清水谷に浸る・・・
東海自然歩道の尾根筋から北の自然8号路に下り、清水谷林道に
入りました・・・
数年前から間伐を繰り返してきた清水谷は、欝蒼とした暗い森から、
今や林床にまでしっかりと陽光が差し込む、明るい森に生まれ
変わっています。
それまで気がつかなかったようなシダ類や草花、コケ類が多く見られ
ます。
夏鳥たちの森のコンサートも賑やかです。
そんな明るい木もれびの差し込む林道を、いつもの如く一人
ゆっくり ゆっくりと浸りながら歩く時の私の至福感といったら、
たまりません・・・
時には立ち止り・・・
大きな杉の木に両手をあて、ゆっくりと深呼吸をしながら根元から
先端を見上げていく・・・
やがて、今度はゆっくりと息を吐きながら根元まで目を下ろして
くる・・・
そんな事を2~3度ほど繰り返していると、木と森の精気をいっぱい
もらい受けます・・・
すると、自分の心の中の「気」を総入れ替えして、新たに生まれ
変われるような気持ちになるので不思議です。
「森林療法」 という学問の世界が、最近流行ってきている
そうですが ?
私の実感では、もうそれは太古の昔から森を歩く人々には
分かっている事のように思いました。
ふっと我に返って歩き始めた時でした・・・
急に前方で激しい音が・・・
なんだ・・・?
見ると、小さな谷川の流れの中から1頭の雌鹿がすごい勢いで
山裾を駆け上がっていくところでした・・・
どうやら谷川の水を飲みに来ていたようです・・・
ああ 驚かして ごめん ごめん! です。
鹿は途中でこっちの様子を見るように立ち止り、私と目が合うと
また少し駆け上がります・・・
次に双眼鏡で山の中腹を探しているとまた目が合い、鹿はまた少し
駆け上がるといった感じで、いつしか見えなくなりました。
奈良公園などで見る餌付けされた鹿は、人を見ると近づいてきます
が・・・
野生の鹿は逆に人を見ると逃げ出します・・・
箕面の猿も二分化しているように、ドライブウエイでエサをねだる
猿は強引に人に近づき、人は逆にそんな猿を避け・・・
私が森で出会う猿たちは私を見て逃げたり、または避けるか、
無視するかで、知らん顔をされると・・・ 何となくこちらから近づく
ような・・・
何だか人の恋路と同じようですね・・・ ?
箕面の鹿も増えてきているのかな・・・ ?
最近は昼間の森の中でも、たまに見かけるようになりました。
前回、この清水谷で見かけたのは立派な角をもった雄鹿でした。
いずれも四足で ダ ダ ダ ダ ダ--- と、斜面を駆け上がる
脚力をみると・・・ 素直に素晴らしいな・・・! と、
足の遅いドンカメの私は、いつ見ても見とれてしまいます。
胡蝶花の咲き終わった後には、白いヒメウツギやヤブデマリ、黄色い
カワラフジ、ピンクのタニウツギなど、初夏の花々がいろいろと
咲いています。
名も知らぬ草木が、随所に花を咲かせています・・・
新緑の若葉が風にそよぎ、谷間全体で萌えいずる躍動の季節を
感じさせてくれます。
植物や動物の体内時計は、いつも正確に季節の移り変わりを人間に
教えてくれますね。
自然界の営みとリズムには、いつも畏敬の念をいだきます。
一休みをして腰を下ろした横にマムシグサが一本・・・
品のある花ですが・・・
名前を思い出すと、それがマムシが鎌首を上げたときのような姿の
花で、誰が付けた名前か知りませんがイメージが悪いです・・・
もし私なら、ツルグサ (品のあるツルの首のようですから!) と、
付けたいような花です。
そんな事を考えながら浸る、清水谷の至福のひと時です・・・
それにしても、あの若い雌鹿の瞳は愛らしかったな・・・
動物の 美しい瞳 にさえまだ、私は心ときめかせているようです
よ・・・