トランプ米政権は昨年11月、”地球温暖化は進行しており、人類の活動以外の原因は見当たらない” と結論付ける全米気候評価報告書を公表したそうだ。これまでのトランプ政権は温暖化について ”人類の活動との関連は議論の余地がある” として地球温暖化対策には消極的であり、トランプ大統領もいよいよ政策転換と思われたが、本件も大統領の気まぐれの表れのようである。
トランプ政権はこれまで、オバマ前政権が導入した温室効果ガス排出規制の撤廃を決めたほか、温暖化対策の国際枠組みパリ協定からの離脱も表明し、環境保護局(EPA)や内務省のホームページから、温暖化に関する情報を削除するなど地球温暖化に逆行する措置を取っている。
オバマ前政権は2014年に、地球温暖化防止対策のため、既存の火力発電所から排出される二酸化炭素(CO2)を2030年までに全米で2005年比32%削減するとし、CO2を回収して貯留する設備がなければ、石炭火力発電は存続できないことを決めた。
これに対し、トランプ現政権は昨年暮れ、火力発電所からの温室効果ガス排出量を制限する規制を撤廃すると正式発表した。これは、前回の大統領選挙で米国東部、炭鉱地帯の票の取り込みの為、石炭生産増を訴え、石炭復活を公約の1つにしたからだ。
トランプ氏は、メキシコ国境に壁を建設することやオバマケアの撤廃も公約であったが、議会の承認が得られず頓挫しており、この規制撤廃は単に公約の実行であり、実績作りであろう。
しかし、米国ではシェール革命により天然ガス利用の火力発電が低コスト化されたため、石炭火力発電の廃止が相次ぎ、シェール革命直前の2007 年に600基以上あった石炭火力は今や400基を超える程度まで減少したそうだ。トランプ大統領のこの規制撤廃でも、石炭火力のかっての繁栄は望めず、石炭労働者の復権は余り期待できないようである。
しかし、2016年全米で天然ガスや石炭利用の火力発電は全体の65%もあり、その内訳はおおよそ半々である。コスト低減された天然ガス利用発電の増加と規制撤廃による石炭利用発電の増加のせめぎ合いとなろうが、当面劇的な変化がないだろう。従って米国における温室効果ガスの大幅な低減は期待できない。
しかし、大統領の方針に拘わらず米国内で多くの自治体や企業にパリ協定の履行を目指す動きがあることは、せめてもの慰めである。
さて、温室効果ガスの内CO2の世界の総排出量は2014年、330億トンであり、中国28.3%、米国15.8%,インド6.2%、ロシア4.8%、日本、3.6%だそうだ。
世界トップの排出国である中国は、パリ協定は世界の発展の方向と一致していると、協定に背を向ける米政権をけん制し、世界を引っ張る大国となったことを誇示している。しかし中国にとって石炭は最重要エネルギーである一方、大都市における大気汚染の主因となっている。
世界的な大気汚染対策の流れに乗って、習近平指導部は脱石炭の姿勢をアピールしているが、中国国民に温暖化対策の必要性が浸透しているとは思えず、その効果は疑問視されている。折りしも、中国の五つ星ホテルにおいて、トイレと食器の洗浄ブラシを共用していたとの報道もあり、中国国民の公徳心に不安を感ずる昨今である。
現在なお重要エネルギーである石炭燃料に従事する人々もさぞかし多いであろう。もし、習主席号令の下、中国国内の石炭消費量が減少すれば、当然石炭の輸出に積極的とならざるを得ないであろう。石炭はCO2を沢山出すと言っても、簡単に燃やせる安価な燃料であり、世界を見渡せば必要とする人はいくらでもいる。
世界で排出量断トツ1位の中国に、石炭利用の規制を強めてもらうのは当然であるが、世界中の人々にまで規制をお願いするのは困難であろう。この意味で温暖効果ガス削減の取り組みは極めて見通しが悪いと言わざるを得ない。2018.02.03(犬賀 大好-413)
トランプ政権はこれまで、オバマ前政権が導入した温室効果ガス排出規制の撤廃を決めたほか、温暖化対策の国際枠組みパリ協定からの離脱も表明し、環境保護局(EPA)や内務省のホームページから、温暖化に関する情報を削除するなど地球温暖化に逆行する措置を取っている。
オバマ前政権は2014年に、地球温暖化防止対策のため、既存の火力発電所から排出される二酸化炭素(CO2)を2030年までに全米で2005年比32%削減するとし、CO2を回収して貯留する設備がなければ、石炭火力発電は存続できないことを決めた。
これに対し、トランプ現政権は昨年暮れ、火力発電所からの温室効果ガス排出量を制限する規制を撤廃すると正式発表した。これは、前回の大統領選挙で米国東部、炭鉱地帯の票の取り込みの為、石炭生産増を訴え、石炭復活を公約の1つにしたからだ。
トランプ氏は、メキシコ国境に壁を建設することやオバマケアの撤廃も公約であったが、議会の承認が得られず頓挫しており、この規制撤廃は単に公約の実行であり、実績作りであろう。
しかし、米国ではシェール革命により天然ガス利用の火力発電が低コスト化されたため、石炭火力発電の廃止が相次ぎ、シェール革命直前の2007 年に600基以上あった石炭火力は今や400基を超える程度まで減少したそうだ。トランプ大統領のこの規制撤廃でも、石炭火力のかっての繁栄は望めず、石炭労働者の復権は余り期待できないようである。
しかし、2016年全米で天然ガスや石炭利用の火力発電は全体の65%もあり、その内訳はおおよそ半々である。コスト低減された天然ガス利用発電の増加と規制撤廃による石炭利用発電の増加のせめぎ合いとなろうが、当面劇的な変化がないだろう。従って米国における温室効果ガスの大幅な低減は期待できない。
しかし、大統領の方針に拘わらず米国内で多くの自治体や企業にパリ協定の履行を目指す動きがあることは、せめてもの慰めである。
さて、温室効果ガスの内CO2の世界の総排出量は2014年、330億トンであり、中国28.3%、米国15.8%,インド6.2%、ロシア4.8%、日本、3.6%だそうだ。
世界トップの排出国である中国は、パリ協定は世界の発展の方向と一致していると、協定に背を向ける米政権をけん制し、世界を引っ張る大国となったことを誇示している。しかし中国にとって石炭は最重要エネルギーである一方、大都市における大気汚染の主因となっている。
世界的な大気汚染対策の流れに乗って、習近平指導部は脱石炭の姿勢をアピールしているが、中国国民に温暖化対策の必要性が浸透しているとは思えず、その効果は疑問視されている。折りしも、中国の五つ星ホテルにおいて、トイレと食器の洗浄ブラシを共用していたとの報道もあり、中国国民の公徳心に不安を感ずる昨今である。
現在なお重要エネルギーである石炭燃料に従事する人々もさぞかし多いであろう。もし、習主席号令の下、中国国内の石炭消費量が減少すれば、当然石炭の輸出に積極的とならざるを得ないであろう。石炭はCO2を沢山出すと言っても、簡単に燃やせる安価な燃料であり、世界を見渡せば必要とする人はいくらでもいる。
世界で排出量断トツ1位の中国に、石炭利用の規制を強めてもらうのは当然であるが、世界中の人々にまで規制をお願いするのは困難であろう。この意味で温暖効果ガス削減の取り組みは極めて見通しが悪いと言わざるを得ない。2018.02.03(犬賀 大好-413)