日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

平昌五輪は政治的には大成功か

2018年02月21日 09時42分12秒 | 日々雑感
 金正恩党委員長の妹である金与正 朝鮮労働党中央委員会第1副部長が参加する代表団は2月9日から11日にかけて韓国を訪問した。9日夜に平昌五輪開会式に出席したのに続いて、10日には青瓦台で文在寅大統領と会談し、早期に訪朝を求める内容の金正恩氏の親書を手渡し、11日夜には帰国した。

 9日午後に金委員長の専用機で訪韓した与正氏は、仁川空港では硬い表情を崩さなかったが、北朝鮮No2の金永南団長とともに文大統領と面会した際は笑顔を振りまき、ほほ笑み外交を開始し、満面の笑みで平壌への帰途についたそうだ。

 与正氏は開会式でも文大統領の近くの席で南北選手団の同時入場に大きく手を振り、10日には南北合同チームが出場した女子アイスホッケーの試合を文大統領やバッハIOC会長と並んで観戦、北朝鮮美女応援団のパフォーマンスに拍手を送った。この間、終始笑顔を振りまき、与正氏の後ろには残忍な兄、金正恩委員長が控えていることをすっかり忘れさせる南北融和を文大統領と共に演出した。

 金与正氏は9日夜の開会式の際、安倍首相やアメリカのペンス副大統領らと同じ貴賓席から開会式を見守った。文大統領と笑みを浮かべて握手を交わす場面も見られたが、安倍首相やペンス副大統領とはお互いに顔を合わそうとせず、あごを引き上向き加減で自尊心の高そうな面も見せた。

 しかし、与正氏がほほえみ外交を徹底するならば、例えペンス副大統領が無視する態度に出ても、自分から席を立ち、副大統領に握手を求めるべきであったと思う。

 副大統領が仕方なく握手に応ずれば米国と北朝鮮の和解が始まったと大成功だし、無視された場合でもそこで悲し気な様子を見せれば、女性としての与正氏の株は少なくとも韓国男性の間では一気に高まり、北朝鮮軟化のムードが一気に広がったことであろう。しかし、無視された場合は韓国、米国への屈服だと自尊心が許さなかったのであろう。

 目下、米国の関心事は北朝鮮の核放棄であり、そのための最大限の経済制裁であり、甘い顔を見せられない。北朝鮮の金正恩の課題は米国との直接交渉であり、そのためにせっせと核、ミサイル開発を行っている。文在寅大統領は間に立って、米軍と北朝鮮の軍事衝突を止めさせることが最大の関心事であろう。

 この為に南北融和を図り、平和裏の下、南北統一のムードを高めたい考えであろう。金与正氏は11日の夕食会で、韓国と北朝鮮には、”同じないし近いものが多くある。速やかに統一が実現し、この良い人たちと平壌で会う日が来るのを望んでいる”、と語ったと言う。

 北朝鮮と韓国は共に統一で一致しているが、統一後の政治体制は、お互いに自分の方の体制にしたいと考えているのだろう。正に、呉越同舟、同床異夢の状態である。

 結局、今回の五輪関連行事では、北朝鮮と米国の直接の接触はなかった。米国のペンス大統領はレセプション行事に遅刻し、メインテーブルに用意された自分の席には座ることもなく5分で退出したそうで、徹底して北朝鮮を無視し続けた。

 だが、米国に帰国する際の専用機内でインタビューに応じ、米政府が北朝鮮に対する最大限の圧力は維持する一方、前提条件なしで米朝対話が行われる可能性があるとしたそうだ。これまで核放棄の前提が無ければ話し合いには応じないとしてきた態度とは大きな方向転換だ。

 レセプションと帰国までの短い時間にこの変わり様の原因には何があったのであろうか。恐らくトランプ大統領と何が話し合われたと想像するが、金与正氏のほほえみ外交の効果があったのかも知れない。この米国の方針変更が本当であれば、文大統領にとって平昌五輪は大成功であった。2018.02.21(犬賀 大好-418)