を持つもので、日清戦争のころ誕生した。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする