TOMATOの手帖

日々の生活の中で出会う滑稽なこと、葛藤、違和感、喪失感……などをとりとめもなく綴っていけたらと思っています。

『終わった人』

2021年11月14日 | インポート
”人生終わった感”がいつもつきまとい、朝起きたときなど、なんとも言えない焦燥感と息苦しさにおそわれることがある。

そんな日々を過ごしているせいか、先日、DVD『終わった人』を借りて観た。
主演は舘ひろし、黒木瞳。
キャストを見ただけで、全く終わっていないかたがたなので、かえって落ち込むかもしれないと思ったが、自虐的に楽しむのもあり、笑い飛ばすのもありかと思って借りたのである。
東大卒業後、銀行で働いて定年をむかえたエリートサラリーマンが、退職を迎えたとたん、行き場がなくなり、スポーツジムに通ったり、カルチャーセンターで淡い恋心を抱いたり、昔の仲間と会ったり、ふるさとに帰ったりという、説明してしまえばなんのことはない、よくありそうな話ではある。
しかし、昔のラグビー仲間がぼそりとつぶやいた言葉「思い出と戦っても勝てないんだぞ。大事なのはそれからどう生きるかだ」や、舘ひろしのふと引用した、良寛辞世の句『散る桜残る桜も散る桜』が染みる。
何気ない言葉に感心したり気づかされたりすることが時にある。
毎年毎年、定年退職者を、他人事のように見送っているが、明日は、というか再来年は確実に我が身なのだ。

映画では、退職後、居場所を失った仲間がみなさん男性として描かれていた。
女性は、退職しても家事や家族の世話という役割が残っており、地域とのつながりもそこそこ保っているだろうというのが前提なのだ。
しかし、フルタイムで働く女性が、日頃、地域とのつながりをもつ暇がないのは男性と同じ。
単身女性も増え、必ずしも面倒をみなくてはならない家族がいるとは限らない。
ひとりぶんの家事などたかが知れている。
地域の活動に、抵抗なくスッと馴染める人と、そうでない人(ワタシのように)もいる。
退職後の居場所問題は、これからは男性だけのものではないだろう。
女性版の『終わった人』も作ってほしいな、などと思った次第です。


コメント (5)
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