しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

「好色五人女」お夏清十郎物語  (兵庫県室津港)

2024年05月16日 | 旅と文学

お夏清十郎の舞台は姫路城下だが、清十郎の放蕩の始まりが室津港。
お夏は「お夏狂乱」後は子細が不明だが、
備前市片上にお墓がある。

物語りは、歌舞伎に映画に舞台に今も大スターが演じつづけられている。
主な役者に、
水谷八重子、田中絹代、美空ひばり、大原麗子、大地喜和子、
長谷川一夫、市川雷蔵などがいる。

 

 

旅の場所・兵庫県たつの市御津町室津
旅の日・2009年9月6日
書名・「好色五人女」
原作者・井原西鶴 
現代訳・「好色五人女」  世界文化社 1975年発行

・・・

 

 

・・・

「好色五人女」  世界文化社 1975年発行
 


お夏清十郎物語

天下泰平の春の海に、財宝を積んだ船が碇をおろし、播磨の国室津は活気のある豊かな港町である。
この町の造り酒屋で、和泉清左衛門という人物がいた。
家業繁昌で、なんの不足もない身の上である。
その上、清十郎というその息子は、生れついての美男で、写し絵の業平を上まわるくらい、女好きのする姿かたちである。

十四のときから、遊蕩にうちこみ、 室津の遊里にいる八十七人の遊女たちと、ことごとく深い仲になった。 
心中立ての紙は厚い束となり、
遊女の寄越した小指の爪は手箱からあふれるくらい、
遊女が切った黒髪は、太い縄 をなえるくらいの量である。
この縄を見れば、どんなに 嫉妬深い女でも、かえって心をひかれるだろう。
遊女からの手紙が毎日届いて山となり、贈りものの定紋つきの小袖は、積み上げたまま手も触れない。

三途の川のほとりで亡者の着物を剥ぐという鬼婆も、これを見たならば
うんざりするだろうし、
高麗橋筋の古着屋もあまりの数が多さに値段が付けられないだろう。
それらの品物は蔵に詰め込んで、「浮世蔵」と扉に書き記しておいた。

「この馬鹿者めが、こんなに品物を蓄めこんで、値上りするのを待ってでもいるのか。
そのうち勘当される羽目になるだろうに」
と、蔵を見る人はそう言って歎いているが、やめられないのは色の道である。

非難の声や世間の噂などなんともおもわない。
月夜にちょうちんをあかあかとともすような駄々羅あそびをつづけ、
昼間から座敷を閉め切って、昼のない国にして、小ざかしい幇間を沢山集め、夜の気分を出すために、夜番の拍子木をたたかせ、蝙蝠の鳴きまねをさせる。 

今度は世界地図にある裸島の真似をしようと、店中のこらず裸に剥き、
無理矢理着物を脱がせられ女郎たちは、肌の見えるのを羞じらった。

 

・・・

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 五・一五事件(昭和7年5月15日) | トップ | 「義経記」 弁慶義経に君臣の... »

コメントを投稿

旅と文学」カテゴリの最新記事